伝統行事をDXでアップデートする「本成寺鬼踊り」3つの実証実験
MZ:続いて、実証実験の具体的な内容について伺います。今回、新潟県三条市の「本成寺鬼踊り」で行われたお取り組みの全体像と狙いをお聞かせください。
西澤:今回の実証実験では、地方の催事におけるNFT活用の有用性を多角的に検証するため、大きく3つの施策を展開しました。
1つ目は、「NFTチケットの販売」です。これまでは当日現地に並んで購入するしかなかった本堂内の鑑賞席を、オンラインで遠隔からも購入できる仕組みを構築しました。さらにNFTというデジタルならではの付加価値を乗せることで、従来の2,500円から倍の5,000円という価格設定で販売し、ユーザーがそこにどのような価値を見出すかを検証しました。

2つ目は、「NFTチケットの無料プレゼントキャンペーン」です。地方の方や高齢層にとって、いきなりNFTを購入するのは心理的ハードルが高いという懸念がありました。そこで、事前に特設サイトで無料NFTを受け取れる窓口を設け、そこから抽選でチケットをプレゼントする仕組みを作ることで、参加の入り口を広げました。
3つ目は、昨年の取り組みを踏襲した「NFTスタンプラリー」です。当日の境内の5ヵ所に鬼のパネルとQRコードを設置し、すべて集めた方には「コンプリート特典」として、スペシャルNFTと実物の御朱印帳をプレゼントしました。これにより、当日の回遊性と記憶に残る体験設計を狙いました。

インバウンド対応とシニア層のUXを両立させるターゲットへの工夫
MZ:集客や体験設計において、特にこだわった工夫はありますか? マーケティング的な観点からのポイントを教えてください。
西澤:特に意識したのは、インバウンド対応とUI/UXの徹底的な簡略化です。今回活用したNFTチケット販売サイト「Rural Regeneration(ルーラル・リジェネレーション)」は、英語対応はもちろん、旅行比較サイトなどの海外向けチャネルからの流入を意識した設計にしています。
また、NFT最大の障壁である「ウォレット作成の難解さ」を解消するため、メールアドレスだけでアカウント作成が完結し、自動でウォレットが生成される仕組みを採用しました。決済もクレジットカードなどで一般のECサイトと同じように行えるようにし、ユーザーが「NFTを買っている」という構えを持たずに、自然に購入できる体験を目指しました。
岡本:また、「コミュニケーション」のあり方も対象者にあわせて調整していきました。事前告知や拡散のフェーズでは、あえて「NFT」という言葉を前面に出し、プロジェクトの先進性やデジタル資産としての価値をアピールしました。
一方、当日の会場ではあえてNFTという言葉は使わず、「デジタル御朱印」という言葉で統一しました。地域の方やシニア層にとって、「NFT」は聞き慣れない言葉でも、「御朱印」であれば馴染みがあり、直感的な参加動機に繋がります。実際に現場では、年配の方が積極的にスマートフォンをかざしてスタンプラリーに参加してくださる姿が非常に印象的でした。
テクノロジーをそのまま提示するのではなく、その土地の文化や文脈に寄り添った「言葉選び」をすること。これもまた、ユーザー体験を形作る上で不可欠な要素であると再認識しました。

