比重(Balance)を具体的な「行動」へと転換する
CABフレームによる合意形成は、「比重(意思)→方針(戦略)→アクション(戦術)」という流れで、具体的な実行計画へと落とし込まれる。
たとえば「オペレーション強化」に20%の比重を置く場合、方針は「散在した顧客データを統合し、信頼できる基盤を築く」となる。方針が決まったら、そのためのアクションを整理していく。具体的には「各部門の顧客データを棚卸しし、統合項目を定義する」「CRMツールを選定し、導入計画を策定する」「CRMツールのテスト運用を開始し、導入の精度を高める」などが想定できる。
また、上司との合意の結果「商談機会獲得」に35%の比重が置かれたとすれば、方針は「エースの個人技をチームの仕組みに転換する」となる。そのためのアクションは、「トップセールスの勝ちパターンを言語化する」「Webリード向けのアプローチ方法を確立する」「チーム全体でアプローチ研修を実施する」といった形で具体化できるだろう。
富家氏によれば、実行フェーズでは「何をやるのかを決めたら、その方針に沿ったアクションだけを実行すること」が非常に重要だという。
「BtoBマーケティングの打ち手は無数にあります。しかし、合意した方針から外れるものにまで手を出せば、リソースは分散し、結果として何も成し遂げられないという最悪の事態に陥ります。重要なのは、決めた方針に沿ったアクションだけに集中することです」(富家氏)

合意形成によって定められた「比重」と「方針」は、無数にある選択肢の中から「何を実行し、何を“実行しない”か」を判断するための、組織の羅針盤なのである。
CABフレームがもたらす価値と実践サイクル
富家氏は講演のまとめとして、CABフレームが組織にもたらす価値について次のようにコメントした。
「このフレームワークの本質は、部門をまたぐ複雑な課題を構造化し、組織のエネルギーを最も重要な目標に集中させる点にあります。CABフレームを活用することで、サイロ化を超えた意思決定が可能になり、納得感をともない合意形成を促進できます」(富家氏)
また、CABフレームのすべての施策区分で「S評価」を目指すプロセスは、そのまま「LTV最大化を目指すプロセス」につながる。このサイクルを継続的に回すことで、組織は達成度の階段を一段ずつ上り、最終的にLTV最大化に必要な条件を整えていくことができる。つまりCABフレームは、施策の整理と合意形成ができたら役割を終えるフレームワークではなく、継続的に立ち返り、改善していくための指標として使い続けるフレームワークと位置づけられる。

富家氏は最後に次のようにコメントし、講演を締めくくった。
「合意形成は、やはりアウトプットで会話しないと空中戦になってしまいます。そうならないために、CABフレームを役立てていただきたいです。
最後に個人的な思いになりますが、これからBtoBマーケターが企業にどれだけ増えるかが、競争力の源泉になると考えています。お客様にとって良い購買体験が生まれ、皆さんが買う側になったときの体験も、よりよいものとなるはずです。それを目指して、同じマーケターとして、ともに助け合えれば嬉しいです」(富家氏)
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