なぜいま、O2Oが注目されているのか
「O2O」とは、オンラインを活用した販促・マーケティングによって、「リアル」店舗での購入につながる活動のことを指します。それでは、なぜいまO2Oなのでしょうか。直接の契機はスマートフォンが普及したためだと私は考えています。
誤解している方も多いのですが、スマートフォンは、”ガラケー”(フィーチャーフォン)の高性能版ではありません。むしろ、小型のPCに近く、まったく別の思想で作られたものでした。
ご存知のとおり、スマートフォンは、アップル社のiPhoneがその原型になっています。アップル社の主力製品がiPodとMacしかなかった頃、スティーブ・ジョブズが次の主力商品として開発していたのはタブレット端末(現在のiPad)でした。しかし、iPodの普及を通じて見出した「iPodサイズで、携帯電話にもなるiPad」の開発へと舵を切った結果、iPhoneが生まれました。その出自からも明らかなとおり、スマートフォンは電話機の延長ではなく、持ち歩ける汎用端末として開発されたものなのです。
ですから、(電話専用端末にカメラやインターネット機能が加わり多機能化した)ガラケーと、もともと手のひらサイズのPC(汎用端末)として開発されたスマートフォンは、できることも、ユーザー体験も根本的に違うということを改めて認識することが重要になってきます。
「リアル」店舗を運営する側からみると、ネットの世界はこれまで、アマゾンや楽天、価格コムなどがあり、「リアル」店舗の対極にある存在と考えられてきました。しかし、スマートフォンを使えば、家でも外でも気軽にインターネットができる利点があります。実店舗がこれを活かすことができれば、「リアル」店舗はネットの世界と共存できるわけです。むしろ、「リアル」にとって武器にすることが可能なのです。
私が「スマポ」をはじめたきっかけ
私は2010年には、「ショッピッ!」というバーコード価格比較アプリを作り、運営をしていました(現在はIMJに売却)。60万人以上が利用しているサービスなので、WEBマーケティングをしている方は目にしたことがあるかもしれません。

ショッピッ!の最大の利用者は、店頭で目の前にある商品のバーコードをスキャンする消費者の皆さんです。消費者がほしいものを、オンラインも含めた最も安い店で買うということは非常に合理的な行動です。2010年時点でのショッピッ!のユーザーは、スマートフォンを駆使できる30~40代の男性が多く、アーリーアダプターに限られたものでしたが、このような購買行動は年々増加しており、スマートフォンで情報武装した”スマートな”購買行動をする人たちは、今以上に増えると考えられます。
その結果として、店舗の小売店はいつのまにか「ショーウィンドウ」化してしまうようなホラーストーリーは、あながち間違ってないように思えてしまいます。
しかし、そんなストーリーが、私たちの人生を豊かにする世界でしょうか。買い物するときの高揚感、ウィンドウショッピングを通じて形成される自身の好みや審美眼、衝動買い、店員とのコミュニケーションによる気づきや発見。これらは、消費者として自分自身を豊かにするための非常に重要なピースだと、私は思うわけです。
これが、私が「ショッピッ!」とはまったく逆のアプローチである、オンラインtoオフラインのサービスを始めたきっかけのひとつです。