店頭と同様の接客サービスをECサイトでも提供する
あらゆるデータをもとにコンテクストを導き出し、それを元にブランド価値を強化するための施策に取り組んでいく。アーバンリサーチでは何に取り組んでいるのか。
「コンテクストを捉えることはとても重要です。なぜなら、同じ顧客でも、寝る前にスマホでアプリをブラウジングしている状態と、休日にわざわざPCを立ち上げて検索する状態ではコンテクストが大きく違ってくるからです。検索した際に、そうしたコンテクストに合わせてパーソナライズした情報を表示したいと考え、AIを活用したパーソナライズされた顧客体験を目指しています」(鈴木氏)

これは、実店舗で当たり前に行われる「お客様の文脈に寄り添った接客」をデジタルで再現し、オンラインとオフラインがシームレスに連携する体験を提供することで、ブランド価値を一層高めるものだ。
その取り組みの一つとして、アーバンリサーチではAIを活用し、多くの商品情報の中から、従来の単語による検索だけでなく、たとえば「冬の北海道へ着ていく服」といったような自然言語での検索の仕組みづくりに取り組んでいる。実店舗では当然こうしたリクエストに店員が応えていたが、ECサイトでは同様のサービスを提供するのは難しかった。
「ChatGPTなどの生成AIの登場で、会話文や自然文での検索は徐々に当たり前になっていくでしょう。店頭と同様の接客サービスをECサイト上でも実現しようと考えると、自然言語での検索は非常に重要になってくる機能だと言えます」(小野田氏)
アーバンリサーチが目指す価値創造
AIを活用して多様かつ膨大なデータを統合して分析し、コンテクストを導き出すことは、第三者視点でのブランド価値を知ることになる。そこには、狙い通りのものもあれば、ズレを感じるものもあるだろう。ただ、そのズレは課題の見える化という成果だとも言える。
また、ベクトル検索による自然言語での商品検索のように、AIの進化によってこれまではできなかったサービスが提供できるようにもなってきた。アーバンリサーチでは、今後どのように価値の創造を行い、ブランドを強化していくのだろうか。
「AIは革新的なものではありますが、一方で、人間にしかできないこともまだまだあると思っています。弊社では実店舗でスタッフが提供できる価値に重きを置いていて、日々スタッフの育成・教育にも取り組んでいます。たとえば、店長は『このお客様はこういう服が好きだよね』というのを当たり前に理解しています。同じことを本部の人間が行うのは難しい。今後はそうした、店頭でのお客様やスタッフが感じたことなど、オフラインのデータをいかにデータ化して、全社で共有できるかに取り組んでいきたいと思います」(小野田氏)

そして、小野田氏はコンテクスト分析を振り返り、「社内だけでは分析しきれない膨大なデータを、プレイドと協業し、AIを活用することで、スピード感を持って成果を出せたことが、素直に良かったと感じています」と語る。続けて、「まだ半年ほどですが、これからも新しい価値やブランド力を見つけられるよう、継続して取り組んでいきたいです」とさらなる活用への意欲を見せ、セッションを締めくくった。