「仕事はできる人のところに集まる、その中で格闘しろ」
青葉――その後、経営企画部や化粧品事業部を経て、2002年に国際事業部に配属されています。やはり徹底して数値管理をされたのですか。
90年代後半にバブルがはじけて国内の売上が落ち込み、資生堂のブランドを知っていただくことを第一義としていた海外事業も、それ自体として利益を上げることが求めらるようになりました。
国際事業部の時は、海外子会社全社の経営管理を統括する経営管理グループのグループリーダーをしていたので、各地の時差を利用して、アメリカ、アジア、ヨーロッパの子会社と、1か月に1回朝から晩まで国際事業部長の隣で現地責任者とテレビ会議で議論を重ねて、意識改革も含めて徹底的に利益体質への生まれ変わりを図っていきました。2年ほどかかりましたが、そうやって土台を固めました。
青葉――そして、台湾資生堂の責任者、その後中国事業部の事業管理部長を歴任されていますが、ここではマーケティングに包括的に取り組まれていたのでしょうか?
そうですね。台湾資生堂は海外子会社の第一号であり、台湾の化粧品市場でシェアトップを維持している名門中の名門でした。事業展開も、ちょうど日本の資生堂をそのまま小さくしたような会社でした。
特にECなど積極的に進めていた新規事業もあったので、それらを育てる道筋を立てながらも、仕事のほとんどは、そうした恵まれた市場でさらに成長するにはどうするかというプロモーションを考える日々でした。
一方、2008年から取り組むことになった中国事業では、ECサイトの企画も推進しました。ここでの経験は、今回の「ワタシプラス」の開設に非常に役立っています。
青葉――こうして伺っていると、財務部時代から現在までずっと疾走し続けている印象があります。そうした姿勢は、現在の薗田さんのマネジメントの方針にも通じるところがありますか?
そうかもしれませんね。財務部の頃、財務部長に「薗田さん、仕事はできる人のところに集まるのだから、その中で格闘しろ」と言われ励みになったとともに、実際にたくさんの仕事をこなす中で仕事の質が向上していきました。最初は目が回りましたが、次第に優先順位を付けられるようになり、大局観も養われ、量に圧倒されないタフさが身に付いてきました。その経験があるので、私は基本的に部下の人達にはできるだけ、多くの仕事をしてもらうようにしています。
それと、いつも意識しているのは、権限委譲です。任せることで、責任の重さを感じてもらいながら、よりポジティヴに仕事に取り組んでもらうことで、できるだけポテンシャルを引き出したいと思っています。
売上、会員数……あらゆる点でトップを目指す
青葉――そうした経験を経て、改めて「ワタシプラス」という壮大なチャレンジに向かわれている今、資生堂として力を入れたいことは何でしょうか。
まずは、お客さまに「ワタシプラス」を利用いただくことで、中長期的に化粧品通販市場においてトップのサイトになることです。ECの売上、会員数、ユーザー満足度などあらゆる点でトップを目指していきます。
当社のお客さまには幅広い年齢層の方がいらっしゃいますし、むしろ店舗販売の第一線にいるスタッフが接しているのは比較的年齢の高いお客さまです。「ワタシプラス」では当面、主に若年層を中心とした新規のお客さまとしっかり関係性を築くという目的を見据えて、サービスを磨き上げることに全力を傾けたいと考えています。
店頭には、現在数百万人の「花椿CLUB」会員さまがいらっしゃいます。また、元々の資生堂サイトには資生堂ネット会員さまもいます。これらのお客さまを、できるだけすみやかに「ワタシプラス」に引き継ぎたいと考えています。
そのためにも、話題となる情報を絶え間なく提供することが不可欠と考えています。若年層のお客さまの動向を中心に、どういう会員さまがどんなコンテンツを好むのかを把握して、導線やコンテンツ自体の改善まで視野に入れて検討を重ねています。
私は、Webで起こっている状況をデータによって客観的に把握・判断し、Webマーケティングをコントロールする、コックピットのような経営を目指しています。したがって、私が見ているのはデータが中心です。経営管理に携わっていた国際部門や中国部門でも、基本的に主要なデータが手元に届くようにし、今どこで何が起きているかを常に把握できるようにしていました。今も同じように、「ワタシプラス」の主要なデータを管理しています。
