GPT登場で終わったと直感。「法人GAI」立ち上げの経緯
松本:初めに、山川さんの現在の役割やミッションについてお聞かせください。
山川:ギブリーの取締役CAIOという肩書で、AI事業全体の管掌と、社内におけるAI活用の推進を担当しています。同時に、5つある事業部門のうち「AX(AI Transformation)部門」の部門長も兼務しています。
山川:GPTモデルの登場によって日本でも生成AIのマーケットが活況を呈していますが、それ以前からAIを活用したSaaSやクラウドサービスの事業開発に責任者として携わっていました。当時は機械学習や自然言語処理といった、今となってはレガシーな技術が中心でした。それらを活用したAIチャットボットを累計2,000社ほどに導入してきた経験があります。
2022年秋にGPTモデルが登場した時、私は「自分たちの事業は終わった」と直感しました。我々のレガシーなAI技術は、新しいAIによって真っ先に淘汰される対象だと感じたのです。そこで、既存の事業を生成AIの方向へ一気にピボットさせることを決意し、「法人GAI」というサービスが生まれました。
その後、サービスブランドを「MANA」へとアップデートし、現在はマルチLLMに対応したAIエージェント開発プラットフォームなどを手掛けています。
松本:「法人GAI」事業を立ち上げた時は、何名くらいのチームでスタートされたのですか。
山川:最初はエンジニア2名と、他の事業と兼務するビジネス担当が2名の、ごく少人数で始めました。構想からリリースまで、開発込みで3週間というスピードで事業を展開しました。
「1日5〜6件の商談」を責任者自らこなす理由
松本:山川さんはnoteに「初期の営業では、責任者や経営者こそひたすらに現場を回るべきだ」と書かれていましたね。なぜ営業をメンバーに任せず、あえてご自身が現場に出られるのでしょうか。具体的に、現場に出ることで何を得ていらっしゃるのでしょうか。
山川:1人のお客様とお話ししただけでは、何もわかりません。ですからサービスの立ち上げから数週間は、集中的に1日5〜6件の商談に出ます。商談の場にいらっしゃるのは、お客様の社内でもAIに詳しい方々です。その方々が知っていること・知らないことの境界線を見極め、何十社も回ることで市場に共通する要素が見えてきます。
そこから「複数のお客様が口にした不満や期待」をもとに競合製品の強弱を推察し、「今の市場にダイレクトに響く機能はこれだろう」という仮説を立てて、開発の優先順位をチームに伝えます。「プロダクトはまず売れることが重要であり、売れる商品が良い商品だ」という思想のもとで動いています。
ところが「法人GAI」をリリースした瞬間から、1日に何百件もの問い合わせが殺到しました。既存のメンバーでは到底対応しきれず、私自身も重要顧客に対しては自ら企画書を書いて提案しながら、並行して営業メンバーを20名以上採用しました。
人員確保を優先した結果、今度はCRM管理が追いつかないという別の問題も発生しましたが、それしか方法がありませんでした。
こうした体験を経て「マーケティングとは一体何なのか」という根源的な問いに突き当たりました。細かい戦術よりも、いかに「マーケットの波に乗るか」が重要ではないでしょうか。特にAIのように進化の激しい領域では、波に乗るための「意思決定のスピード」こそが問われると考えています。
松本:山川さんのようなスーパーマンが営業に出ることで「山川さんさえいれば大丈夫」というような、ある種の依存関係は生まれませんか?
山川:その課題には、過去に何度もぶつかりましたが、今はまったく違います。その最大の理由は、単純に私よりも優秀な営業メンバーが増えてきたからです。採用も育成も奏功し、AIに関する技術知識や市場知識を豊富に持つ人材が揃ってきました。
経営層と現場のメンバー、それぞれが得意とすることは、営業の現場において異なります。たとえば、私が先方の社長と直接関係を築いて案件を進める、といったトップダウンのアプローチは、経営層だからこそやりやすい。その武器はレバレッジを効かせるために最大限活用します。
