マルチモーダルな理解が導く、“次世代のインテント”
続いて、「マルチモーダルな理解」について。テキストだけでなく音声や動画といった“現実世界”までもインプットとして利用することで、次世代のインテント(意図)シグナルを得ることが可能になる。Googleレンズや「かこって検索」なども含めると、AIモードの初期モニターでは、これまでの2〜3倍の長さの検索クエリを得ることができているという。
これにより、AIはこれまでのように単に「何を」探しているのかだけでなく、その裏にある「なぜ」探しているのかという、深層意図まで理解できるようになる。結果として、単なるキーワードマッチングから、次に何が必要になるかを予測し、適切なタイミングで広告を表示することが可能になる。
ユーザーの検索意図を深く正確に読み取れるようになったことで、より多くの広告機会が生まれる。さらに、集められたユーザーのニーズや嗜好に関する豊富なシグナルは、広告主へ戻すなど、今後さらに活用の展開が見込まれている。
Google「エージェント型AI」の可能性
最後は「エージェント型AI機能」だ。まだ初期段階にあるものの、その最大の魅力は「より少ない労力でより多くの成果を出せること」だとクラハム氏は述べる。これはマーケティングの観点も含まれる。
現在、Googleの広告製品全体にエージェント型機能の導入が進められており、マーケターがキャンペーンを構築する方法を根本的に変革し、マニュアル作業の大幅な削減が期待されている。
まずは「Google広告」と「Googleアナリティクス」で順次提供が開始されている。クラハム氏は、このエージェント型AIツールは、マーケターが自分たちでコントロールしながらも、これまでより少ない労力で様々なことができ、結果が出せるツールだと述べる。
具体例として、日本ではまだ未導入の機能だが、AIモードでのバーチャル試着機能と、エージェント型AIによる購入手続きの補助が紹介された。
たとえば、自宅のグレーのソファに合うラグを探したい場合、写真を撮ってAIモードで検索すると、バーチャル上で自宅のソファと製品ラグを組み合わせたものを動的に閲覧することが可能になる。
またショッピング体験を豊かにする新たな機能として、「試着(Try It On)」機能も米国においてテスト提供が開始されている。これは、自分の写真をアップロードすることで、バーチャル上で試着することができるという機能だ。
さらに、エージェントが購入手続きまで行う機能も、米国のSearch Labsにおいて試験提供中だ。これはユーザーが価格目標を設定し、その価格になった際に「通知」を受け取ることができるという機能だ。ユーザーが通知を受けて「購入」を選択すると、登録しておいた色、サイズ、住所などの情報を元に、エージェントが代わりに購入手続きを行う。
「まさにGoogle検索のインテリジェンスとGeminiによって提供できる新しい体験です」とクラハム氏は強調した。
“ブラウザ競争”における競争優位性は?
後半には、メディアからの質疑応答の時間が設けられた。米Perplexityが今年2月にオリジナルWebブラウザ「Comet」を発表し、「ChatGPT」を手掛ける米OpenAIも近くWebブラウザを発表すると報じられている。こうした競争環境の変化について尋ねたところ、クラハム氏は「これまでにも競合との競争はあった」としたうえで、Googleが常に重視しているのは「ミッションファーストの姿勢」だと語った。
Googleのミッションは、「世界中の情報を整理し、誰もが簡単にアクセスできるようにすること」。クラハム氏は、GoogleがAIスタックのすべてのレイヤーにおいて高度な技術力を持っていることが、大きな競争優位性だと強調する。
そして、「20年以上にわたり最も使われ、信頼される検索エンジンを提供してきた実績が、今のGoogleの強さを支えています。今後もミッションに忠実に、ユーザー体験を最優先に据えたプロダクトを提供し続けていきます」と力強く述べた。
