DMP/オーディエンスマネジメント:外部サイトとのデータ連携が、消費者の態度変容を可視化する
そして最後に『Adobe Media Optimizer: Extending analytics: Activating audiences across the enterprise』のセッションでは、AutoTrader.comのエンタープライズ・アナリテックスグループのシニア・ディレクターであるScott Hernalsteen氏が事例紹介のプレゼンテーションを行った。

シニア・ディレクター Scott Hernalsteen氏
このセッションで印象的だったのは、参加者の半数以上がAdobe Analyticsの最上位バージョンであるInsightを活用しているユーザーということだ。日本ではまだトライアルレベルの導入実績だと聞いているが、BIツールの簡易版ともいえるオフラインとオンラインの深堀分析ができるこのツールを現場で使いこなしているというのは、米国ウェブアナリストの層の厚さを物語っている。
Auto Trader.comは、中古車の買い手と売り手をマッチングさせる、いわゆる中古車検索サイトだ。「このビジネスモデルで重要なのは、Trigger to the Market(購入のきっかけ)を見つけることだ」とHernalsteen氏は言う。つまり、子供が生まれた、子供が大学に入った、車が壊れたなど、消費者のニーズ(必要性)とウォンツ(欲求)を理解して、適切な施策を行うことが重要ということだ。

消費者の行動を誘発する要因の一つとして、アメリカンフットボールの決勝戦「スーパーボウル」のCMが例として取り上げられた。国民的祭典とも言えるスーパーボウルのゲームの間に自動車ブランドのCMが流れると、そのCM前後の1時間でAuto Trader.com上の車の検索数が、ブランドではLincolnが242%向上し、車種ではHyundaiのSanta Feが1004%向上したという。
このように消費者行動のきっかけを理解することは重要だとし、Hernalsteen氏は自社で取り組んでいる『Online Consumer Decision Journey(オンライン上の消費者の態度変容)』の分析の取り組みを紹介した。
消費者が広告主であるディーラーでリードコンバージョンするまでに、どのようなサイトを訪問し、どんなコンテンツに接触した上で購入行動に至ったのか。それを知るために、Auto Trader.comは他の中古車サイト(KBB)とパートナーを組み、複数中古車サイトと地元ディーラーサイト間のオーディエンスデータを収集し分析を行った。その結果、ディーラーサイトのリファラーデータ上では、ユーザーの56%はGoogleから流入し、Auto Trader.comからの直流入はたったの1%しかないという結果が明らかになった。

しかし同時に、複数サイトをまたいだユーザー行動をみると、34%の車の購入者は中古車サイトで充分に検討した後、ブラウザのツールバー上のGoogle検索窓から近くのディーラーを検索し、ディーラーサイトに訪問していることも判明した。さらに、中古車サイトを訪問せずに直接ディーラーサイトへ訪問した際の直帰率が34%であるのに対し、中古車サイトを経由した際の直帰率は12%。また在庫確認まで至ったユーザーは、直接訪問で62%であるのに対し、中古車サイト経由では80%という結果に至った。
このようなオーディエンスデータの分析により、Auto Trader.comでは購入に至る5日前のユーザーの行動を予測する事ができるようになり、ユーザーの態度変容を追いながら、広告やコンテンツのターゲティング配信に反映させているという。
日本では個人情報保護という観点で、オーディエンスデータの活用を躊躇している感があるが、米国では購入者のクッキー情報だけをAuto Trader.comのような媒体社に送付する機能のついたCRMツールが活用されるなど、匿名個人のオーディエンスデータの積極的活用がすすんでいるという印象を受けた。
【編集後記】
ブレークアウトセッションに参加して、先進的な取り組みをする企業が米国には多いと感じた。もちろん、米国にもユーザー企業のピラミッド構造は存在しており、これからデジタルマーケティングに着手する企業の数のほうが多い。一方で日本でも業界の最先端に挑戦する企業もあるが、絶対数はまだ少ないように感じる。
米国の事例を共有する文化がフォロワーを刺激し、業界を盛り上げている気がする。ぜひ日本でも、様々な取り組みをしている企業の事例が発表され、業界全体が盛り上がることを願う。(著者:大山忍)