「書く」から「選択」へ コンテンツマーケにおけるAI活用の現状
━━まず、簡単なご経歴をはじめ、現職でどのような業務やミッションを担っていらっしゃるのか、お話しください。

(写真右)StoryHub 代表取締役CEO 田島将太氏
スキナヒト製作所 中山順司氏(以降、中山):ソフトバンクやfreee、ファベルカンパニーなど多くの企業でコンテンツマーケティングの現場をリードした後、2024年に独立しました。20年以上培ってきた経験を活かし、現在はSEOコンテンツ制作の支援、コンサルティング、YouTube関連の支援、執筆業務、設計業務など、上流工程から一緒に考える形での幅広いサービスを提供しています。
StoryHub 田島将太氏(以降、田島):私はスマートニュースを経て、2019年に独立、50以上のWebメディアのグロースを支援してきました。再現性のあるグロースのためにデータ基盤の整備などにも携わってきました。
メディアの流通環境が変化する中、直接的なコンテンツ制作部分にイノベーションを起こさなければ壁を突破できないと考えていた時期に登場したのがGPT-4です。これを活用すればコンテンツ制作フェーズに大きなイノベーションを起こせると考え、オールインワンのAI編集アシスタント「StoryHub」の開発に至りました。
━━今、田島さんが話されていたように、AIによってコンテンツ制作が変化しているということは周知の事実かと思います。では、特にコンテンツマーケターの立場から見て「現時点でのAI」がもたらす影響や仕事の変化はどうなのでしょうか? 中山さんが感じていることをお教えください。
中山:「書く」行為がほぼなくなり、「選択」が中心になりつつあることが大きな変化として挙げられます。以前は時間のほとんどがキーボードを叩く作業に費やされていましたが、今はAIが複数の候補を生成してくれるため、その中から最適なものを選ぶことに集中できます。
結果として、以前より深く考えて制作できるようになり、質が大幅に向上しています。AIを壁打ち相手として活用することで、一人では思いつかなかった視点や答えに到達できるようになったと感じています。
この先のコンテンツマーケ、人間とAIの役割分担は?
━━引き続き中山さんに伺います。現在起きているようなAIによる制作環境の変化からして、将来におけるコンテンツマーケティングの在り方をどのように考えていますか?
中山:悲観はしませんが、やるべきことが変わってきているというのは、この1年ほどでひしひしと感じています。
検索で得られる情報には価値がなくなってきています。みんなが同じように調べられる以上、調べ方で差をつけられないからです。そのため、「同じ情報でも解釈の仕方で差をつけていくこと」、あるいは「自らの足で一次情報を得ること」、これら2つが必要になってきています。

中山:AIはWebの情報に基づいているため、まだWeb上にないコンテンツは特に大きな価値があると思います。そのような情報を見出し、しっかり取材すれば、価値あるコンテンツを作れます。そして、その制作にAIを活用してブラッシュアップすれば、さらに良いものを作れるのではないでしょうか。
━━なるほど。今のお話では人間がやるべきことへの視点でしたが、AIツール開発によって制作を支援する立場である田島さんとしては、生成AIが人間の作り手を支援できること、引き続き人間が担うべきことをどのように考えていますか?
田島:特にコンテンツ制作の入口である「企画・取材」と出口である「レビュー」の部分では人間の役割が重要です。一次情報を収集してAIに提供したり、AIでは判断できない空気感や温度感を最後に注入したりする作業は、人間ならではの仕事でしょう。そのためには審美眼も必要です。100点を知っている人間でなければ、AIが作った70点のコンテンツを100点に引き上げることはできません。自分で0からコンテンツを作る必要はないかもしれませんが、何が良いコンテンツかを判断する能力は不可欠です。