LINEヤフーは、2026年10月27日(火)に法人向けイベント「LINEヤフー BIZ Conference 2026」を開催した。これまで掲げてきた「Connect One構想」を土台に、ユーザーとの出会いから購入までの顧客体験(CX)と、その裏側にある企業の業務体験(BX)の両面をAIで支える新プラットフォーム「LINEヤフー Business OS」を発表した。
本記事では、キーノートで紹介されたプロダクトアップデートと記者質疑応答の内容をレポートする。
(写真右)LINEヤフー株式会社 上級執行役員 コーポレートビジネスドメイン ドメインCPO ビジネスPF SBU SBUリード 二木祥平氏
AIは「購買行動を決める最初の相談相手」に
池端氏はまず、生成AIによってユーザーの購買行動が変化していることを指摘した。サイバーエージェントの調査(2026年8月)によると、検索目的でのAI利用率はわずか1年3か月で21%から52%へと急増。さらに、AIに相談した結果、勧められた商品やサービスを実際に利用・購入した人は58%超と、約6割に上った。「AIは単なる検索ツールではなく、生活者の購買行動を決定する最初の相談相手になっている」と池端氏は語る。
同社が2026年4月にリリースしたAIエージェント「Agent i」は、1日あたり延べ約1,200万人が利用(※Agent i(領域エージェント含む)の平均DUB、Yahoo!ファイナンス等におけるAgent iの平均DUB、およびトークルームのAgent iの平均DAUを合算)。相談内容をカテゴリー分けすると、トップが金融・保険、続いて旅行、食品・飲料、さらにショッピング、教育、自動車、不動産と幅広い。選択肢が多く迷いやすいテーマほどAIが相談相手に選ばれている傾向があるという。
検索はなくならず「役割」が変わる
とはいえ、意思決定プロセスの中で「検索」はなくなったわけではない。同調査によると、AIに商品をおすすめされた後に「さらに詳しく検索する」と回答した人は77.3%。ユーザーはAIに条件や悩みを相談して候補を出してもらい、その後の検索で詳細を確認し、納得した上で商品を選んでいる。
カスタマージャーニーは一本道ではなく、さらに多様化していく。検索で裏付けを取って選ぶルートもあれば、AIに相談してそのまま購入するルートもある。また、汎用的なAIから、より詳しい企業独自のAIへと相談を引き継いで意思決定するルートも考えられる。池端氏は「企業側も独自のAIエージェントを構え、あらゆるルートの接点に対応していくことが求められる」と述べた。
AI時代のマーケティングに必要な4つのステップ
こうした変化を踏まえ、池端氏はこれからのマーケティングを4つのステップに整理した。1つ目は、従来のSEOだけでなく、AIに正しい情報を届けてAIの回答の選択肢に入り、新しいチャネルでの接点を増やす「見つかる・つながる」。2つ目は、多様化するニーズを汲み取り一人ひとりに合わせた「最適な提案をする」。3つ目は、予約や購入までシームレスな動線を設計する「次の行動につなぐ」。そして4つ目が、購入後も対話を続けてエンゲージメントを高める「関係を育てる」だ。
「マーケティングの本質は変わっていない。単にAIに合わせるのではなく、AIという新しい力を手に入れて、顧客体験を再設計し直すことに取り組むべきだ」(池端氏)
Connect Oneを経て「Business OS」へ
LINEヤフーはこれまで「Connect One構想」のもと、LINE公式アカウントを中心に、広告、LINEミニアプリ、CRM、決済、データ活用・分析に至るまで、あらゆる機能を1つに統合する基盤づくりを進めてきた。今回、この基盤にAIを実装し、法人向けサービス全体を「LINEヤフー Business OS」へと進化させる。
Business OSは、企業がユーザーと「出会う」「つながる」「対話する」「購入・利用してもらう」までのCXと、その裏側で顧客との関係を「育てる」、「業務を回す」、成果を「分析する」、施策を「運用する」というBXの両面を、1つの基盤で支えるプラットフォームだ。この基盤の上で、LINE公式アカウントは従来の顧客コミュニケーションの役割を超え、AIが自律的に企業活動を支援する「ビジネスエージェント」へと進化していくという。
池端氏は「CRM、予約・注文・決済のシステム、効果の可視化・分析を行うデータ基盤、広告や業務の運用改善を個別のツールで終わらせるのではなく、データを横断的につなぎ、その上にAIエージェントを実装していく。顧客との関係構築から日々の運用改善まで、企業のビジネスプロセス全体のアップデートを支えたい」と語った。
続いて登壇した二木氏は、このCXのファネルに沿って、各領域のプロダクトアップデートを紹介した。
【出会う】LINEヤフー広告の統合効果と新たな広告面
LINEヤフー広告でCVR・CPAが改善
今年正式にスタートした「LINEヤフー広告」は、LINEとYahoo! JAPANの広告プラットフォームを1つに統合したものだ。LINEとYahoo! JAPAN両面への配信が可能になっただけでなく、裏側のレコメンデーション・データ基盤も刷新。LINEのIDとYahoo! JAPANのIDのアカウント連携によって、検索からアクションまでユーザーの行動を幅広く捉えられるようになった。
配信モデルも大幅にアップデートされている。ユーザー行動を捉えてオークションの入札を最適化するほか、これまでCTRやCVRなどのイベントごとに別々に学習していたモデルを統合的に学習させることで、自動入札とオークションの精度が向上した。業種別にみるとCVRは10.67〜23.26%向上、CPAは8.55〜19.64%改善した(2026年9月 LINEヤフー調べ)。
「Agent i」上への広告配信も開始
検索の手前で行われるAIへの相談の場面でも、広告配信が始まっている。検索連動型のショッピング広告とディスプレイ広告のフォーマットを活用し、Agent iの中に最適な形で広告を表示する仕組みで、広告主側で特別な対応は必要ない。
Yahoo! JAPANトップページに「オープニングスクリーン」
一方で、すべての探索行動がAIの中に閉じているわけではない。いつものサイトを見たり、自ら検索したりするユーザーは依然として多い。そうした面でのインパクトのある広告商品として、2026年12月に「Yahoo! JAPAN」トップページの「オープニングスクリーン広告」の提供を開始する。
Yahoo! JAPANアプリやブラウザを開いた瞬間に画面全体に表示される広告で、新商品の発表など認知獲得が必要な場面での活用が想定されている。
2027年4月にリニューアル予定なのが、検索結果上でブランドのストーリーを伝える広告メニュー「ブランドサーチアド」だ。これまでのテキストや小さな画像ではなく、検索した瞬間にブランドのイメージを大きく届けられるようにするという。
【つながる】友だち獲得の接点をオンライン・オフラインで拡大
LINEヤフーの強みは、出会った後もユーザーとつながり続けられることにある。その中心がLINE公式アカウントだ。LINE公式アカウントは国内145万、日本・タイ・台湾の合計で295万(※2026年9月末時点の月間アクティブアカウント数)となっている。
プロモーションスタンプ・絵文字
友だち獲得の強力な手段となっているのが、LINEプロモーションスタンプ・絵文字だ。トークルームのスタンプサジェスト欄にもプロモーション絵文字・スタンプが表示されるようになった。
スタンプを獲得した直後にアカウントをブロックするユーザーへの対策として、ブロックとスタンプの獲得を連動させる仕様に変更。その結果、当日のブロック率は4分の1まで改善したという。
オフラインで出会った顧客とのスタンプ接点を増やす「LINE シリアルコードスタンプ」も10月1日に先行リリースした。来店や購入、イベント参加の特典としてシリアルコードを配り、LINEスタンプ・LINE絵文字を受け取ってもらうことで友だち追加につなげられる。
「LINEタッチ」は多店舗展開に向けAPIを提供
スマートフォンをかざすだけでLINE公式アカウントやLINEミニアプリにアクセスできる「LINEタッチ」は、4,500超のアカウントで導入され、累計タッチ数は約450万回に達した。公式デザインのフォーマットをアレンジした、企業・ブランドのオリジナルデザインへの対応も開始している。
また、2026年11月以降にAPIの提供を開始する。NFCタグの数が増えても管理が簡単になり、運用の自動化も図れるようになる。特典の複数回利用やURLの拡散といった不正利用への対策も施されている。
ビジネスプロフィールがGoogle検索・マップと連携
アカウントの情報を伝える「LINEビジネスプロフィール」は、Yahoo!検索やYahoo!マップ、LINE上で露出機会を広げてきた。今後はGoogle検索・Googleマップとも連携し、Googleの店舗情報ページにLINEのチャットボタンが表示されたり、Googleマップ上からLINEで問い合わせたりできるようになる想定だ。
二木氏は「今後のAI時代に備えても、ビジネスの情報をいかにリッチにするかが大事になる」と強調した。9月には、LINE VOOMに代わる新たな「投稿」機能の提供も開始。休業日や空席状況といったリアルタイムな情報を投稿すると、ビジネスプロフィールに掲載されるほか、LINEアプリのホームタブにも表示される。二木氏によると、レコメンデーションもアップデートしており、既存の友だちへの情報発信だけでなく、新たな友だち追加のきっかけにもなるという。
【対話する】広告から直接チャットへ、そしてAIが接客する時代へ
「チャット誘導広告」が12月に登場
広告で出会った商品について「もっと知りたい」「相談したい」というニーズに応えるのが、2026年12月に提供開始予定の「チャット誘導広告」だ。LINEヤフー広告の遷移先として、LINE公式アカウントのチャットルームを設定できるようになる。
チャット上での対応方法は段階的に拡充される。Phase1では、広告ごとにLINE公式アカウントへの遷移時に配信されるメッセージを設定できるほか、問い合わせへの自動応答やスタッフによる個別対応が可能。Phase2以降は、AIによる対応や、クーポン・フォームなどLINE公式アカウントの機能への遷移も可能になる予定だ。
「LINE公式アカウント AIモード」が11月から先行リリース
AIとの掛け合わせで顧客の接客体験をさらに高めるプロダクトとして、11月から一部企業を対象に「LINE公式アカウント AIモード」を先行リリースする。企業が持つ情報をAIが理解し、LINE上で24時間接客を代行するものだ。
特徴の1つ目は、AI側から話しかけて接客が始められる点だ。誕生日や購入履歴などをきっかけにAIがレコメンドし、購買サイクルを逃さずアプローチできる。2つ目は、過去のトーク履歴やデータを踏まえ、購入前の相談から購入後のフォローまで、一人ひとりに合わせた一貫した接客ができる点。3つ目は、AI用にインターフェースをゼロから作り直した点だ。テキストだけでなく音声での対話にも対応し、会話に合わせて商品情報を提示するUIコンポーネントも提供する。
企業が自社でAIエージェントを導入する場合と異なり、エージェント側の開発やUI設計は不要で、1億人以上のLINEユーザーに対してAI接客を提供できる。第1弾として、転職相談や中古車の提案、飲食店の予約などの領域で、11月以降順次リリースされる。
【購入・利用する】LINEミニアプリの月間利用者は3,000万人を突破
CXのラストワンマイルを担うのが「LINEミニアプリ」だ。月間の利用者数は3,016万人(2026年9月時点)に達した。今年はLINEアプリの右下に「ミニアプリタブ」が登場し、利用履歴やランキング、お気に入りからアクセスしやすくなった。
用途もモバイルオーダーや会員証にとどまらず、イベントのチケット、デリバリー、処方箋の順番待ちなどに広がっている。特に伸びているのがゲームカテゴリーで、1年前と比べて約6倍に増えた。
アプリ内広告(IAA)・アプリ内課金(IAP)の導入件数は5ヵ月で約1.4倍、IAAによる広告収益は前年比で約15倍に伸びた。さらに、LINEミニアプリのプラットフォームがAppleのミニアプリ向けパートナープログラムに参画したことで、Appleの手数料が26%から15%に下がり(LINEヤフー分の5%と合わせた手数料は31%→20%)、事業者の取り分は69%から80%に拡大する。
スクラッチ開発なしでミニアプリを活用できるよう、今年は美容予約向けの「LINEビューティープラス」、飲食店向けの「LINEレストランプラス」をリリース。今後はEC事業者向けに、ミニアプリ上でのコマースを実現する「ECストアオプション」も提供する予定だ。
AIとの対話でアプリを作る「LINEマイアプリ(仮称)」
あわせて、AIとの対話を通じてLINEミニアプリを作成できる「LINEマイアプリ(仮称)」の構想も発表された。イベントのWebページと集客管理画面、順番待ち機能、ゲームなど、提供したい機能をAIに伝えるだけでアプリを構築し、そのままLINE上で公開できる。LINEログインやソーシャルグラフを活用した友だちへのシェア、ランキングといったLINEプラットフォームの機能も利用可能だ。
記者質疑応答で二木氏が補足したところによると、最初のフェーズでは、Claude CodeやCodexといった手元のAIツールとLINEマイアプリの環境をつなぎ、ミニアプリやLINE公式アカウントのボットを自由に作成・公開できるようになる。将来的には、作成したアプリを配布できるマーケットプレイスのような仕組みも社内で議論されているという。
【BX】商品データとAIエージェントで企業の業務を支える
こうしたCXを実現するには、出会いからアクションまでのユーザーのコンテキストを捉えるデータ基盤が欠かせない。そこで新たなデータマネジメントツールとして、10月27日から提供を開始したのが「ビジネスマネージャー 商品管理」だ。
企業が商品カタログを登録すると、Agent iでのレコメンドやYahoo!検索の検索結果に表示されるほか、LINEヤフー広告を通じて広告枠にも掲載できる。将来的にはLINE公式アカウント AIモードやコマースソリューションとの連携も予定されている。登録した商品について、ユーザーとの出会いから、興味を持ったか、購入したか、再購入したかといった情報を一元管理でき、企業のデータとLINEヤフーのデータ、商品データを掛け合わせた分析を、ビジネスマネージャー上で行えるようになる。分析結果をCRMや広告施策につなげていくことも可能だ。
二木氏は、これまで広告配信用のカタログとYahoo!ショッピング用の商品登録などがバラバラだったものを1つに統合した点が最大の特徴だと説明した。効果計測も統合され、LINEアプリとYahoo!アプリを横断した商品ごとのリーチやクリック、成果が把握できるようになる。利用は無料。Yahoo!ショッピングの商品カタログとは将来的に自動連携される予定だが時期は未定で、現時点では新規登録が必要になる。
法人向けAIエージェント「Agent i Biz」
10月27日にリリースしたのが、法人向けAIエージェント「Agent i Biz」だ。データ分析や、LINE公式アカウント・LINEヤフー広告の施策立案を支援する。
第1弾として、専用のWebアプリ上で、LINEヤフーのデータを活かした市場分析・マーケティング分析が可能になった。また、利用中のLINE公式アカウントやLINEヤフー広告のアカウント状況を確認した上で、利用状況に合わせた最適な施策を提案する。
今後は、広告アカウントの操作や、MCP(Model Context Protocol)を通じたビジネスツールとの連携を進めるほか、LINEアプリから操作できる「Agent i Biz」専用のLINE公式アカウントもリリース予定だ。将来的にはクリエイティブ制作、調査、発注、会計まで、あらゆるビジネスプロセスを支えていくという。
Agent i Bizは当面無料、中小企業の支援を強化
Agent i Bizは、ビジネスマネージャーに関する一定の利用条件を満たすことで利用可能となる。当面無料で提供し、機能追加に合わせて利用実態を見ながら課金モデルを検討している。従来の営業体制ではサポートしきれなかった、中小企業を中心とした利用拡大を図る狙いがあるという。
Agent i上の広告は「可能性を感じつつ手探り」
2026年7月から段階的に開始されたAgent i上への広告配信について二木氏は、「相談カテゴリーごとにどのようなクリエイティブやターゲティングが有効か、まだテストで探っている段階。一部の業種では手応えのある事例も出てきている」と述べた。池端氏も、「AIとの対話で信頼できる情報を得て、そのまま購入するという体験が当たり前になれば、エージェント上の広告の成果はさらに上がっていくはず。ただ、そこにはもう少し時間がかかるだろう」との見方を示した。
なお、LINEヤフーは2025年度から2028年度の3年間で、LINE公式アカウント関連ビジネスの売上を1,400億円から2,800億円へと倍増させる目標を掲げている。AIの登場による変化をキャッチアップし、企業の経済活動を支えるための手段として、今回の一連の取り組みを位置づけている。
【関連記事】
・LINEヤフー、Yahoo!ショッピングに日用品・生活雑貨の新ストア「うろこざっか」を開設
・LINEヤフー、ヘアサロン特化の顧客関係構築サービス「LINEビューティープラス」を提供
・LINEヤフー、「Agent i」において、AIとの対話の文脈に応じた広告配信を拡大
・LINEヤフー、Yahoo!ショッピングのAI活用状況を公開 新機能やAIによる推奨の仕組みを説明
・セブン&アイ、ソフトバンク・PayPay・LINEヤフー・三井住友カードと戦略的パートナーシップ締結
この記事は参考になりましたか?
- この記事の著者
-
MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)
デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
