営業と同様に、マーケティングのプロセスを「システム化」する
MarkeZine:フィードバックプロセスが組織にインストールされている状態とは、具体的にどういったイメージでしょうか?
岩田:たとえば、営業も以前は属人的な活動でしたが、セールスフォースの普及により、組織的な活動に変化しました。名刺管理から顧客へのアプローチまでがプロセスとして確立され、記録・共有されることで、担当者が変わっても同じクオリティを維持できるようになっていますし、効果的な手法の分析も可能になっていますよね。
一方マーケティングは、暗黙的な手順は存在するものの、プロセスがシステムとして組み込まれていないため属人的になっており、データも蓄積されない状況が続いています。MCMの根幹は、マーケティングのプロセスをシステムとしてインストールすることで、日々安定的に運用し、データを蓄積して次に活かせる状況を実現することにあります。
私自身、初めてMCMの考えを知った時、はっとしました。当社は計測を専門とする会社でありながら、フィードバックプロセスが十分に機能していなかったことに気づいたからです。
たとえば、弊社でもメンバーの入れ替わりの影響で、過去に失敗した施策が改めて企画として上がってくることがありました。これも、本当の意味でPDCAが機能していなかったからでしょう。データ収集や分析の技術を持つ企業であっても、組織的な学習サイクルの構築は別の課題として存在するのです。
MCMの「初級」「中級」「上級」レベル、あなたの企業は?
MarkeZine:MCMがインストールされているか否かで組織能力に差が出るとのことですが、MCMの成熟度は様々なのでしょうか?
岩田:MCMには3つのステージが設定されています。
初級レベルは、マーケティングキャンペーンの目的が整理され、情報が適切に管理されている状態。続く中級レベルは効果測定がしっかりと実施されている状態で、上級レベルは企業戦略とマーケティングを整合させ、収益性も含めた包括的なマネジメントが実現されている状態を指します。

現状、多くの日本企業は中級レベルに位置していると感じます。経験則に基づいた施策の実行や、データの収集、最低限の振り返りなどは、ほとんどの企業が一定レベルで実施しているでしょう。しかし、収集したデータや振り返りの結果が、次に有効活用されていないケースが多いと思います。
結果として、多くの企業では施策が「やりっぱなし」で終わってしまい、組織としての学習や成長に結びついていないのではないでしょうか。
3つのステップでMCMを実践する「AD EBiS Campaign Manager」
MarkeZine:イルグルムは、MCMを実践し、マーケティング業務の再現性と生産性を向上させるSaaSプロダクト「AD EBiS Campaign Manager(以下、アドエビス・キャンペーン・マネージャー)」を提供されています。アドエビス・キャンペーン・マネジャーについて、詳しく教えてください。
岩田:MCMは非常に優れた概念ですが、マーク・ジェフリーの著書の中でも解説は概念的なものに留まっており、具体的な実践方法については各社で考えなければならないものになっていました。そこで、弊社が開発したのが、MCMの概念を誰でもすぐに実践できるプロダクト「アドエビス・キャンペーン・マネジャー」です。当社の強みであるSaaSプロダクトの開発力とAIの技術力を掛け合わせ、MCMをプロダクト上で具現化しています。
MarkeZine:アドエビス・キャンペーン・マネジャーでは、どのようなフローでPDCAを回していくのでしょうか。
岩田:「アドエビス・キャンペーン・マネジャー」では、マーケティングのフローを、大きく3つのステップに整理しています。
まず「1.施策」のステップで、施策をプロダクト上に登録します。これにより、施策の目的・実施内容・クリエイティブなどの情報の一元管理が可能になります。次は「2.実績結果の管理」です。アドエビスと自動連携し、KPIに与えた影響を可視化することで、振り返りの効率を改善します。そして最後が肝心の「3.AIによる改善提案(フィードバック)」です。過去の施策内容・結果に基づき、対話型AIが次の施策立案をサポートします。