スポンサードサーチ Ver.3について先ずは押さえるべきポイントは
Yahoo! JAPANなどの検索結果画面に掲載される検索連動型広告「スポンサードサーチ®」。サイト集客を考える上で欠かせないサービスとなっているが、そのスポンサードサーチが11月10日、スポンサードサーチ Ver.3へとアップデートした。
広告管理ツールのデザインや操作方法だけでなく、広告配信システムの基幹機能、広告料金の入金方法なども全面的に刷新された今回のアップデート。アップデート内容に関する詳細はヤフーの開設した「移行ポータル」に掲載されているが、スポンサードサーチ Ver.3の運用を最適化するため、早急に押さえておかなければいけないポイントは、どのあたりになるのだろうか。
ヤフー担当者に話を聞いたところ、次の3点については優先的に覚えてほしいという。
- スポンサードサーチ Ver.3で変更された広告配信システムの基幹機能
- 1.の変更を踏まえたヤフー推奨の最新スポンサードサーチ運用方法
- 新しい広告管理ツールでの操作により早く慣れるため、覚えておきたいデザイン上の主な変更点
この記事では、これらのポイントについて取り上げていきたい。
マッチタイプに「フレーズ一致」と「絞り込み部分一致」が追加
スポンサードサーチ Ver.3では基幹機能のうち、キーワードのマッチタイプ(2011年11月 検索方式から呼称を変更)と、品質インデックスの紐付け方法に変更が加えられた。
運用に当たって、より大きな影響が出そうなのはマッチタイプの変更。旧スポンサードサーチでは検索キーワードと入札キーワードが完全に一致した時に広告を掲載させる「完全一致」、そして入札キーワードを拡張させ、関連性がある時にも広告掲載する「部分一致」の2種類のマッチタイプが用意されていた。
それがスポンサードサーチ Ver.3からは、入札キーワード+αが検索された時にも広告が掲載される「フレーズ一致」のマッチタイプを追加。入札キーワードが「MarkeZine」だったら、「MarkeZine 翔泳社」や「MarkeZine 編集部」で検索された際にも広告を掲出させることができる。
さらに、部分一致に新たなバリエーションが追加された。関連キーワードでも広告掲載する部分一致の機能を、キーワード単位で設定できる「絞り込み部分一致」というマッチタイプだ。
例えば「MarkeZine 翔泳社」という入札キーワードで、「翔泳社」の部分については関連キーワードでの掲載を認めないように設定。すると、「マーケジン 翔泳社」「マーケティング 翔泳社」では広告が表示されるが、「MarkeZine 編集部」では表示されない、といった具合になる。(参考記事)
実は、マッチタイプの変更点はそれだけでない。
完全一致・部分一致の仕様についても変更があった。完全一致はより緻密に設定できるように、部分一致は運用の手間を省きつつ広範なキーワードで広告掲載できるようにチューニングされている。
完全一致の場合、例えば旧スポンサードサーチでは「引越し」というキーワードで入札すると「引っ越し」でも「引越」でも広告は出ていた。それがスポンサードサーチ Ver.3では「引越し」でしか広告掲載されなくなったのだ。
もう一方の部分一致については、検索キーワードと入札キーワードとの関連性を判断するロジックを修正。旧スポンサードサーチと同じ入札キーワードを使っていても、スポンサードサーチ Ver.3ではより広範な検索キーワードで広告掲載されるように刷新されている。
品質インデックスは入札キーワードと紐づけられるように
もう1つ挙げた品質インデックスの紐付け方法について。品質インデックスは、キーワードと広告の関連性・親和性の高さを評価する指標。品質は検索連動型広告の掲載順位などに影響する。
その品質インデックス、旧スポンサードサーチ®では広告に紐付いていたものが、スポンサードサーチ® Ver.3から入札キーワードと紐付けられるようになった。
従来の紐付け方なら、広告を変更して品質改善を図るのには向いていたが、どのキーワードで品質が悪いのかと分析するのに向いていなかった。
今回の変更によってキーワード別の品質を把握できるようにしたことで、入札キーワードの入れ替えによって品質を改善するようにしてほしい。そんな狙いがヤフーにはあるようだ。
部分一致で広げて、対象外キーワードの設定で効率を上げる運用にトライを
マッチタイプや品質インデックスに手が加えられたことで、スポンサードサーチの効率的な運
用方法も変わってくるはず。提供元であるヤフーはどのような運用を想定しているのだろうか。続いては、ヤフーの推奨する運用方法について紹介していこう。
運用にそこまで手がかけられない場合、マッチタイプの部分一致を活用していきたい。入札キーワードと関連する広範な検索キーワードで広告が掲載されるため、完全一致を多用するのと比べてキーワード登録・管理の手間を圧倒的に省略できる。
ただ、漫然と部分一致を利用していては、広告パフォーマンスを改善できない。そんな時にはスポンサードサーチ Ver.3で大きく見直しが図られた「対象外キーワード」の機能を活用しよう。
新しい広告管理ツールでは【検索クエリーを表示】のタブを操作することで、実際に広告掲載された検索クエリーの一覧を表示できる。
一覧に出てきた検索クエリーのうち、パフォーマンスの悪いキーワードを選択。リストの上側にある【対象外キーワードとして追加】のボタンを押す。するとそれ以降、対象外に指定したキーワードでは広告配信されなくなる。成果につながらないキーワードを対象外キーワードに設定していくことで、パフォーマンスを向上することができるのだ。
広告掲載が見込めないキーワードでの運用は品質の低下を招く
スポンサードサーチ®で集客を図る場合、ビッグキーワードでの掲載は入札価格が高騰しがち。費用対効果良く集客しようと考えて、複合語など、ロングテールのキーワードで稼ごうとするトレンドがある。
ただロングテールを重視するあまり、中には10個近くもキーワードを組み合わせて入札するなど、そもそも検索されていないキーワードで入札している広告主も散見されているそうだ。
スポンサードサーチ® Ver.3には「キーワードアドバイスツール」が追加リリースされた。以前使われていたツールのように、特定のキーワードおよび関連キーワードの検索数を調査できる。
このツールを使って、例えば「マーケティング」で調べてみると、関連キーワードの「マーケティング セミナー 東京」での検索数は著しく少ないことが分かる。
このような広告掲載が見込めないほどのスモールキーワードでの入札があまりに多い場合、アカウント全体の評価が下がってしまう恐れがあるという。
事前にキーワードアドバイスツールで調査し、運用してみて掲載されなかったら削る。そんな運用がヤフーからは推奨されている。
アカウントを正しい設計で運用することに目を向けよう
費用対効果を改善するため、旧スポンサードサーチでは完全一致至上主義、膨大なキーワードでの運用、入札価格をこまめに変動させることでの露出コントロールといった動きがあった。
こういった取り組みを否定するわけではないが、スポンサードサーチ Ver.3では過剰な取り組みは品質に悪影響を与えかねない。移行後は品質が今まで以上に重要になるそうなので、アカウント全体のバランスを見て、正しい設計で運用していくことにもっと目を向けてほしいということだ。
キャンペーン単位の予算設定のみ可能に
最後に広告管理ツールの大きな変更点について。
旧スポンサードサーチ®ではアカウントとキャンペーン、2つのレベルで予算設定ができたが、スポンサードサーチ® Ver.3からはキャンペーンのレベルでのみ予算設定が可能に。従ってキャンペーンレベルでの予算設定が必須項目になっている。
旧スポンサードサーチからの移行の際、一定のルールで予算設定情報を自動的に移行されたが、アカウントレベルでの予算設定がなくなった分、意図せぬ設定になっている広告主も中にはいるかもしれない。意図したとおりの設定になっているかどうか、まずはスポンサードサーチ Ver.3の新しい広告管理ツールで確認してみることが必要だ。
また予算設定のトピックで触れておくべきポイントとして、「曜日・時間帯ターゲティング」の新機能が挙げられる。曜日・時間によって15分単位で入札価格の調整などを行える機能だ。
以前は露出量をコントロールしようと、予算設定の数値をこまめに変更する広告主もいた。だが、変更頻度があまりに高すぎると、システム側で適切に広告配信できなくなることもあったという。
ヤフー側としては、今後は曜日・時間帯ターゲティングを使い込んでもらうことで細かな露出量コントロールを実現してほしいようだ。
パフォーマンス分析のレポート機能なども使い勝手を考慮して改善
運用パフォーマンスを確認するレポートの機能もスポンサードサーチ Ver.3で大きく変更が施された。従来は定型レポートしか使えなかったが、今回から表示項目・表示順などのカスタマイズ性が高くなっている。
カスタマイズの仕方がよく分からない場合、あらかじめ用意されている「お勧めのレポート設定」を使ってみてほしい。新規レポートの作成画面で【お勧めの設定を反映】の項目をクリック。8種類のテンプレートの中から、希望のレポート形式を選ぶことができる。
運用実績を確認する際、レポートだけに頼るのではなく、広告管理ツール上から操作しながら広告グループ単位、キーワード単位で状況を把握・分析したい広告主もいることだろう。スポンサードサーチ Ver.3ではそうした際の操作性が大幅に改善されている。
以前はキャンペーンのページならキャンペーンの一覧のみ、広告グループのページなら広告グループの一覧のみを表示。「このキャンペーン、広告グループでのキーワード別運用実績を見たい」という時には、都度ページを掘り下げていく必要があった。
それが、スポンサードサーチ Ver.3からはアカウント全体のキーワード/広告/広告グループ/キャンペーン別の運用実績をタブ切り替えで確認できるようになった。特に中小規模のサイト運営者にとっては、アカウント全体を俯瞰しやすくなっているので、レポートに頼らずとも広告管理ツール上である程度の情報を集められるようになるだろう。
また、マトリックス状にアカウント内の階層を切り替えられるようになった。左カラムの【表示階層選択】から階層を指定することで、調べたい階層に直接飛んで確認を行うことができる。
階層を上がったり下がったりする煩わしさが減ったのはうれしいところ。配置を覚えるまでは大変かもしれないが、次第に使い勝手の良さを実感してくるのではないだろうか。
スポンサードサーチ Ver.3向けにヘルプも刷新
スポンサードサーチ Ver.3への移行に際して、ヘルプページも刷新された。よく参照されるページのランキングや、関連ページのレコメンドなども表示されるようになっている。
このヘルプページの情報なども参考にしつつ、MarkeZineでは広告主向け/広告代理店向けのQ&A記事を近日中にアップする予定だ。
最後に1つだけ、設定についての注意点を。旧スポンサードサーチからの移行に当たり、切り替え直前の設定情報ではなく、スケジュールの余裕を見て多少前の設定情報がスポンサードサーチ Ver.3に移行されている。
10月末~11月初旬に変更された設定情報は移行されていないため、該当期間中に設定を変更している企業は広告管理ツールにアクセスの上、移行後の設定内容についても確認しておいてほしい。