エンタープライズと良好な関係を築くには?
松本:特にエンタープライズ営業は、営業担当者がマーケティングやカスタマーサクセスの領域まで踏み込むなど、越境しなければ仕事が回らない側面があります。お客様の側から見ても、部門間の情報連携がスムーズな企業は、非常にポジティブに映るでしょう。そこで、エンタープライズと良好な関係を築き、サービスを使い続けていただくために「これだけはやっておくべきだ」という基準や活動はありますか。

山川:リードジェネレーションという観点では、投資が可能であれば、一定規模の展示会に積極的に出展すべきです。我々は展示会に出るなら、どこよりも多くの名刺を交換することを絶対的な目標に掲げ、そのための人員を惜しみなく投入します。
ここでも「越境」が重要になります。展示会に大勢が参加した次は、インサイドセールスが一気にアプローチをかけます。リードが急増するタイミングではインサイドセールスに人を集め、商談化が進んだら今度はフィールドセールスに人を集める。こうしたリソースの再配分を、経営の指示1つで迅速に行える組織体制が不可欠です。リード獲得に飛び道具はありません。CMやタクシー広告ではリードを獲得できませんから、人がいる場所に足を運ぶしかないのです。
ナーチャリングという観点では、我々が重要視しているのが、お客様がリアルで参加するイベントです。我々は毎年「Givery Summit」という大規模なリアルイベントを開催し、既存のリレーションだけで1,000名以上を集めます。そこでは、日本マイクロソフト様、リクルート様、ニトリ様、名古屋鉄道様といった弊社のパートナーやお客様にご登壇いただき、先進的なAI戦略や、AIの自社内での活用事例をトークセッションや、ピッチ形式で発表します。
完全に「クローズド」のイベントで、集客はもちろん、企画から当日運営まですべてを内製で行うからこそ、我々とお客様の間に一体感が生まれます。「何かあったらまずギブリーに聞いてみよう」と思ってもらえるようなマインドシェアは、こうした熱量のあるリアルの接点から生まれるのです。
マーケ組織が最初にやるべきことは「文章を書く」こと
松本:連載テーマは「マーケティング組織を立ち上げて最初の6ヵ月でやること」です。営業主体の組織に、これからマーケティング機能を立ち上げる、あるいは兼任で担当者が置かれる、といったフェーズを想定しています。そのような状況で、最初にセンターピンとして押さえるべきことは何だとお考えでしょうか。
山川:マーケティングを担うのであれば、まず「文章を書くこと」。それが最も重要な第一歩だと考えます。プレスリリースでも、展示会のキャッチコピーでも、LPの文言でも構いません。経営が発信したい本質を深く理解し、それを言語化できるか。
顧客やマーケットへの解像度が高いマーケターが書く文章には、サービスのポイントを的確に捉えた、魂のこもった言葉が宿ります。なぜこの順番で機能を説明するのか、なぜこの写真を選ぶのか、そのすべての意味を説明できる状態でなければなりません。その思考の結果が、クリエイティブや文章に表れるのです。
BtoB、特にエンタープライズ領域におけるブランディングの価値は、非常に重要になってきています。私は、「説明できないがなぜか選んでしまう」ものをブランド価値だと認識しています。安いから、速いから、といった合理的な理由だけではない、言葉にできない非言語的な部分への投資。それは、ROIでは測れません。そこに資金を投じられるかどうかは、最終的には経営者の意思決定でしかあり得ないのです。
松本:今日の話は、マーケターは「マーケティング」だけに閉じこもるな、という話だと受け止めました。マーケターとして「マーケティング」だけにこだわろうとするほど、逆に、活躍の場を失っていくのかもしれません。特にBtoBの場合、越境して複数の役割を兼ねることが、事業を推進するエンジンになると感じました。私たちビジネスパーソンに求められるのは、結果を残すこと。改めて背筋が伸びました。今日はありがとうございました。
