お酒で気持ちを伝える“人間関係の潤滑油”に──「ノンデネ」の体験設計
安成:コロナ禍以降、お酒を楽しむシチュエーションも変化しています。ノンデネは、新しいコミュニケーションを提案するサービスになりそうですね。dentsu Japanとしては、どのような意図で企画したのでしょうか。
宮本:私を含め、コロナ禍に入社したメンバーは、お酒でコミュニケーションを取る経験が少なく、上の世代と温度差を感じていました。「気軽に飲みに誘えなくなった」という話も聞きます。しかし、若い世代でもお酒自体は好きな人も多く、気持ちを伝える手段になり得ます。お酒を1缶から贈れるサービスがあれば、普段は言いづらいメッセージも伝えやすくなるのではないかと考えました。またCRM施策として、“お得”の訴求ではなく、お客様の利用習慣になるフェーズまでたどり着けるかを、まず考えました。
そこで、ノンデネのコンセプトを単なるギフトサービスではなく、“人間関係の潤滑油”に設計しました。ただお酒を贈るという手段にとどまらず、コミュニケーションを再定義するツールとしての役割を持たせられれば、新しい習慣の創出と文化の醸成につなげられると思っています。
アートディレクターとして、今回のプロジェクトではキャラクターやUI、トンマナ設計を担当した。他にも、クリエイティブチームとして、効果的な施策を提案。
安成:ノンデネでギフトと一緒に贈れるスタンプは200種類以上あります。実際に、どのようなものがよく使われていますか。
馬場:人間関係で直面する様々なシチュエーションに合わせたメッセージスタンプを用意しました。「誕生日おめでとう」といった記念日のスタンプに加え、「何も聞くな、ただ受け取れ。」「一杯ごちそうさせてください」「ほんの気持ちです」という記念日ではなく、日常生活で生まれる気持ちを表現するスタンプもよく使われています。どのスタンプがどの程度使われているかを確認しながら、時期に合ったものを加えていきたいと考えています。
ノンデネは、様々な気持ちを表現したスタンプの種類が多い点と、受け取った側が店舗で商品を選べる点が、従来よりある他のデジタルギフトサービスと異なります。サービス開始後、SNSでも「ノンデネなら、普段言いにくいことを伝えやすい」といった反響をいただいています。
「複数カテゴリーの商品を買う人」を増やす
安成:LINE公式アカウントのリニューアルについて「幅広いカテゴリーの商品に触れられるような設計にした」というお話がありましたね。しかし消費者の中には商品と企業名が結び付かない方も多く、カテゴリーを横断して企業とブランドを認知してもらうことは大きな課題です。サントリーではどのように取り組んでいますか。
馬場:サントリーの酒類は、ビールやウイスキーからワインまで幅広いカテゴリーを持つことが強みだと考えています。おとなサントリーという場での配信や複数カテゴリー商品を対象としたキャンペーンを通じて「これもサントリーの商品なんだ」と、お客様に気づいてもらうことが重要と考えています。
データを見ると、購入金額が高い人は色々なカテゴリーの商品を飲んでいる傾向にあります。このようなカテゴリーを横断して購入いただけるお客様をどう増やすか、データを見ながら設計しています。
安成:データを効果的に活用するための仕組みは、どのように設計されましたか。
吉田:クリック数などLINEの中の行動データだけでなく、購買データも一部紐づけて基盤を構築しました。さらに、意識調査のデータも連携しています。IDベースで「このような行動・購買をした人は、どのような意識を持っているか」というデータが把握できる仕組みになっています。

吉田:そして「ブランドに共感する体験をしてもらう」「様々なカテゴリーを横断してブランドを好きになってもらう」という目標から逆算して、データ設計を考えました。たとえば、ビールに関する配信ばかりに反応する人を増やしても、これらの目標を達成できません。複数のカテゴリーの商品の情報に触れているかという指標が重要になります。また、常設メニューに能動的に触れる層がどの程度いるかという点も重視しました。
電通のデータマーケティング局で、CRMプランナーとしてクライアントの課題をデータで解決する支援を行う。本プロジェクトでは、目標を達成するための重要指標の設計や分析業務を担当。
吉田:このように、カテゴリーを横断するお客様を増やすために必要なデータの捉え方とは何か、一つひとつ判断していきました。そして、意識調査のデータも踏まえ「こういう方々がロイヤルカスタマーになりやすい」という仮説を探っていきました。

