メール施策はマーケティングか、営業か? 両者の役割と境界線
松本:現在の事業内容や、支援領域、担われている役割についてお聞かせください。
安藤:BtoBマーケティングの戦略支援、メールマーケティングの実行支援、そしてマーケターの育成という3つの事業を展開しています。顧客のほとんどはBtoBのSaaS企業です。
松本:安藤さんといえば「メールマーケティング」ですよね。そこで、今日お聞きしたいのは、BtoBビジネスにおけるメールの役割です。そもそも、メール施策はマーケティング活動と営業活動、どちらとして捉えるべきでしょうか。
安藤:その境界は曖昧ではないでしょうか。そもそもBtoBのコミュニケーション領域におけるマーケティングの役割とは、自社を知ってもらうこと、思い出してもらうこと、そして好意を持ってもらうことの3点に集約されると考えています。メールは、そのための手段の1つです。
一方で、営業の役割は、顧客の不安を取り除くことです。対面で対話し、場の空気を読み、顧客が求める内容に応じて話題を柔軟に変えていくような、顔の見える対応は人間にしかできません。
松本:ラベルは同じ「メール施策」ですが、マーケティングと営業では担う役割が異なるということですね。
安藤:だからこそ、顧客へのアプローチ方針について、営業とマーケティングの間で認識を合わせなければいけません。営業担当者がクロージングに注力している最中に、マーケティング部門が突然セミナーの案内メールを送ってしまうような事例は珍しくありません。
互いのアクションを把握せず、顧客の状況を無視し、自部門が伝えたい情報だけを発信すると、非常に好ましくない顧客体験を生み出してしまいます。
そのため、CRMに登録されている顧客をステージごとに分け「ここまではマーケティングが主導して接点を持つ」「ここから先は営業が主導し、依頼がない限りマーケティングは接触しない」といったルールを設ける必要があります。
AI時代のツール運用と、現場情報の「均一な蓄積」
松本:とはいえ、両部門で認識を合わせるのは容易ではありません。そのためか、部署ごとに異なるツールを導入している企業も多く見られます。ツールは全社で統一すべきなのでしょうか?
安藤:昨今はAIが発達しているため、無理にツールを統一する必要はないでしょう。部署ごとに異なるツールを使っていても、それぞれの情報を一元管理し、マーケティング側が特定のツールからコミュニケーションを取る方法も可能です。
ただし、営業が顧客から取得する情報の項目や粒度は統一する必要があります。私が支援している企業では、商談時に顧客の了承を得た上でAIによる議事録を作成し、対話内容を要約して重要項目ごとにSFAへ自動登録する仕組みを導入しています。これにより、担当者のヒアリング能力や入力精度の差に依存せず、必要なデータが均一に蓄積されます。
マーケティング側もそのデータを参照して、顧客の状況に応じたメールを配信できるようになり、情報不足によるアプローチの滞りが解消されています。
