ASMRで話題!コンテンツになれるお菓子「グミッツェル」
2つ目の例として挙げられた「グミッツェル」は、外がパリパリしているが中はしっとりしているギャップが特徴的な商品だ。グミッツェルもコロナ禍で成長が加速したという。
背景には、外に出られない中で、グミをSNSにアップすることで自己表現をする人が増えたことが挙げられる。グミッツェルのユニークな形状が“映え”たことも大きいだろう。つまり「閉塞した日常でも、五感を刺激する“ちょっとした非日常体験”を求めている」というインサイトがあったのだ。

「グミッツェル」の成長を語るうえで無視できないのがASMRである。ASMRがインサイトを掴むヒントになるのではと気づいたきっかけは、店舗スタッフの日報だったという。『お客様がASMRの動画をスマートフォンで見せてくださり、同じもの(=グミッツェル)が欲しいとおっしゃいました』と書かれていたのを見て、これはいけると考え、PRを展開していったという。
「グミッツェルはコンテンツになれるお菓子だと考えました。ECサイトを立ち上げたところ、やはりSNSとの相性が良かったため、売り上げも拡大。そこからデジタルマーケティングにシフトしていきました」(内山氏)
カンロの2つの事例を受け、田岡氏はインサイトへのアプローチ手法が全く異なると指摘した。
「ピュレグミがいわゆる“インサイトを発掘する”というやり方なのに対し、グミッツェルは店舗の日報からインサイトが分かり、SNSという現場からそれを“引き上げる”というやり方です。こうした現場起点のボトムアップなアプローチは、これからのマーケティングにおいて非常に重要な考え方だと思います」(田岡氏)
当初のZENBは「お客様が見えていなかった」
一方ZENBもインサイト発掘のため試行錯誤を重ねてきたという。
当初は「地球環境にやさしい商品を」というビジョンを先行させて開発を進めた。しかし、たとえばコーンやビーツを丸ごとペースト状にした商品などは、消費者から「どう食べたら良いのか分からない」という声が挙がることもあったという。
「お客様が見えていなかったのだと思います。地球環境に貢献したいという気持ちは持っていたものの、お客様が何を求めているのかという視点が足りていませんでした」(田中氏)

試行錯誤を重ねる中でZENBが見出したのが、近年ピープロテインの原料としても知られる「黄えんどう豆」であった。植物性たんぱく質や食物繊維が豊富で、小麦や玄米と比べて糖質が低いという、優れた特徴を持っていた。
ZENBはこの豆でグルテンフリーのパスタやパンの開発に着手するが、その道のりは「本当に大変だった」と田中氏は振り返る。小麦と違ってグルテンという“つなぎ”の役割を果たす成分がないため、麺はすぐに切れ、もちもちとした食感も出ない。こうした課題を乗り越え、豆だけのおいしさともちっとした食感を両立させるのに、実に3年の月日を要したという。

そしてこの商品の完成が、初期のコンセプト先行型から抜け出す大きな転換点となる。
「我々が初めて、お客様が求める便益を提供できたのが、ZENBヌードルができた時です。ブランドとして、ようやく階段を一段のぼったという感覚でした」(田中氏)