パーソナルデータの利用・流通に関する研究会
2012年11月、政府は新規ビジネス創出のため、個人情報を匿名化して売買するためのルールをつくり、個人情報保護法改正案の提出も視野に入れているという報道があり、大きな注目を集めた。宮一氏は「条件を満たせば、個人情報に相当するものを本人の同意なく第三者に提供してもいい、という方向に個人情報保護法を変える可能性があると報道されたのが大きかった」と指摘する。
こうした動きにともなって立ち上げられた研究会のひとつが総務省の「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」である。発表された報告書には、「パーソナルデータ利活用の7つの原則」が示されている。

その内容はスマートフォン プライバシー イニシアティブの基本原則とほぼ同じだが、「取得の際の経緯(コンテキスト)の尊重」などが加わっている。また、宮一氏は、この報告書が示した「実質的個人識別性」という概念の重要性を強調した。
「実質的個人識別性」とは
個人情報保護法では、個人情報を「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)」と定義している。

一方、「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」の報告書では「保護されるパーソナルデータの範囲を『実質的個人識別性』をメルクマールとして判断する」としている。「実質的個人識別性」とは、(氏名や生年月日などの個人情報がなくても)結果的にその人として特定され得るということ。宮一氏は、「継続的に収集される情報が匿名データであったとしても、“名前はわからないけれど、あなたはファッションが好きで、よくあそこに行ってますよね”という情報が当たっていた場合、それは個人に関する情報であるということになる」と解説する。

「今まではIPアドレスやCookieは個人情報ではないと考えられていましたが、これらの組み合わせによって実質的個人識別性を得たときには、やはり対策を考えなければいけない。何かと何かを組み合わせたら実質的に(ある人物)につながるということを「再識別化」と言いますが、そういう部分を完全になくそうとすると本当の統計データになってしまう」