インサイト調査に基づいた「考える素地」を用意
──エバラ食品様の戦略に対し、FMXは長年のパートナーとして、どのようにCM・クリエイティブに落とし込んできたのでしょうか。
若林(FMX):エバラ食品さんとのお取り組みは、2018年の「浅漬けの素」のCM制作から始まりましたが、その時々の課題に応じて柔軟に対応することを大切にしています。
若林(FMX):「プチッと鍋」で最初に手掛けたCM(2018年)は、CMキャラクターである俳優の瀬戸康史さんが楽屋でお母さんに電話しながら1人鍋をする“個食”をテーマに制作。そこからファミリー層にも広げていくタイミングでは、「3プチッと3人前」というコピーを軸にしたクリエイティブをご提案しました。
近年の夏の長期化という課題に対しては、「鍋」と「汎用(肉野菜炒め)」の2本立てでCMを制作したいというご依頼をいただきました。そこで私たちは、瀬戸さんが実際に厨房に立ち、フライパンを振るう「実演調理」という企画をご提案しました。
湯川(エバラ食品):この「実演CM」は、意外にも男性からの反応が非常に良かったです。放映後の調査では、男性視聴者から高い好感度が得られていることがわかり、新しいお客様の獲得にもつながる手応えを感じました。
──エバラ食品は、FMXの支援内容をどのように評価されていますか。
山田(エバラ食品):一貫しているのは、クリエイティブにしっかりとしたロジックがあることです。クリエイティブはどうしてもクリエイターの感性やエモーショナルな部分が強くなりがちですが、FMXさんは提案の裏側に必ずインサイト調査に基づいた「考える素地」を用意してくださる。「なぜこのクリエイティブなのか」という理由が非常にわかりやすく、我々も納得して前に進むことができます。
──その「考える素地」というのは、具体的にどのようなものでしょうか。
若林(FMX):私たちの社内には、事業戦略の知見を持つプロフェッショナルで構成された、専門のプランニングチームがいます。クリエイティブのアイデアを考える前に、まずそのチームがインサイト調査を行い、「各市場にはこういうイメージがある」「だから、こういう言葉で語るべきだ」という戦略の骨子を固めます。そのアウトプットを土台にしてクリエイティブを開発していくので、ご提案がブレないのだと思います。
2022年の「プチッとうどん 釜玉うどん篇」では、当時、ブリーフにあったターゲット像をもとに調査を行ったところ、「子育て中のお母さんは、自分のお昼ご飯を簡素に、でも美味しく済ませたい」という強いインサイトが見つかりました。そこで、「お昼、カンタン、それもいい。」というメッセージを軸に、ランチシーンに特化したCMをご提案しました。このように、インサイトを起点にクリエイティブを開発することで、メッセージの精度を高めています。
USPをシンプルに伝え、「食べたくなる」CMに
──「プチッと」シリーズは鍋にとどまらず、うどん、中華と横展開されていますが、CM制作で一貫して意識されていることはありますか。
山田(エバラ食品):すべてのシリーズで、「シンプルで、メッセージがわかりやすいこと」を最も大事にしています。数多ある商品の中から選んでいただくには、USPを15秒でいかにストレートに伝えるかが勝負です。もう一つは「シズル感」。鍋が煮えるシーン、お肉が焼けるシーン。食品CMである以上、まずは「1回食べてみたい」と思わせることがすべてのスタートだと考えているため、シズル感には妥協を許さないようにしています。
また、「プチッと鍋」の認知度が高いからこそ、「『プチッと』なら、うどんや中華も美味しいだろう」と信頼していただけるような、ブランドを横断したコミュニケーションも意識しています。
湯川(エバラ食品):実際に購買データを分析すると、「プチッと鍋」を買われたお客様が「プチッとうどん」も買ってくださる、という良い循環が生まれています。CMのメッセージが一貫しているからこそ、シリーズのファンが増えているのだと実感していますね。
──シリーズのファンを増やしていく上で、特に手応えを感じた事例はありますか?
山田(エバラ食品):音楽に合わせて踊る明太子のキャラクターが登場する、「プチッとうどん」の「明太子うどん登場篇」はおもしろかったですね。SNSにお子さんがCMソングを歌っている動画がアップされたり、明太子のキャラクターの二次創作が生まれたりと、これまでのCMとは違う反響がありました。
売上も非常に好調で、「明太子うどん」は放送直後に一時品薄になるほどヒット商品となり、現在では「プチッとうどん」シリーズ内で2位の売上を占めるまでに成長しています。
若林(FMX):プチッとシリーズではないですが、同じく瀬戸康史さんに出演いただいている、「なべしゃぶ」のCMは非常に印象深いですね。「千切りキャベツと豚肉で食べる」というエバラ食品さん発のメニュー提案が画期的でした。発売後、長期にわたって品薄になるほど大ヒットした時は大きなやりがいを感じました。

