分析のコツは、KPIの数字を指標にしつつ「事実」を見定める
では、商品ごとに分析を行う場合、ECサイトではどのように実施すればいいのだろうか。商品の購買を分析するには、大きく分けて「カテゴリ購買分析」と「詳細購買分析」の2つがある。
商品への最適なタグづけ
カテゴリごとに購買データを分析する場合に重要なことの1つに、「商品への最適なタグづけ」が挙げられる。例えば、カテゴリ別の売上高で「雑貨・その他」カテゴリが4割、CDが1割程度というデータが出たとすると、一見CDがあまり売れないサイトのように見える。しかしこうした割合は、例えばカメラといったキラー商品を「雑貨」カテゴリに入れるか「趣味」カテゴリに入れるかといったことで、大きく変わってしまう。こうした「計測のためのカテゴリ分け(商品へのタグ付け)」を適切に行わなければ、キチンとした分析ができない。
複雑さに挑み、最適な商品をレコメンドする
また、個別商品レベルまで落として詳細に購買データを分析していく場合には、単純に売上の順位で考えるべきではない。例えば、低単価にも関わらず、「あと●●円で送料無料」というフレーズとともに、カート内でレコメンドされることで併売される確率が高い商品なども存在する可能性があるからだ。
しかし、併売率の高い商品が売上ランキング上位になったからといって、トップページに掲載しても意味がない。むしろ、カート脇の部分に表示されるからこそ購入率が高まる。同様に、メールマガジンで掲載した際、集客力が高いが直売には結び付かない商品などもある。重要なのは、「商品の特性を見極め、商品とユーザーが接触するタイミングとそのロジック」を考えていくことだと山本氏は語る。
「こうしたタイミングを提供するツールとしてレコメンドエンジンがありますが、その種類も機能も様々です。ヴィレッジヴァンガードオンラインでは利用するレコメンドエンジンを選別する際、特にロジックのABテストができるかという点を重視しました。レコメンドの方法は非常に複雑なため、このロジックを変えるだけで効果にかなりの違いが出ます。閲覧ベースのレコメンドか、購買ベースのレコメンドか。また、トップページのときは何を表示をするのか、カテゴリページのときは何を表示するのか。商品分析とともに、どういうタイミング、どういうロジックで商品を出していくかをしっかり考えてみてください」
マスメディアは、シャワーのように情報を流してくるメディアだった。しかし、PCやモバイルなどでは、あらゆるトラフィックを双方向で誘導することができ、購買情報・顧客情報・サイト内ログ等で分かる行動情報の収集・蓄積が可能になった。こうしたデータをどのように活用できるかで、売上は大きく変わる。つまり、顧客データベースという資産を元にして、誰に、どういうタイミングで、どの商品を、どういったメッセージで提供するかという部分の優劣が、企業自体の競争優位性を決める時代になってきたと言えるだろう。
