インターネットを活用した問屋ビジネスで流通革命を起こす
ここ数年来の厳しい経済環境下でも、着実に業績を伸ばしている企業は存在する。今回紹介する株式会社ラクーン(以下、ラクーン)もその1社。2006年にマザーズに上場し、4年連続で前年比120%以上の売上を達成、2009年4月期の売上は70億円を超えた。
まさに「急成長中のネットベンチャー」だが、そのビジネス領域は世間一般のネットベンチャーのイメージとは少々かけ離れているかもしれない。同社の主力サービスである「スーパーデリバリー」は、アパレルや雑貨を中心としたメーカーと全国の小売店をつなぎ、取引・決済の機能を提供するBtoBの卸売サイト。いまや斜陽産業や成熟産業などといわれてしまうことも多い「問屋」のビジネスである。
ラクーンが目指しているのは、従来の複雑な流通の仕組みにおいてメーカーや小売店が抱えている課題を解決し、流通の効率化を図ること。そのためにも、スーパーデリバリーでは特に地方の小規模な小売店を重視しているという。管理部 総務人事チーム 人事担当マネージャーの加藤裕美氏は、次のように説明する。
「従来、地方の小さな小売店がタイムリーに商品を仕入れるためには、東京や大阪などの大都市まで商談に出向く必要がありました。交通費もかかるし、人手の少ないお店では仕入れのために休業しなければならないケースもあります。それがスーパーデリバリーを利用することで、店を休むこともなく、全国どこからでも、好きなときにネットに接続して仕入れができるようになるわけです。また、商品の送料はかかるものの、交通費に比べればトータルの仕入れコストを大幅に軽減することができます」
メーカーの販路拡大・営業コスト削減のニーズが追い風に
スーパーデリバリーの運営開始は2002年。以来、出展企業(メーカーやインポーター)、会員小売店ともに順調に増え続けており、2009年9月末時点では出展企業1,000社以上、会員小売店が約2万5,000店舗、掲載商品は約26万7,000点にのぼる。特に注目したいのは、2007年11月からの景気後退および2008年9月のリーマンショックによる世界的不況を受けても、停滞することなく「右肩上がり」の成長を続けていることだ。
「小売店の仕入れニーズとともに、メーカーの販路拡大のニーズにお応えできることも大きいと思います。たとえば、これまで都市部の百貨店を主な販路としていたメーカーなどは、不況で百貨店での販売実績が落ち込んでいるため、販路を拡大する必要が出てきました。その一方で、営業コストはどんどん削られています。このような厳しい状況だからこそ、営業コストを抑えて新たな販路を開拓できるスーパーデリバリーの強みが生きてくるのではないかと考えています」(加藤氏)
なお、昨今ではスーパーデリバリーのようにBtoBの「卸売サイト」や「ネット問屋」と呼ばれるサービスも増えてきた。こうした競合の動向については、どのように捉えているのだろうか?
「スーパーデリバリーを始めたころは『インターネット上で仕入れができるBtoBのサービス』といっても、なかなかご理解いただけないケースも少なくなかったのですが、卸売サイトが増えてきたことで、こうした新しい流通の仕組みが広く認知されるようになりました。現状では、競合の増加というよりも業界全体への注目度が高まったことによるメリットのほうが大きいですね」(加藤氏)(次ページへ続く)