コンテクスト/ユーザーの意向/オーディエンスデータ
―― そういったことが明らかになってくれば、広告、マーケティングにおける取り組みが勘と経験から、いわゆるデータ・ドリブンへとますます加速していきそうです。

広告、マーケティング領域における過去との大きな違いはデータがとれ、そのデータを軸に施策が展開できること。この一言に尽きます。これまで「広告」と言えばテレビ広告をまず思い浮かべる人が多いと思いますが、データを軸にしない広告が無駄な投資になりやすいのは明らかです。
例えば、私はアメリカンフットボールが好きです。アメリカンフットボール視聴者層のペルソナは年齢18歳~35歳、バドワイザー好き、ピックアップトラックに乗っているという感じで定義されているため、バドワイザーの広告をよく見るのですが、私は年齢も違うし、バドワイザーも飲まないし、ピックアップトラックにも乗っていないんですよね(笑)。
一方、私はゴルフが大好きで日本に行く予定もあります。こういったデータを軸に施策を考えた結果、日本でオススメのゴルフ場を紹介する広告を出稿したとすれば、どちらが効果の高い広告となるのかは一目瞭然ですよね。
私の経験からいうと、広告効果を決定する要因は、コンテクスト(要因、環境、周りの状況)、ユーザーの購買意向・意志、オーディエンスデータ(個人の趣味趣向データ)という3つに分けられると思っております。データを軸にこの3つの要因をどのように組み合わせれば効果を最大化できるのかを考えることが大切なのです。
これからの主戦場は間違いなく“データ”
―― データを軸にマーケティングを組み立てていきましょう、という流れが加速していると思います。DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)やファーストパーティデータの収集など、データに関連する取り組みにスポットが当たっている印象です。
これからのビジネスの主戦場がデータになることは間違いありません。オンラインアドバタイズメントのビジネスにおいても、Eコマースのビジネスにおいてもそうなるでしょう。
ひとつよいことを教えてあげましょう。ECコマースやオンラインアドバタイズメントといったデータを軸にしたビジネスはネットワーク外部性(Network externality)の影響を非常に受けます。
例えば、グーグルのビジネスを要約すると「アルゴリズムを使って最適化な広告を配信すること」と言えます。グーグルが所有するデータ量が膨大になればなるほど、データを軸により精度の高い広告が配信できるようになりますので、広告効果は向上していきます。
一方でアルゴリズムが効果的になるということは、ユーザー体験の向上にもつながり、結果的に広告効果も高まります。つまりユーザー体験がよくなり広告体験もよくなると、ますますユーザーが増えその結果広告主も増えます。同時にそれは取得できるデータ量がますます増えることも意味しています。このようなネットワーク型のサービスにおいて好循環のループが起こることをネットワーク外部性(Network externality)と言います。ビジネスを成長させるには、この好循環をいかに継続させていくのかが重要となります。
グーグル、アマゾン、フェイスブック、ツイッター…。情報を探す、モノを買う、コミュニケーションをするといったようにそれぞれサービス特性は異なりますが、共通して言える点は巨大なデータ収集装置だということです。
近年ではフェイスブック、ツイッター、ピンタレストといったソーシャルサービスの普及によって、人と人とのつながりもデータで把握できる時代になりました。グーグルがGoogle+を開始した大きな理由は、検索キーワードだけではなく人と人とのつながりデータが欲しかったからだと私は思います。