サイエンス(データ)とアート(クリエイティブ)の融合
―― こういった状況からもマーケターはますますデータに強くなる必要があると感じます。
そう思いますね。マーケティング領域で活用できるデータ郡は、既にものすごい量になっています。一方で効率的に成果につなげることも要求されています。それを支援するために色々なプラットフォームが登場していますが、統一化されていないため逆にマーケターの負担を増やす状況となっています。
また、こういった状況が進む中できちんと正しくデータを扱っていくためには、数学、統計、コンピューターサイエンスといった領域の知識が必須となり、これまでマーケターに求められていなかった領域の見識が求められつつあるのが現実です。さらに欲を言えば、大容量データを処理するアルゴリズムを自分で作れるなどの能力があるとベストだと思います。

―― おっしゃることは理解できるのですが、すごくハードルが高いことだと感じます(笑)。
いますぐは無理かもしれませんが、すこしづつ勉強していくことが大切です。それに私はデータだけを見ていればよいと言っているわけではありません。矛盾するようですが、データに囚われすぎてもいけないのです。
グーグルでYouTuneの担当をしていた時に、素晴らしいテレビ広告を創ったクリエイターの方々と仕事をしました。そのプロジェクトの中で誰でも知っているコカ・コーラのCMを創ったクリエイターと会う機会を得たのですが、広告においてクリエイティブやストーリーテリングがいかに重要なのかを学びました。データを偏重しているだけではユーザーの心は動きません。ようは、サイエンス(データ)とアート(クリエイティブ)をいかに上手く融合させるのかが重要なのです。
そういった経験から、テクノロジーだけではなくこれまでの広告のよい文化をマリンソフトウェアのサービスに注入していくことが、私の働くモチベーションとなっています。なので、すごく前向きに仕事ができています(笑)。
Standing on the shoulders of giants(巨人の肩の上に立つ)
―― 最後にこれからの取り組みについて教えてください。
直近ではクロスチャネル、マルチチャネルの対策が重要と言われはじめています。その最適解を導きだすことは簡単ではありません。ただ、その最適解を導きだすという行為は、今まで誰も考えつかなかったまったく新しいものを生み出すという行為ではありません。これまでの先人たちの知恵を借りつつ課題解決を図っていけばよいと考えています。

「Standing on the shoulders of giants(巨人の肩の上に立つ)」という言葉をご存知ですか? 確か元々はアイザック・ニュートンの言葉だったと思いますが、自分の発見は先人たちの偉業の上に成り立っているということを、この言葉は意味しています。
私たちの取り組みもこれに似ていて、これまでの先人たちの取り組みの上に自分たちの取り組みは成り立っていると私は考えます。このような考えを持ってマリンソフトウェアはサービスを拡張していきたいと考えてますし、マーケターのみなさん自身も持つべきだと思います。
マリンソフトウェアでは日々複雑化するマーケティング環境に対応できるサービスの構築を目指し「Marin Labs」という組織を2013年10月に立ち上げました。この組織はクライアント、エージェンシーと密に協力しより効果的にデジタル広告を活用していくためのテストを共同で実施し、そのフィードバックをサービスに活かしていくという目的を持った組織です。こういった取り組みを通して、デジタル広告産業をさらに成長、発展させていきたいですね。
デジタル広告産業はまだまだ黎明期の段階だと思います。複雑怪奇な「ワナメーカーの謎」を解いていくことは、産業の成長にもつながることだと信じています。その謎をどう解いていくのか、それを考え実行する毎日が楽しいですね(笑)。