協和発酵キリンがトリプルメディア戦略に取り組んだワケ
ソーシャルメディアを組み入れるとなると、それなりのリスクもあります。ちょっとした行き違いから炎上してしまい、良好な関係を築けなくなってしまうケースもあります。社内にも、このようなリスクに対する指摘や、「あまりに新しすぎて効果が予測できない」といった意見もありました。しかし、リスクについていえば、考えられるリスクを全て挙げてみると、いずれも対処する方法があることがわかりました。
一方、効果については、ソーシャルメディアを積極的に活用している企業の方が、活用していない企業よりも成長しているという米国のレポートがあります。既に取り組んでいる企業の広報の方の話を伺ってみると、十分な効果を感じておられました。
協和発酵キリンは画期的な新薬の研究開発を事業の根幹に置いていて、新たな創薬技術を積極的に取り入れています。コミュニケーションにおいても、新しい手法を取り入れることで、先進性や躍動感を伝えることができると考え、社内を説得し、背水の陣で(笑)新しい戦略に挑戦する体制を整えました。
ところが、もう1つ関門がありました。当社のPC環境ではTwitterやYouTubeが閲覧不可の設定になっているのです。ソーシャルメディアの話をしても、接したことのない社員が少なくありませんでした。そこでまずは理解してもらうために、複数回に渡り部内勉強会を開催しました。パートナーである代理店にも協力を仰ぎ、ソーシャルメディアやデジタルデバイスを1から説明し、その効果やリスクをしっかりと伝えていきました。そして、部内でも「新しいことにチャレンジする」という風土を創っていきました。
以上のような仕込みを経てコミュニケーション戦略として掲げたのが、クロスメディアの1つの形、現在マーケティング業界で提唱されているトリプルメディア戦略です。サードパーティメディア(=マスメディア)、ソーシャルメディア、オウンドメディア(=自社メディア)の組み合わせにより、生活者の接触機会を創出し、認知率を向上させるという試みです。現時点では、製薬企業としてはもちろん、BtoB企業としても珍しい試みだと思っています。

