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マーケティング組織を立ち上げて最初の6ヵ月でやること

BtoBメール施策の「最適解」 安藤氏に聞く、よくある「勘違い」と本当に追うべき指標

属人性を排除する、プロンプトを活用したデータ記録の鉄則

松本:AIで、本当に便利になりましたよね。一方で、基となる顧客データが古かったり不正確だったりすると、誤った個別最適化を大規模に実行してしまうリスクがあります。AIで施策を高度化・自動化する前に、どのようなデータを蓄積していくべきでしょうか。実践を通じた仮説があれば教えてください。

安藤:One to Oneのメール配信はいずれMAツールのデフォルト機能になり、ツール側が顧客に合わせた情報を自動配信する時代が、そう遠からずやってくるでしょう。

 重要になるのは、顧客が自社を認知したときのデータと、商談の記録です。この記録の粒度を営業担当者個人に委ねるのではなく、AIのプロンプトを活用して、話した内容の重要ポイントを要約し、均一な記録を蓄積させるべきです。これを行うだけで状況は大きく変わります。

 営業活動を適切に記録している会社では、次回のアプローチに最適な時期を、顧客の温度感などをもとに、ある程度ルール化して運用しています。これまで営業担当者の主観によって「ホット」「コールド」の判断が分かれていましたが、統一されたルールで運用できるようになり、営業活動の管理が容易になりました。

 また、商談内容を記録してSFAに自動入力する仕組みは、営業担当者にとっても入力の手間が省けるため非常に喜ばれ、スムーズに導入が進みます。これは営業とマーケティングの双方にとってメリットがある取り組みです。

 展示会などで顧客と接触した際も、顧客の了承を得たうえで、その場で話した内容を音声などで記録することをお勧めします。手入力は面倒で省略されがちです。音声データから自動要約してSFAへ連携する仕組みを整えるべきでしょう。

「測り過ぎ」に要注意。効果測定よりリソース配分を考える

松本:メール施策に限ったことではありませんが、いわゆる「初回」と「最終」の中間プロセスは非常に評価がしづらく、あってもなくても同じではないかと思えてしまうこともあります。この辺りはどのように評価し、整理していくと良いのでしょうか。

安藤:アトリビューション分析はあまり気にしなくて良いと考えています。結果を出しても、実際の改善行動に結びつかないケースが多いからです。BtoCは例外として、「各チャネルへのウェイトを調整する」といった運用まで落とし込めているBtoB企業は、ほとんど聞いたことがありません。

 要は、分析し過ぎなんですよね。数値化や効果測定の弊害ともいえます。

画像を説明するテキストなくても可

安藤:他にも、マス広告の効果を小さく試して徐々に大きくしていく検証プロセスは、どの会社も同じ道をたどりがちです。これは「車輪の再発明」に近く、検証期間そのものが無駄になりかねません。先行事例で効果がわかっている部分はいったん受け入れて実行し、効果検証よりもリソースの配分に思考を割くべきです。

松本:そうなると、マーケティングにおけるメール施策はキープインタッチの文脈で、効果があるという前提に立ったほうが良いということでしょうか。

安藤:そうですね。メールは配信自体にはほとんど費用がかかりません。作成するのも週に1〜2回であれば、大きな負担なくできるはずです。その状況において、厳密に効果を測定しようとしたときに得られるメリットはほとんどありません。購買プロセスのどこかで効いているでしょうという前提で、まずは実行してしまうのが良いと思います。

 さらにいえば、営業リソースが豊富にあるのであれば、メール施策は不要だとすら考えています。ルート営業のように、1ヵ月に1回営業担当者が訪問して状況を伺うほうが遥かに効果的です。しかし、現実にはそれができないためメールを配信しているのです。メールは、ルート営業の代わりに顧客との接点を保ち、定期的にドアをノックするような存在だと捉えるべきです。

真の指標は「アプローチ率」。数値を追わず施策を続ける胆力

松本:意思決定層に各施策の貢献度を報告する際、メール施策はどうしても「商談につながったか」といった短絡的な指標で語られがちです。どのような伝え方をすべきでしょうか。

安藤:私は「アプローチ率」という指標を提案しています。これは、「対象期間内に一度でもメールを開封したユニークな人数」が「全体の配信リスト」に占める割合です。毎回15%の開封率であっても、半年間などの一定期間で見ると「実はリストの6〜7割の異なる人に届いていた」という実態が見えてきます。

 アプローチ率の計測は、絶対値を知ることではなく、メールがどの程度響いているかの実態把握が目的であり、数値を際限なく高めることではありません。一定期間計測すると、いずれ数値は頭打ちになりますが、その水準が自社にとっての1つの目安になります。

 もし開封率15%だと、「15%しか見ていないからメール施策はやめよう」と早計に判断し、機会損失につながってしまいます。

 一方で、一定期間で見たアプローチ率が本当に15%なのであれば、その顧客層にはメール以外のチャネルが適しているという判断ができます。しかし、その判断がつかないまま、効果がわかりづらいからと毎日何通もメールを作成し、専任の担当者を置くのはリソースの無駄です。

松本:BtoB SaaSやエンタープライズ領域において、チャネルの1つとしてメールを活用し、施策を継続するにあたって最も必要なマインドセットは何でしょうか?

安藤:数値を過剰に突き詰めないことです。数値を突き詰めすぎると、測定にかかる負担が増え、かえって効率が悪くなります。それよりも、注力すべきところにリソースを割くという考え方が重要です。一定のラインで数値化を諦め、効果があると信じてやり続けることが大切です。

 たとえば、エンタープライズ営業では、受注までに2年、3年かかることもあります。途中のプロセスを見ながら、施策を続けられるだけの「胆力」が必要です。

 極端にいえば、BtoBにおいて最も強いのは「営業」と「プロダクト」です。マーケティングはその価値を正しく伝えるためのサポートに過ぎません。数値化の先にある効率化と、生産性の最大化は、必ずしも一致するものでもありませんから、そこを追求しすぎることに、リソースを割くべきではないと考えています。

松本:非常に良いお話を伺えました。ありがとうございました!

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この記事の著者

松本 健太郎(マツモト ケンタロウ)

株式会社EVERRISE 執行役員CMO
龍谷大学法学部卒業後、データサイエンスの重要性を痛感し、多摩大学大学院で統計学・データサイエンスを“学び直し”。デジタルマーケティングや消費者インサイトの分析業務を中心に、さまざまな分析を担当する。noteで活躍しているオピニオンリーダーの知見をシェアする「日経COMEMO」メン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/10/05 08:30 https://markezine.jp/article/detail/77369

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