いかにブランド体験を作るかが大切
Pat Connollyは450店舗以上の店舗を持ち、長年に渡って米国でフランスのキッチン雑貨などを販売する人気ショップ、ウイリアムズ・ソノマに在籍するCMOだ。
同氏は小売業界のカンファレンスでキーノーを務めた経験もある著名なCMOで、ダイレクト・マーケティング時代にはカタログコンテンツのパーソナライズを進め、現在ではデジタルチャネルも含めたマーケティング領域全般を統括している。
Jamie Nordstrom氏は全米有数の大型チェーンデパート、ノードストロームの創業一家の一員であり、オンラインビジネスの責任者である。今では増収分の80%を稼ぐまでにeコマースを成長させたJamie氏だが、売上だけではなく、実店舗での体験とデジタル体験をシームレスに繋げ、顧客体験創出の全体設計をする事が大きなミッションとなっている。
対談はPat氏がJamie氏に質問をする形式で進んだ。実店舗を全米規模で展開し、またカスタマーサービス面でも長年に渡り評価されてきたブランドのトップエグゼクティブがどのように現在のオンラインビジネスを捉えているのか、非常に興味深い対談となった。その中でも、特に興味深いコメントを下記に紹介する。
- 今の消費者(特に30代以下の年代)は個人情報を提供する際、それに伴ったサービス提供を期待する。その要求に答えられないとブランド価値は毀損する。
- レコメンデーションやターゲティングは基本ではあるが、それを突きつめるつもりはない。いかにブランド体験を作るかの方が大切。また、消費者が気持ち悪さを覚えないようにする必要もある。特に若い世代は一瞬で企業がどうデータを使っているか見抜いてしまう。
- 実店舗と同じ感覚でオンラインでのサービスを提供しようとするな。コマースにはコマースの流儀があり、品揃え、返品方法等、実店舗とは異なるルールが存在する。
- 各チャネルで顧客情報を共有し、統一されたメッセージを送るのが5年前の考え方だった。これは間違っていないが、今では正しくもない。実店舗、コマース、モバイル、カタログ、DM、コールセンター、それぞれ求められる体験が異なるので、各チャネルの特徴、自社の顧客が何を求めているのか、正確に把握する必要がある。昔からカタログとDMでは同じ事をしており、それを今日の複雑化した消費者行動、チャネルに合わせる努力が必要。
- クロスチャネルで顧客体験を作るために一番重要なのは「カルチャー」。関わる部門の全てが顧客に向き合い、より良いサービスを提供する事を考えなくてはいけない。その「カルチャー」がない限り顧客体験の創出などあり得ない。
- デジタル上でパーソナライズされた体験を提供し続けない限り、小売り企業は10年後には確実に倒れる。購買前の事前調査も含め、消費者行動のかなりの部分はデジタルにシフトしている。
- ロイヤリティプログラムは全てがポイント、クーポン、ディスカウントの世界だった(十分効果的だが)。ただ、今は顧客側もより良いサービスを期待しはじめている。単純なオファーを提供するのもではなく、サービスのプラットフォームにしたい。