SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2026 Spring

事例を通して見る世界のマーケティング/ブランディングのトレンド

メディアクリエイティビティという新視点。海外事例から読み解く、埋没するブランドの突破口

アクション・メディア(2)ビールメーカーと「店主の老後」

POKER BEER - RETIREMENT ACCOUNT

画像を説明するテキストなくても可
動画より(出典:INSIDER LATAM)

 コロンビアでは、多くの小売店が家族で経営されています。毎日の生活と店の運営に追われ、将来の年金まで考える余裕がない店主も少なくありません。老後への不安は、この人たちにとって大きな問題でした。

 そこで、コロンビアで親しまれているビールブランドであるポーカービール(Poker Beer)は「ビール年金口座」という仕組みを始めました。これは、店主がいつも通りビールを売るだけで、将来の年金が少しずつ貯まっていく仕組みです。

 ビールを1本売るごとに、発注・管理システムを通してポイントが自動で記録され、そのポイントが年金の積立に回されます。これには特別な申し込みや手続きは必要なし。店主が普段使っている発注や売上の仕組みと、国の年金制度をつなげることで、販売の記録がそのまま年金に反映されるようにしました。

 その結果、ビールを売るという日常の仕事は、目の前の収入を得るだけでなく、将来の安心を積み上げる行動へと変わりました。ポーカービールは、ただの商品を売るブランドではなく、店主の暮らしと将来を支える存在として、より小売業のビジネスと深く結びついたのです。

つながる仕組み、そのものがメディア

 これらの事例が示しているのは、人が必ず通過する行動や判断の瞬間こそが、最も強いメディアになり得るという点です。

 この2つの事例は広告で情報を広く届けることを選びませんでした。代わりに、レストランが経営を判断する瞬間や、店主が商品を売る日常行為といった、避けることのできない行動の中に入り込む仕組みをつくりました。その結果、iFoodは「使うほど価値を実感する存在」に、ポーカービールは「売るほど将来が守られる存在」になっています。

 注意を集める場所を探すのではなく、人が必ず行う行動そのものをメディアとして設計する。それが、いまのメディアクリエイティビティの核心なのかもしれません。

改めて、メディアクリエイティビティとは何か

 本記事では、ブランドと生活者の関係をつくる視点から、クリエイティブと一体化したメディアの考え方を整理しました。紹介したのは、次の3つの考え方です。

  1. メディアハック
    人の注目が集まる瞬間を読み替え、話題から行動・購買までをつなぐ発想
  2. カルチャーコネクター
    物語や文化の中に入り込み、ブランドを参加者として機能させる考え方
  3. アクション・メディア
    使う・選ぶ・売るといった日常行動そのものをメディアとして設計する発想

 これらに共通しているのは、広告を作ってから配信先を選ぶのではなく、最初から「どんなメディアで、どんな体験が生まれるか」を起点に発想と設計をしている点です。ここで言うメディアは、広告を流すための枠ではありません。人が感情を動かし、行動している場面そのものが、体験として機能するメディアです。

 そうした体験の中に自然に入り込む表現は、数値の効率だけを追うメディアプランでは生まれにくい、生活者との実感あるつながりを生み出します。広告が気づかれにくくなった今、求められているのは配信の最適化ではなく、メディアそのものを体験として設計すること。メディアとクリエイティブを切り離さず考えることが、これからの広告に必要な視点なのかもしれません。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
事例を通して見る世界のマーケティング/ブランディングのトレンド連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

北市 卓史(キタイチ マサシ)

HAVAS JAPAN 株式会社   Executive Director

営業職をベースに、国内と海外にて広告代理店の会社/新規事業立ち上げに従事。2022年より世界149カ国にオフィスを展開する広告代理店であるHAVAS社の日本法人の現職に就任。多様性のある職場や働き方、他国オフィスとのオペレーシ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2026/01/30 07:00 https://markezine.jp/article/detail/50327

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング