成長を続けるプロモーションメディア広告費
さて、テレビ広告費を上回る規模となったプロモーションメディア広告費ですが、改訂前の数値でも4年連続の前年比増と拡大傾向を維持。フリーペーパー・フリーマガジンの成長は鈍化しているものの、マガジンタイプの創刊が相次いだほか、民間メール便が牽引しているDMの好調など、広告主企業の積極的な販促活動によって、このカテゴリ全体が増加しています。


その結果、オンライン広告の成長とあいまって、広告費に占めるマス4媒体の割合はじりじりと下がってきています。雑誌広告費をインターネット広告費が抜いたことから、次は新聞を抜くのではといわれていますが、目立たないながらも、屋外広告や交通広告、DMも、じわじわとその量を増やしています。

プロモーションメディア広告は雑多なオフライン広告の総称ともいえるカテゴリですが、オンライン広告同様、日々新しい技術が導入され、新しい手法が考案されています。印刷物については、DTPソフトの進化はもちろん、手軽に印刷物がつくれる安価なコンテンツサービスやレンタルサーバー、海外での安価な大量印刷などの環境が量的な増加を支えているはずです。オンライン広告が伸びることで、オフライン広告は減っているように思われがちですが、ことはそう単純ではなさそうです。
「クロスメディア」と「メディアミックス」
さて現在の広告では、こうした新旧のメディアを駆使して、新商品や新サービスの認知、購買など、広告主の目的を達成しようとします。その際のキーワードとなるのが「クロスメディア」。同じような意味で使われている「メディアミックス」との違いについては、電通のクロスメディア開発プロジェクトチームがまとめた書籍『クロスイッチ』で詳しく説明されています。

この書籍では、複数メディアを使って効率的に情報を発信する「メディアミックス」に対して、ある一定のシナリオに基づいて複数メディアを効果的に活用し、情報バリアに閉じこもっている消費者を誘い出してアクションへと導くこと、つまり「シナリオづくり」こそが「クロスメディア」であると定義しています。
『クロスイッチ』には、電通が手がけたクロスメディアの成功事例も紹介され、読めば「ああ、あの広告か」とすぐにわかります。あの手この手で消費者の「もっと知りたい」という気持ちを引き出し、次のアクションへつなげるためのプランはさすがです。しかし、広告のキモとなるシナリオの説明を読んでいると、「こうしたシナリオにつきあってくれる消費者はどのくらいいるのだろうか」とちょっと心配になってくるのも正直なところ。クロスメディアどころか、メディアミックス、あるいはメディアミックス以前の広告が、日々大量に投下されているのが現状のように思えます。