サグラダファミリアのような「未完成さ」が人を集める
押久保:生活者の声を集まるやり方には色々あると思います。最近だとソーシャルメディア上の声を集めたり。でも企業はなかなかそれを上手に使えない印象です。理由はどこにあるのでしょうか。
坂田さん:「デジタルで消費者・生活者を巻き込む」ということを、特別なことだと捉えているのではないでしょうか。例えば、ユーザーとの向き合い方。プロモーションとして一過性で付き合うことももちろんありますが、大切なのは継続的に「一緒につくっていこう」というスタンスを持つことです。また、難しいことですが、商品やサービスの課題を正直に伝えることで、生活者にも「わたしが参加しなくちゃ」と思ってもらえるものです。
押久保:その先にいる「人」を意識することが大切だと。
北島さん:私は坂田さんから、「ユーザーへの問いかけ方が重要」と教えて頂きました。これが、簡単なようで難しい。私たちは、車を売るために広告宣伝を行っていましたが、Blabo!では「どんなときに車が必要なのか」という我々の悩みを伝え、向き合ってもらわねばなりません。既存のリサーチ手法ではなく、ユーザーに届く問い方をせねばならないのです。

坂田さん:生活者に参加してもらうには「余白」が必要なんです。そのため、一方通行で「新しい商品を発売しました」というコミュニケーションではなく、プロセスに参加してもらうことで、参加できる余白を残すことが大切です。いまだに建設中のサグラダファミリアのように、「何ができるかわからない」という未完成さが人を集め、参加欲求を高めることにつながります。
押久保:でも、生活者に悩みを吐露して、一緒に向き合ってもらうなんて、大手企業ではなかなかやりづらいと思います。
北島さん:一番大事なことは実行するということです。でないと、アイデアをもらっても「はい、ありがとう」「終了」となってしまう。当社の場合は、「やるならやれ」って感じで、実行体制を経営陣が担保してくれるので、アイデアをご提供頂いたら実行する責任を持つことができます。
押久保:アイデアを頂いたら、できることはきちんと実行する。人と人の信頼関係をつくる作業と一緒ですね。
坂田さん:マーケティングが発達したことにより、生活者との距離がどんどん離れていってしまっています。その結果、人間同士の関わりではなく、企業と消費者という溝が生まれる構造になっていると感じます。しかし、本来なら八百屋の店主にように、買い物にきた主婦と一人の人間として、直接話しながらニーズをくみ取る姿が正しいと私は思います。そのためBlabo!では、企業担当者と生活者が直接対話し、声を聞くことができるシステムを提供しています。彼女の食べたいものを知りたい時、アンケートではなく直接聞きますよね?(笑)。その感覚と一緒です。
押久保:房総半島での大プロジェクトを、Blabo!を利用して進めていると伺いました。背景には、どんな思いがあったのでしょうか。
北島さん:ガリバーは買取事業を中心に効率化を追求してきた会社なので、ユーザーとのコミュニケーションは苦手なんです。さらに「買取」というイメージが先行し、車を買う時にガリバーを選んでくれません。今は新車も扱っていますが、なかなか認知されていないんですよ。房総半島で進めているプロジェクト『ハント』は、大型商業施設からリースさせて頂いた約3,000平米の、ゾーンプロデュースを行うというものです。新車も中古車もある、まるで家電量販店のような場を作り、ガリバーとお客さんの関係性を作りたいと思っています。
押久保:ハントは継続的にユーザーと関係を構築していくための場で、それを作るためのアイデアをBlabo!で募っている、ということでしょうか。
北島さん:そのとおりです。約3,000平米のスペースを、ただ車を並べるだけに使いたくないんです。「だったら何があったらよい?」というのを、Blabo!で聞いています。2014年秋にオープンするのですが、その1年前にBlabo!で発表してしまいました(笑)。約3000平米のスペースを生活者と共につくるって、楽しいと思いませんか。