顧客の心理を読む
このような「優良顧客」…いわゆるロイヤリティの高いユーザーをロイヤル・カスタマー(Loyal Customer、以下ロイヤル顧客)と呼ぶことは皆さんもご存知のとおりです。企業またはブランド、などに対する依存度と忠誠心が強く、かなり高い確率で商品を購入してくれるこのユーザーは、あらゆる企業にとって喉から手が出るほど欲しいセグメントでしょう。当然、これらのユーザー層に対しては他との差別化が必要ですし、強力に囲い込んでおく必要があることは言うまでもありません。
さて、ここからはちょっとCRM的なアプローチになります(特に、既に獲得した顧客との関係においてはDRMとCRMの垣根はないと思ってください)。このようなロイヤル顧客の囲い込みについては、ほとんどの企業がその必要性を感じ、実際に施策を打っているはずです。しかし、現実的にはこの優良顧客の囲い込みに成功している例はさほど多くはありません。
それはなぜなのでしょうか? 実は、囲い込む側の企業に、以下のような問題があることがポイントなのです。
- RFM分析の盲信。Recency/Frequency/Monetaryのデータで機械的にランク付けしようとし、かえってロイヤル顧客を見失ってしまう。多くの場合、対象者の購入履歴から最終購買日と購入回数、金額を確認し、回数と総額が多い層がロイヤル顧客と判断しがち
- 対象顧客の心理や資質を考慮しない。潜在的なファン層(ブランド信者)を抽出できない
- Transactionが発生しなければ、顧客分析はできないという誤解。当然最初の購入時にロイヤル顧客としてピックアップされることはないし、マス媒体へ打った広告の結果からロイヤル顧客を選定することもできないと思い込んでいる。その結果最良のタイミングを失う
- 顧客との関係が永続的なものと誤解してしまう。分析が中途半端で顧客の真の志向性を検証していないにもかかわらず、その表面上の変化にもシステムが追いついていけない。そのため、顧客を育成するという発想ができない
特に上の2は大きな問題です。例えばパレートの法則にある20:80という数字を絶対的なものと信じ込んでいると、十分な分析もせず ―もしかして実際は40:60のようにさほど顧客ごとの収益性に差がないのに― 一部の顧客にサービスを集中させてしまうこともあり得ます。つまり、「声の大きい目立つ客」を重用することで、かえって多くの顧客の離反を招いてしまうわけです。
また、20%の「優良顧客」と80%の「一般顧客」を十把一絡げに2グループにわけてしまい、「優良顧客」の中に存在する「不良顧客」と、「一般顧客」に隠れている「潜在的な優良顧客」を見逃してしまう事例も少なくありません。
もうおわかりでしょう。顧客との関係においてロイヤリティ向上を促進させるためには、カスタマー・インサイト(Customer Insight)を十分に考慮しなければならないのです。そして、そのポイントは「コミュニケーション」と「多角的な顧客認識」に他なりません。