いち早く大局を把握するための入口・出口分析
ここからは、入口・出口分析を行うことで大きな成果向上を実現した事例を紹介しよう。
ユーザ中心PDCAでは、大局をいち早く把握しユーザシナリオの最適化を進めていくために、入口(ターゲットユーザ)とそれぞれの出口(成果指標)を追い、ユーザシナリオごとの成果を把握することを勧めているが、サントリー酒類が実施した角ハイボールのキャンペーンは、入口・出口分析を実践したことで大きな成果につながったという。
このキャンペーンでは、角ハイボールの飲料体験者の増加をゴールとしていた。キャンペーンサイトでは、そのお酒が飲める飲食店の特集を行い、さらにユーザーへのインセンティブとしてクーポンを発行しリアル店舗への来店を図る、といったキャンペーン設計を行っていた。キャンペーンの効果を測定するためのツールはビービットが提供する広告効果測定ツール「ウェブアンテナ」を利用していたという。
しかし、クリック数はあるにも関わらず、コンバージョンとして設定したクーポンの発行数が伸びない。そこで、「ウェブアンテナ」を使いコンバージョンに至ったユーザを調べてみると、「渋谷」「新宿」など地域名が多く、このシナリオを強化すべきではないかという新たな仮説が導かれた。
つまり、クーポンの発行数が伸びなかったのは、「角ハイボール」で検索する人がサイトに来てクーポンをダウンロードするという仮説自体が間違っていたことに要因があり、新たな仮説のもとユーザーシナリオの変更をすばやく行ったのだ。改善策としてはリスティング広告の出稿ワードを変更したり、SEO対策を変更するなど、入口を見直した。その結果、予想以上の成果につながったわけだ。(サントリー酒類事例記事:月次→週次に意思決定スパンを劇的改善“大企業”サントリー酒類が超速PDCAを回せるワケ)
マーケティング担当者のあるべき姿
ほとんどのマーケティング担当者は、データチェックや効果検証の準備作業に時間が割かれ、成果を上げるための分析・改善に時間を割くことができていない。本当に求められているのは、「どの施策がどれだけ成果に結びついたのか」ということだけだ。
入口と出口を押さえることを最優先し、不要なデータにまみれる時間を削減すれば、“ユーザ中心PDCA”を回しながら、迅速かつ戦略的なコミュニケーション施策を打つことができるようになる、と語り、遠藤氏は本講演を締めくくった。