各社が展開するBtoBコミュニティの現在地
AIコマースプラットフォーム「ecforce」を展開するSUPER STUDIOは、2022年3月にユーザー限定コミュニティ「ecforce compass」を立ち上げた。同社の共同創業者で取締役CROを務める真野氏は、立ち上げのきっかけを次のように語る。
「ecforceの導入社数の急増にともない、カスタマーサポートへの負荷が高まったことが契機でした。サポート体制の拡充だけでは追いつかないナレッジ共有を、ユーザー同士の相互支援で補完・分散し、コマース事業者のノウハウ不足を解消したかったのです」(真野氏)
現在のecforce compassは1,139社、1,921人(2026年6月末時点)の規模に成長。コミュニティ内の掲示板でのノウハウ共有や限定ワークショップの開催のほか、大型オフラインイベント「CO-CREATION SUMMIT」などを展開している。運営は営業企画ユニットのRevOpsチームを中心に、現在は複数部門が連携して支えているそうだ。
一方、ドキュメント管理やプロジェクト管理を一元化するオペレーティングシステムを提供するNotion Labs Japanは、日本法人立ち上げ期からコミュニティ施策に注力してきた。同社の日本法人第2号社員であり、1人目のカスタマーサクセスとして参画した濵岡氏は、2022年に法人向けコミュニティ「チャンピオンズコミュニティ」を立ち上げた。
社内でNotionの定着を牽引するリーダー層(チャンピオン)を対象とし、約4年で700名規模へと拡大。イベント参加者数は3年で8倍に成長し、累計23社以上が自社事例を共有している。
事業にどう寄与?各社のアプローチ
最初のテーマは「コミュニティが事業に与えるインパクト」だ。コミュニティの活動は定性的な満足感に終始しやすく、事業インパクトへの接続に頭を悩ませる企業は多い。両社はどのような視点で事業貢献を捉えているのだろうか。
真野氏は「コミュニティ活動を単純な数値目標だけに縛るのは避けている」としつつも、社内での説明責任や事業フェーズを踏まえ「一定の定量指標を設定している」と説明する。
同社が事業インパクトを測る指標として重視しているのが「商談連携」だ。同社ではEC構築システムに加え、自社開発のMAツールやBIツールなどを展開しているが、多機能ゆえに営業アプローチだけでは顧客へ価値が届きにくい課題があった。コミュニティを通じて追加プロダクトを認知してもらうことで、ある半期の商談連携目標60件に対し、実績は129件(達成率215%)に達した。
またオフラインイベント「CO-CREATION SUMMIT 2024」の実施から6ヵ月後の時点では、注力プロダクトで47件の商談創出と19件の受注、他プロダクトでも147件の商談創出と63件の受注を獲得している。さらに、既存顧客同士の結びつきから新規顧客を紹介してもらう「リファラル創出」のサイクルも生まれているという。
これに対しNotionでは、コミュニティを「GTM全体のフライホイール」と定義。単一の部門KPIを追いかけるのではなく、各部門に価値が循環する仕組みを構築している。
「Notionは、プロダクトの価値を実感したユーザーが社内で自発的に利用を広げていくPLGのモデルで成長してきました。そのため、製品フィードバックを開発へ迅速に反映させること、そして社内で推進してくれるチャンピオンを支援することが極めて重要です」(濵岡氏)
濵岡氏が示したモデルでは、まずカスタマーサクセスがチャンピオンを育成・支援し、個社支援から面の支援へ拡張して解約リスクを低減。次にマーケティングがチャンピオンから実務に即したユースケースを発掘し、イベントや記事で社外へ発信して集客につなげる。営業はその事例を携えて商談に臨み、新規受注やアップセルを実現。拡大した顧客基盤から開発部門が製品フィードバックを吸い上げて機能改善へ反映させる流れだ。
「コミュニティ経由で330件以上のフィードバックを収集し、実際に11件以上が製品実装に至っています。日本のユーザー固有の要望を開発へ直接届け、実装された機能が次の満足度を生む好循環ができています」(濵岡氏)
