販売しているCMSの中身をわかっていないベンダーもいる!?
―― CMSベンダーの意識も変化していったのでしょうか。
T氏 CMSベンダーにもいろいろあって、CMSベンダーの顔をしつつ、Web制作もやっているというところもありましたね。そこはCMSを販売をしているけれども、他の制作会社にはあまり積極的にシステムを販売しないようですね。逆にCMSベンダーの中には、直接問い合わせをしても「代理店を通して買ってくれ」というベンダーもあったりします。
そういうところでは代理店網に入らないとテンプレートの制作法などを教えてくれないということもあったらしいですね。恐らく、ベンチャーで体制が整っていないという部分が理由にあったと思います。一概には言えないですが、やはりベンチャー系のところが販売していたCMSは、購入後のサポートなどに不安があったという声を、制作会社さんやユーザーさんからよく聞いたのも事実です。
また、いま日本にはたくさんのCMSベンダーがありますが、海外製品をライセンス契約し販売しているところも多く、中にはマニュアルを日本語化したくらいで、販売しているベンダー自身もその製品の中身をよくわかっていないというところも結構ありましたね。
―― それは、大変ですね(笑)。
T氏 (笑)。だいたいそういうところは、カタログなどで世界の有名企業がいっぱい並んでるんですが、、実際はすべて本国での事例なんですね。それを見て信用して購入したものの、実は日本では始めての導入で、日本の代理店もよく理解していなかった…。そのため、サイトの公開が大幅に遅れたり、結局購入したCMSが使い物にならなかったなんて話も実際あったようです。もちろん私のいたところは、そんなことはありませんでしたが。
まだCMS導入に慣れていないWeb制作会社が始めてCMSを導入する場合は、CMSベンダーがどこまでサイト構築時にフォローをしてくれるかなどを確認したほうがよいと思います。同じく、CMSベンダーはCMS導入時に一緒に組むWeb制作会社に対し独自テンプレートに対する説明や、システム条件、またそのCMSの制限事項をしっかり説明することが必要ですね。
実際、雑誌の特集などでも、製品機能の違いの説明はあるのですが、こういうプロセスの違いについては、説明が少ないですからね。
システム系に強い制作会社はほんとうに少ない
―― 提案する側に求められるスキルが変わってきている?
T氏 そうですね。CMS導入を伴うサイト構築案件の場合は、構築後の運用部分のコストも見積もり段階で取ればよいのですが、多くのWeb制作会社では、サイト構築業務までしかコストを考えていなかったため、CMS導入後のフォローが必要になってしまい結局損してしまうところが多かったです。
これからはCMSの普及により、システムに強いWeb制作会社がもっと必要になってくると思います。いまのところWeb制作とシステム開発の両方がきっちりできる制作会社はほんとうに少ないのが現状ですが、ここ数年で徐々に増えて来てはいます。
―― 意識が高まってきてるんですね。
T氏 だと思います。CMSの導入に強いところの特徴としては、有名であるかどうかに関わらず、社内にきちんとしたシステム開発部隊があり、過去に複雑なシステムが絡むサイトを構築した実績のあるという点があります。こういったところであれば問題なくCMSの導入ができると思われます。
なぜならCMS導入はシステム開発知識のある方ならそんなに難しくないからです。しかしWebサイト構築が絡むCMS導入案件は、システム開発会社ではなく、どうしても案件のフロントがWeb制作会社になってしまい、システムに強くないところが多いためか、上手くお客さんの求めるCMS構築ができていなかったケースがたくさんあったと思います。