月7円の電話料値上げ
2007年の1月から、全国の電話料金が、月間で一律7円、全国で一斉値上げされることがほぼ決まっている。その値上げの理由は「ユニバーサル・サービス制度の維持」だ。
ユニバーサルサービス制度とは、「『NTTの固定電話』『公衆電話』『110番・119番などの緊急通報』など『日本全国どこでも、同じサービスを提供すべき』とされている通信サービスの維持費を、電話事業者各社で負担しましょう」という趣旨のものである。
かつては、こういうサービスの維持費は、採算を度外視してNTTが負担してきた。しかし、NTTも今や競争にさらされる民間企業。いつまでも採算度外視はできませんということで、2007年1月からは山間や離島といった不採算地域の費用のサービス維持費用の一部を電話事業者各社が、NTTに補填することになった。
補てん額は年間153億円。各社1番号あたり月額7円の負担となる見込み。
この補填額を、ユーザーに負担させるかどうかは、事業者の自由だが、KDDIとソフトバンクは、ユニバーサルサービス制度による1番号あたりの負担額を月額7.35円と発表した(注1)。
NTTドコモの中村維夫社長は「正式に決定したわけではないが、ユーザーに負担してもらう方向で検討している」と述べている。
(以上、某メルマガのコラムより抜粋、加筆)
この月間7円のユーザー負担。全国一律サービスの維持のためと言えば聞こえはいいが、要するに「値上げ」である。これに対し、「全国一律サービスの維持は電話会社の社会的使命。それを値上げでまかなう企業姿勢はいかがなものか」と批判する考えもありうる。
だが、わたし個人はこの制度を知った時、とっさにこう思った。「月7円? ということは年間84円。それで離島の人の電話サービスが維持できるわけ? OK、OK。ガチャガチャ言わないから持っていっていいよ」と。
負担といっても、まあ7円だ。年間84円。10年で840円だ。それで全国津々浦々の110番や119番が維持できるのなら、いいんじゃないでしょうか。別に。
と、ここでふと思う。ユニバーサル・サービスの維持が課題となっている、もう一つの業種が郵便局。全国の離島や離村の不採算郵便局をどう維持するかという問題。これをNTTと同じような方式で解決できないか。
この際、郵政公社も、月7円でも10円でも、一般家庭から集めれば良いではないか。「離島や離村の全国一律のユニバーサルサービスの維持のため」というお題目で。
郵政公社が私から7円を集金できない、その理由
だが、郵政公社が私から7円を集金することは難しい。NTTと郵政公社の違い、それはNTTは、我々の銀行口座にダイレクトにアクセスして7円をゲットできるが、郵政公社にはできないという点だ。
考えてもみよう。NTTをはじめとする電話会社が、我々から7円をゲットするのに必要な手間は何か。 来月の請求書に「ユニバーサルサービス負担料7円」と記して、徴収額を7円多くすれば良いだけである。そして、システム変更も不要。これは電話会社が、銀行口座からの月々の引き落としという「決済手段」を持っているからこそできることだ。
もしそういう決済手段を持っていない状態で、各家庭から7円を得ようとしたら大変だろう。「ユニバーサルサービスのための7円振込のご請求」という名目で、郵便振替用紙を送る? そんなことをしたら、その振替用紙の印刷代と封入代だけで7円を軽くオーバーするだろう。
逆に言えば、電話会社が我々から徴収するお金が月間7円で済んでいるのは、既に決済手段を持っているので、決済に関する費用が追加してもかからないからとも言える。(決済費用とは、要するに「お金の流通費」だ。先の義援物資の例での流通負担の多大さを思い出されたし)
つまり郵政公社は、NTTのように、我々のおサイフとダイレクトにつながる決済手段を持っていない。仮に、いち家庭から年間7円集めれば、全国の郵便ユニバーサルサービスが実現するという試算があったとしても、その7円を集めるための費用がおそらく7円を遥かに超えるだろう。
以上、「お金を広く薄く集める時にはたい時には、最初から決済手段を持っていることが重要」というお話しである。
さて、今回は、「被災地にはモノではなくお金を送るべき」、「だけど人は、モノは送ってもお金は出さない」、「お金を広く薄く集めるには、決済手段が必要」という3点を述べた。
後編では、この3点を前提として、「ロングテールはチャリティで使える理論である」という主張の、具体的な実装方法について述べていく。