ウヒョー!と心動かされた6つの広告を紹介
山田:本日は、MarkeZine Dayと「広告ウヒョー!」とのコラボ企画です。GO三浦崇宏さんをゲストにお招きし、2025年上半期のベスト広告を語り合います。私は、広告代理店に勤務しながら「広告ウヒョー!」のMCを務めています山田百音です。よろしくお願いします。

2016年に新卒で広告代理店の営業職に入社後、大手顧客の担当として奮闘。現在は営業シニアマネージャーとして企業のマーケティング支援をしながらも、3年前からなぜか広告ウヒョーのMCにジョイン。広告・コピーの面白さを伝えている
福里:ワンスカイの福里です。「広告ウヒョー!」の名前のイントネーションは、その昔あった雑誌『広告批評』と同じ。心を動かされた広告を紹介するYouTubeチャンネルで、クリエイターへのインタビューや広告の見どころを発信しています。自分も制作者なので批評は難しいけど、「ウヒョー!」と褒めることならできる。そんな思いで運営しています。

いままでに2000本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、ジョージア「明日があるさ」、富士フイルム「お正月を写そう」、サントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」、ENEOS「エネゴリくん」、東洋水産「マルちゃん正麺」、マクドナルド「夜マック店長」、カカクコム「求人ボックス」、ユニクロ「LifeとWear」など。YouTubeチャンネル「広告ウヒョー!」に、向かって左側の男として出演中。
三浦:The Breakthrough Company GOの三浦です。僕も学生時代から『広告批評』を読んでいました。ただ広告を紹介するのではなく、広告を通じてその時代を斜めに切るような、視点の多様性を学ぶのにすごく良い教科書的な存在でしたよね。広告は、時代の文脈をどう読み解くかが面白い。僕は普段まったくテレビを見ないのでCMというくくりではあまり話せないかもしれませんが、広い概念で広告を捉えられるようなお話ができればと思います。

2007年、博報堂入社。マーケティング・PR・クリエイティブを経験した後に、TBWA\HAKUHODOを経て2017年にThe Breakthrough Company GOを設立。クリエイティブの力で社会の変化と挑戦を支援することをミッションに掲げる。コンビニ大手からメガバンクといったナショナルクライアントのマーケティングから、スタートアップや自治体のプロジェクトまで幅広く手掛ける。Cannes Lions、PRアワードグランプリ、ACC TOKYO CREATIVITY AWORDS グランプリ/総務大臣賞など受賞多数。THE CREATIVE ACADEMY主催。
1.WebCMの可能性を拓いた、サントリー特茶 『人生の階段』
山田:それではさっそく最初のベスト広告を紹介しましょう。福里さんは、どんな広告を選びましたか?
福里:私の上半期グランプリは、サントリー「伊右衛門 特茶」の『人生の階段』というWebCMです。2025年上半期で言うと、私の中ではこれが圧倒的No.1ですね。コウメ太夫さんが一人二役を演じ、エスカレーターに乗る自分と階段を登る自分を対比させています。人生や死生観にまで踏み込んだ言葉を重ねながら、最後は「階段最高、サントリー特茶」というコピーに着地する。広告としても、1つの作品としても本当に素晴らしいと感じました。三浦さんは、このCMをどうご覧になりますか?
三浦:めちゃめちゃ良い作品ですね。というのも、近年特にマーケティング=プロモーションという具合に領域が狭く捉えられがちだと感じています。そんな中、輪をかけるようにデジタルのプロモーション施策に比重が偏っていて、消費者の心に残る何かを生み出そうとするケースが少ない。デジタルでそこにチャレンジしている例もゼロではありませんが、派手に広告予算をかけていたりと、サステナブルではありません。
その点、この特茶のWebCMは限られたリソースの中で、人の心に深く刺さる表現をデジタルで生み出すことに成功している。例外的な予算をかけた実験的な試みではなく、サステナブルな形でそれができている点に、大きな意義があると思います。
山田:なるほど。福里さんは、なぜこの広告に惹かれたんでしょう?
福里:近年のWebCMは、二極化している印象です。ひとつは物売りに徹して、言ってしまえば「押し付けがましい」タイプ。もうひとつは商品から離れてタレントや流行のミームで「話題化を狙う」タイプ。この特茶のWebCMは、そのどちらにも偏らず、「生きる」という普遍的なテーマを扱い、ブランドの価値にしっかり結びつけている。WebCMが向かうべき方向性を示してくれた気がします。
三浦:わかります。デジタル広告はこれまで、ユーザーの行動を追いかける「ストーキング型」と、一発で注目を集める「アテンション型」に大きく分かれていた。最近になってようやく、ブランドとの関係をどう築くかという第3の選択肢が出てきた印象です。
これは時代に即した合理的な進化だと思います。以前はテレビが生活の中心で、デジタルは“スキマ時間”に触れるものに過ぎませんでしたが、いまやデジタルこそが日常の主役。長尺の動画も自然に受け入れられるようになりました。このWebCMから、そうした変化の分岐点も見えてきますね。