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ソーシャルメディアマーケティングは従来のマーケティングと「180度違うもの」~ループス・コミュニケーションズ 斉藤氏インタビュー

 Facebookの利用者増加の曲線は、1年前のTwitterのそれに似ている――。株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役の斉藤徹氏は、Facebookの普及状況についてそのように分析。ソーシャルメディアマーケティングの舞台としてはFacebookが本命になるとし、先行して取り組んで成功を収めた企業の事例を紹介している。先行企業に続いて成功を収めるために必要な心構えなどはあるのだろうか。ソーシャルメディアマーケティングに取り組む上で必要なことは何なのか、斉藤氏に話を聞いた。

大都市圏ではmixiを追い抜いた!Twitterに続き、Facebookも普及するか?

 2011年に入り、Facebookに注目が集まってきている。socialbakers.comによると、直近(2011年7月8日時点)のアクティブなFacebook会員数は約380万人。半年で約2倍の人数に増えてきている。

 ただ、日本のインターネット利用者はPCベースで6,000万人ほど。イノベーターとアーリーアダプターを合わせた16%分に当たる約1,000万人の壁、キャズムを越えたわけではない。既に1,500万人以上に利用されているTwitterの域にはまだ達していないわけだ。 

 ソーシャルメディアマーケティングの第一人者である株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役の斉藤徹氏は、そんなデータを引用しながら、それでもFacebookには今後の成長が期待できると主張。

 「昨年のTwitterと、今年のFacebookは動きが同じ。会員の増え方が似ています。有名人が使い始めて、関連書籍の数が増えた。今年の後半ごろから、本命であるアーティストなどの参入も相次ぐことでしょう。Facebookは日本でも定着していくのではないでしょうか」と予見する。

 特に大都市圏ではFacebookの利用が拡大している。Google Trends for Websitesのデータによると、東京、神奈川、大阪、愛知、などではFacebookのビジター数はmixiを上回っているのだ。

 「日本での競合サービスとしてmixiがよく挙げられます。両サービスの違いとしてmixiが学生中心に広がったのに対して、Facebookは違う火の付き方をしています。mixiの愛好家はそのまま残るでしょうが、Facebookが中心になる人も増えるはずのではないでしょうか」

Twitterよりも分かりやすいFacebookは企業によるソーシャルメディア活用の本命か

 ユーザー数の成長曲線は1年前のTwitterと酷似。しかし、企業側の食い付きはTwitter以上だという。

 「Twitterは使うのが難しいんです。アカウントを作っても、何をすれば良いか分からない。海外の企業は、TwitterをCRM(顧客管理)か広報の機能を中心に使っています。それに対してFacebookは分かりやすい。自社のホームページと同じように、写真や動画などのコンテンツを置けます。ファンが交流する場所としてページを設けて、一方通行ではなくて双方向で交流できる場所として使えるのです」

 実際、ループスにソーシャルメディアマーケティングについて相談に来る企業の話題も、去年まではTwitterだったのが、今ではFacebookに焦点が移ってきているそうだ。

 世界的にはフォーチュン100社の84%がTwitterかFacebookを使っている。Facebookの普及で出遅れていた日本でも、遅かれ早かれ、同程度の水準まで企業利用は進んでいくのではないだろうか。

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Twitter/Facebook利用を成功させるため、最大の障壁となるものは?

 一方、斉藤氏は企業がソーシャルメディアマーケティングを成功に導きたいのなら、最大の障壁になるのは顧客との接点が少ない社内の管理職だと指摘。従来型の企業組織のまま、管理職が上から目線で顧客への対応について指示しているようでは、炎上する可能性が極めて高いと分析している。

 「ソーシャルメディア上では、今までとまったく違うお客様との接し方が求められています。求められているのは人間と人間の対等な関係。僕たちの年代、40~50歳代はずっと行き過ぎた資本主義社会を経験してきましたから、上から目線に慣れてしまっています。企業にとって都合の良い情報だけを提供しようとし、本来行うべき情報発信を避けてしまう人が管理職には居る。そういう人がかかわってしまうと、直ちに炎上してしまいます」

王のジレンマならぬ企業のジレンマ。目指すのは“オープンリーダーシップ”

 現在の状況は、印刷機が登場した時に王が抱えていたジレンマと似ていると斉藤氏は語る。印刷機の登場で本が普及し、市民が本を読んで考え、意見を述べるようになった。啓発された市民は抑制的な手法で統治することは困難。進歩的な考え方を持たなくては、王がその座を追われることにもなりかねない。

 現在起こっているソーシャルメディアの普及もそれと同じ。考え方を180度切り替えて、企業が上から目線で顧客をコントロールしようという考えは捨てることが大切だという。机上で考えた通りにバズを展開するということはできないので、現実を直視することから始めなくてはいけないと斉藤氏は話している。

 「“オープンリーダーシップ”とも言われていますが、今までのコントロール思考を手放しましょう。その代わり、“愛される”ことによってお客様の力を借りながらマーケティング展開していくという発想に切り替えないといけません。

 今までマネジメントに対しては、マクレガーの『XY理論』でいうところのX理論、性悪説に立った権限行使と命令統制を旨とするマネジメントと、性善説に立って自主性に委ねるY理論が、ケースバイケースで使い分けられてきました。それがどんどんX理論が通用しない世の中になってきているわけです。

 マネジメントだけの話ではなくて、企業文化自体もコントロール思考とは無縁の文化にしていかないといけません。外に向けて“顧客第一”と言いながら、中に対しては予算のことばかり言っている。もう、そんな時代ではありません。根本から企業文化を直さなくてはいけない企業も多いはずです」

 世界的に行き過ぎた効率性や利益重視の企業文化を見直す時期が来たのかもしれない。ビジネスというものは、そもそも社会に貢献するためにできたもの。見返りとして自然と売上と利益が付いてくる。そんなビジネスの原点に立ち返る必要があるのではないか――。それこそが斉藤氏の考える「ソーシャルメディアマーケティングに取り組むためにもっとも大切なこと」なのだ。

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この記事の著者

中嶋 嘉祐(ナカジマ ヨシヒロ)

ベンチャー2社で事業責任者として上場に向けて貢献するも、ライブドアショック・リーマンショックで未遂に終わる。現在はフリーの事業立ち上げ屋。副業はライター。現在は、MONOistキャリアフォーラム、MONOist転職の編集業務などを手掛けている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2012/02/28 21:28 https://markezine.jp/article/detail/14043