メールの件名が開封率を大きく左右する

ROIが意識されつつある中、今まで以上にメールマーケティングにおいても効果検証が求められてきている。アルトビジョンが行った調査では、PC向けメールマガジンを読む規準としては、「メールマガジンのタイトル(件名)」が60.4%と最も高く、次いで送信者名で47.6%という結果がでた。この結果に対して椎葉氏は、「メールの件名は圧倒的に大きなインパクトを持っている。そして、効果検証と改善において手間が掛からないので、ぜひ実施すべきだ」と解説した。
件名の考え方の参考にすべきものとして示したのが「雑誌」だ。女性のファッション誌など、『何年何月号』というのがタイトルだが、必ず『特集の題名(内容のサマリー)』が表紙に最も大きく書かれており、その良し悪しで売上も大きく変わる。こうした雑誌のように、メールマガジンもコンテンツの触りを書いた方が圧倒的に開封率が高い。
しかし、必勝パターンがあるわけではなく、内容や配信タイミングなどに合わせて、その都度、件名を最適化していかなければ効果を得るのは難しい。これが、メールマガジン担当者の悩みの種とも言える。例えば、1回の配信で50万通メ―ルマガジンを送るようなECサイトの場合、件名が少し違うだけで売り上げが数百万円単位で変わってくるため、毎回効果が上下するのでは致命的だ。それを、最適化するために作成されたのが、アルトビジョンが新たに提供するコンテンツ最適化エンジン「CODEシステム」だという。
例えば「件名A」と「件名B」があった場合、今までは担当者の勘や経験だけを頼りにAかBかを判断して送ってしまっていたものが、CODEを使えばプレ配信としてまずAとBの両方を同時に配信開始してテストを行い、一定数配信したところで、自動で結果の良かった方の件名を残りの配信対象に向けて本配信として送ることが可能になる。つまりA、B両方を試して、信頼できる結果を見て、あらかじめ効果を確認できるということだ。全体の何%をプレ配信に回すかといった設定もできる。さらに、パターンは4つまで設定可能で、4つの件名でテストしたり、件名A/Bと本文1/2をそれぞれ掛け合わせもできる。
「テストによってAが5%、Bが10%という結果が出たら、プレ配信後の残りのユーザーに対してはBで送るというシステムです。配信対象リストが10~20万件もあると効果も大きいと思います。ECの会社に特にメリットがあると思って開発しましたが、消費者と長期的に関係性を作っていくうえではコンテンツを読んでもらう必要が高いため、製造業の企業様からの評判も高いようです」
モバイル向けメールマーケティングの現況
続いて同社が行ったモバイル向けメールマガジンに関する様々なアンケート調査結果を紹介。モバイルの場合、メールを受信した後、すぐに開封する人が多く、PCに比べると「タイミングを狙った配信」の効果が期待できる一方、購読を止める決断も早いという。
また、読みたい時間帯については、昼休み(12時~13時)と仕事が終わったタイミング(19時~21時)にボリュームがあったという。HTMLメールに関する質問では、テキストのメールを好む人が過半数を超え、HTMLはまだ普及に至っていないようだ。モバイルのHTMLが好まれない理由としては、パケット通信料やデータフォルダに画像が入ってしまうこと、受信に時間がかかることなどがあったという。
この状況について椎葉氏は、PCの時代を振り返り「2000年頃のPCは、まさにこんな状況でした。ダイアルアップがメインで、プロバイダの料金体系も時間課金みたいな時代です。今ではブロードバンドも普及して、料金もほぼ定額です。携帯もいずれそうなり、作り方も改善されていくと思います。ただ、思ったより時間がかかるかもしれませんので、モバイルHTMLメールを検討されている方は、少し慎重になる必要があります」とした。
ログ分析だけではない、効果検証の考え方
「CODEは、メール1通ごとの件名や本文を最適化できるツールではあるが、メールマーケティング全体から言えば1つのパートにすぎない」とし、椎葉氏は最近行ったというレスポンス分析の方法を紹介した。
この分析は、ユーザーの会員登録年月ごとの平均クリック数を調べたもので、最近登録したユーザーほどクリック率が高く、登録年月が古いユーザーほどクリック率が下がっていき、非常に古くからのユーザーにおいては一定のクリック数となっていく。こうしたデータと、ユーザー獲得のために行った施策とを比較していくと、有効な施策が検証できる。さらに、登録ユーザーのうち、優良なユーザーを調べる方法として、直近数回の配信で、何回開封したかを調べる手法も紹介された。そこで抽出されたアクティブなユーザー属性を調査することで、同じような属性のユーザーの新規獲得のヒントになる。
メールマーケティングも年数を重ねていくと、登録ユーザーリストが古くなっていく。椎葉氏は「例えば30万件のうち10万件が有効ユーザーだったと分かると、『メールマーケティングが効かなくなってきた』と認識されるかもしれません。しかし、10万件生きてれば、それはそれで使い方あります。開封率やクリック率も大事ですが、数字ばかり見ていても分からないことが多いです。そんなときには、ユーザーにアンケートをしてみてください。例えば、本文が長いメールと短いメールを作ってA-Bテストやるよりも、『うちのメールの長さはどうですか』と聞いた方が早く、参考になるコメントももらえます」と、データだけではない検証方法について触れた。
最後に椎葉氏は、効果検証項目の全体像として、ログ分析・アンケートという軸に、短期的・中長期的という軸をクロスさせた図を示し「様々な指標を組み合わせて検証する必要があります。クリック率ばかり見ててもなかなか次へ進まないと思います」と語り、プレゼンを終えた。
