機能性も大事だがこだわりを伝えたい ~ 思いを実現させたワードクラウド
検索性の良さが大切だというのは理解できるが、商品へのこだわり・思い入れも伝えたい。だから一般のECサイトで採用されているような検索方法を安易に導入するのは…。老舗通販会社の株式会社フェリシモが抱えていたのは、そんなジレンマ。理想と現実にどう折り合いを付けるか悩んだ末、同社が選んだのは株式会社プラスアルファ・コンサルティングの開発したサイトナビゲーション「アルファスコープ」を採用することだった。
検索時に商品カテゴリーを指定したら、あとは商品のコンセプトで選んでもらいたい。そんな思いから、フェリシモは検索機能をリニューアル。アルファスコープを導入し、ワードクラウドが検索画面上に表示されるインターフェイスへと刷新した。
同社マーケティング本部eビジネス部 部長の島重仁氏は、アルファスコープを採用した理由について次のように説明する。
「アルファスコープの面白いところは、視覚的に商品カテゴリー、商品の機能性、形容詞的なお客様の好みといったワードが雲のように浮いているインターフェイス。われわれの『お客様のイメージを膨らませてから買っていただく』というアプローチと、うまく掛け合わせることができそうだと感じました」(島氏)
リニューアルの結果、サイト内での検索ページのPV数は1.5~2倍に。ユーザーからの評判も上々だ。
Web推進の一方、導入から商品の良さを伝えられるカタログにもこだわり
フェリシモがそこまで検索の見せ方にこだわっていたのには、同社のユニークなビジネスモデルと関係がある。
フェリシモは「コレクション」という独自の販売形態を採用。ブランドごとにラインアップされたパンツやシャツなどのシリーズを選び、毎月「継続するか、停止するか、あるいはコレクションするシリーズを変更して継続するか」と確認するシステム。端的に言えば、毎月定期的に商品が届く頒布会形式に近い。
服のサイズだけ指定して、色やデザインがどんなものかは、届くまでのお楽しみ。ブランドごとのコンセプトに沿って、こだわって作った商品を試してもらいたい。普段買わないような商品でも、新しい自分を発見する機会にしてほしい、というのがフェリシモの思い。それが支持され、顧客からは「フェリシモさん」と親しみを込めて呼ばれている。
同社は元々、カタログを主な販売チャネルとしていたが、1995年にはECサイトを立ち上げ、現在は月間PV8000万の大型サイトに成長している。顧客の利便性を高め、郵送やファクスによる受注の手間・経費を削減しようと、現在はWebでの受注率100%という目標を掲げている。
ECサイト経由の注文率が57%にまで伸びているが、それでもカタログを捨てるつもりはない。カタログというメディアは、導入部分から語りながら商品の良さを伝えていける。そんな特徴を評価しているからだ。
ライフスタイルの変化により表面化してきたECとカタログ通販のバッティング
カタログのような見せ方にこだわりがある一方、ユーザー側のライフスタイルが変化していることもフェリシモは理解している。
新しいところでは、iPhone/iPadの普及が目覚ましい。それに合わせてフェリシモはiPhone/iPad向けのeカタログを制作。eカタログの閲覧数、そしてiPhone/iPadからのトラフィックは順調に毎月伸びてきているという。
「まだ母数として多くはありませんが、お客様の数は確実に増えています。利用頻度も高いです。iPhone/iPadはパソコンを起動するよりも速くサイト閲覧に移れますから、利用頻度が高くなっているのではないでしょうか。主婦の利用も多いように思われます」(島氏)
またECが生活に浸透するにつれて、消費行動にも変化が生まれていると島氏は指摘する。
「以前はECとカタログ通販を、お客様は分けて考えていらっしゃいました。どちらかと言えば、バッティングしていたのはリアル店舗とEC。店舗で商品を見てネットでオーダーするお客様が増えてきたと問題視されていました。
それが最近では、かなり複合的にクロスオーバーしてきています。『カタログ通販で月に7千~1万円分商品を買っていたけれど、今月はECでこれだけ使ったから、カタログの分を減らそう』と考える人が現れ始めているようです」(島氏)
ECサイトと競っていくためには、当然あるべき機能がないと新規のユーザーは困ってしまう。あるべき機能は提供していかなければ。アルファスコープ導入の背景には、消費行動の変化によるフェリシモのそんな危機意識もあったのかもしれない。
必要な情報はクロール収集 ― ワードクラウドによる検索機能を手間なく導入
ところが、いざECサイトと同程度の検索機能を提供しようと考えた時、フェリシモのビジネスモデルが災いした。オリジナル商品を作って顧客に届ける。その間、詳細なサイズや商品の色など、細かな商品データをインデックス化して管理する必要がないため、フェリシモには検索する際に必要となる商品データが不足していたのだ。
「Googleに商品データを提供したり、Amazonに出品したりといった機会がありました。外部のサービスと比べてみて、初めて自社が世間と違うことに気が付きました。本来あるべき情報が無い。そのギャップを感じています」(島氏)
検索用のシステムを普通に一新していたのなら、「必要なデータをどうやって収集するのか」「既存のワークフローに手を加えるのか」等、検討事項が多く厄介なことになっていたかもしれない。
だが幸いにも、アルファスコープの導入に関しては、検索用データが不足していても問題がなかった。既存商品情報ページのクロールだけで必要な情報は集めることができるからだ。フェリシモ側の手間は、ほとんど掛からずに導入できたと島氏は振り返る。
「どちらかと言えば、苦労したのは操作性の部分です。Ajaxを使い、ページ遷移無しで検索結果リストを変えられるようにしました。体感的には、5倍くらい速く検索できるように感じてもらえるようになったのではないでしょうか」(島氏)
検索性の向上以外に直帰率改善・販売促進の効果も期待できる
アルファスコープを導入したことで、検索性の向上以外にも得られたメリットはいくつかある。例えば、リスティング広告。同社では、検索エンジン上でのユーザーの検索キーワードが、あらかじめ入力された状態の検索結果ページをランディングページになるよう作り込み、直帰率の改善を図っている。
リスティング広告やロングテールワードなどからユーザーがサイトを訪問した際、検索結果ページに目当ての商品が表示されていなかったら直帰される可能性が高い。ワードクラウドを埋め込んでいれば、目当ての商品がヒットしなくても、関連性の高い商品カテゴリーなどをレコメンドし、直帰を防ぎ滞留時間を延ばす効果があるという。
あるいは一押しの商品をプッシュするのにも活用できる。一般的な検索フローの場合、基本的にユーザー任せ。ユーザーの求める商品情報を入力させて自由に掘り下げさせることになる。対してアルファスコープの場合、一押し商品に関連するワードをワードクラウド内で目立たせるように設定することも可能。つまり、検索性を向上させるだけではなく、販売促進の目的でも効果を期待できるのだ。eビジネス部の西本氏もその効果について認めている。
「他社のECサイトとは違うコンセプトで運営していますが、残念なことに、お客様が入力するワードは『バッグ』や『ワンピース』といったアイテム名なんです。アルファスコープで表示させているような(『たっぷり』『エレガント』『味わい』『すっきり』といった形容詞的な)ワードを打って検索するということを、お客様はなかなか思いつかないし、経験していない。
また、当社の場合、新しく訪れていただいたお客様に、各ブランド(カタログ)の世界観を理解していただく必要があります。そのためには、我々から提案していく必要があります。そう考えると、ECサイトとカタログの中間的なところでレコメンドが可能なアルファスコープは、ちょうど良いナビゲーションだと言えます」(西本氏)
今後の課題はテキスト検索の精度向上
とはいえ、フェリシモがアルファスコープを導入してから、それほどは日が経っていない。まだまだ改善点なども残されているようだ。
「テキスト検索がヒットしないことが多々あります。『カーディガン』と検索いただいても、商品情報ページにカーディガンというテキストが含まれていないことがあるのです」(島氏)
ところが実は、カーディガンに分類できる商品はフェリシモに存在している。カーディガンのことを各ブランドの雰囲気を伝えるため、テキストとしては「カーデ」という言葉で商品情報ページに記入しているために、検索でヒットしなくなっているのだ。
そうした言葉のズレや、カタカナ/日本語/英語表記の違いといった部分をシステム的に許容できるようにできないものか。あるいは、フェリシモ側が商品情報ページをメンテナンスして一般用語を使うように徹底していくのか。いずれにせよ、テキスト検索の精度を上げていくのが今後の課題の1つだと語る。
「プラスアルファ・コンサルティングには、しっかりとサポートしていただいています。僕らは、ものづくりには自信を持っていますが、言葉の専門家ではありません。今後、引き続き協力しながら、チューニング等を行っていきたいですね」(島氏)