アプリマーケで今、リエンゲージメントが注目される理由
━━そもそも、アプリマーケティングにおけるリエンゲージメントとはどのようなものですか?
藪下:休眠ユーザーに再度アプリの利用を促すことを目的とした広告で、継続的なエンゲージメントとLTV最大化を図ります。リエンゲージメント施策は特に、アプリの成熟期において、ユーザー維持と収益貢献を強化する上で重要な取り組みです。

アプリリリース後は新規ユーザーの獲得を、サービスが成熟期に入った段階でリエンゲージメント広告により休眠ユーザーの復帰を促すイメージです。サービスの形態や業種によって異なりますが、新規ユーザー獲得の広告と比較して50%以下のコストでアクティブユーザーの獲得が可能です。

━━なぜ今、改めてリエンゲージメント施策の提案を行っているのでしょうか?
藪下:アプリマーケティングにおいて「広告を活用して休眠復帰を促す」という考え方は、特にiOSデバイスに対しては、最近まであまり浸透していなかったと感じています。その背景には、プロダクトサイドでソリューションが整備されていなかったという事情がありました。しかし直近では、プッシュ通知や会員向けメール配信といったCRMと比較して、広告配信のほうが休眠復帰単価を抑えて獲得できることがわかっています。また、CRMではアプローチできなかったユーザーに対しても改めてアプローチが可能です。
髙橋:CRMはもちろん重要ですが、CRMのみの活用に限界を感じられている広告主様は少なくないですね。アプリをアンインストールしてしまっている方や、メールを見ない方、その他のアプリにより通知が埋もれてしまっている方など、CRMのみではアプローチしきれないケースが多く存在します。
実際にリエンゲージメントに対する興味も高まっていると感じています。2025年6月にリエンゲージメントをテーマにしたセミナーを実施したところ、参加者の方々の満足度は97.3%の結果と高く、このセミナーをきっかけに「早速リエンゲージメントを始めたい」と話される大手アプリの広告主の方もいらっしゃいました。
Metaによるリエンゲージメントの“解”
━━多くのプラットフォームがリエンゲージメント施策に対応している一方で、ATT(App Tracking Transparency)の影響で計測のハードルが上がっているのが現状かと思います。その課題をどのようにクリアしているのでしょうか?
藪下:リエンゲージメントに価値があるとはいえ、その効果に懐疑的な広告主様も少なくないと感じています。大きな要因のひとつとして、Appleが2021年に制定したATTによるプライバシー規制の影響が挙げられます。特にiOSにおいては、IDFA(Identifier for Advertisers)と呼ばれる広告識別子が取得できないユーザーに対するアプローチ手段が限られていました。
しかし、AEM(アプリ合算イベント測定)というMeta社独自の計測フレームワークを活用することで、IDFAが取得できないユーザーに対してもプライバシーを守りながらリエンゲージ配信が可能になりました。
髙橋:AEMはiOS14以降のデバイスの利用者が起こしたWebイベントおよびアプリイベントの測定に使います。ATTの影響を受けながらも、ユーザーのプライバシー保護を行いながら、リアルタイムに結果を計測できる仕組みです。AEMを活用することによって、結果をリアルタイムかつSKAN(StoreKit Ad Network)の閾値の制限を受けることなく確認できるようになりました。
また、AEMはDeep Linkと併用すると、より高い効果が期待できます。iOSでは、これまで広告の「アプリを開く」ボタンを押すとホーム画面に遷移していましたが、AEMとDeep Linkを組み合わせて使用することによって、ユーザーがクリックした広告から直接目的の画面まで遷移可能です。ユーザーフレンドリーであることはもちろん、コンバージョン率アップにもつながります。

このようにAEMを活用することで、広告主様は施策のPDCAサイクルをよりスムーズに回せるようになり、かつアプリのインストールからリエンゲージメントまで、すべてのマーケティングのフェーズにおいてMetaがビジネスをサポートすることが可能になりました。