ターゲティングはむしろありがたい
宮一 今回の対談の打ち合わせをしているとき、「ターゲティング広告は気持ち悪い(Creepy)」と言われますねという話が出たのですが、そのとき清水さんは「実はアメリカでは、ターゲティング広告はむしろありがたい」という話をされた。

清水 僕はユタに住んでるんですけど、アメリカは広いのでニューヨークの情報が表示されてもまったく関係ないんですね。逆にターゲティングされてないと乱暴に感じる。なので、自分からターゲティングを求めますし、どんどんオプトインもすることになる。
たとえば、エクスペディアのトラベルサイトで飛行機のチケットを買うときに、自宅近くのソルトレイクシティ空港を登録すると、そこの発着便だけ情報が表示されたり、メールで通知されるようになる。自分から進んでオプトインして情報を提供するのは、メリットが明らかにあるからです。だから、実際にメリットがあると行動って変わる、考え方が変わるんだなと思いました。
なぜCreepyになってしまうのか
宮一 広告を「Creepy」と感じる理由のひとつに、何度も同じものを目にするというのがあります。どこかのサイトを訪問するとリターゲティングによって広告が表示されるわけですが、それがずっと出てくることがある。実はこれは在庫の重複というテクニカルな問題や、フリーケンシーコントロールがうまくできてないという状況がある。

この図はちょっとややこしいんですけど、左側がメディアで広告枠(Ad Space)があります。この広告枠がどうやってマネタイズされているかというと、複数のアドネットワークやSSPに在庫を預けたり、アドエクスチェンジに在庫を渡したりと、メディア側がいろいろ組み合わせてやっている。そうすると、この経路の中で、ひとつの広告枠を誰がどうやって表示してるんだという話になってくる。
経路の途中に書いてある「Freq=n1」 「Freq=n2」は表示回数です。同じ人に同じ広告を何度も見せても効果がないので、何回以上は表示しないようにするというのがフリケンシーコントロールなのですが、アドネットワークが5回、DSPでも5回と設定すると、最終的にそれを足した数字になってしまう。これを防ぐには、配信を一括管理する第三者配信のような仕組みが必要になります。
同じページの複数広告枠
宮一 同様のことが、1つのページの中にある複数の広告枠でも起きています。左側に示したウェブページの中にはスーパーバナーとレクタングルという2つの広告枠があるのですが、それぞれが違う経路で買われたりする。

同じページに同じ内容の広告が表示されているにも関わらず、それぞれの広告はユーザーのデータにひもづけられたリターゲティングが行われているので、この瞬間の2つの経路について考えると、それぞれが有用な広告になる。サイトをジャックするために全部の広告枠を買い切る出稿方法もあるんですけれども、実は意図せず出ていることもあるんです。
ダイナミックリターゲティング
宮一 最近では「ダイナミックリターゲティング」というのがあります。これは商品情報をリコメンドしながら動的にバナーを生成して表示するのですが、ユーザーの目につくようになってきた。

ショッピングサイトであるバッグを見たという情報がたまっていくと、そのデータと事業者が持ってる商品データベースが連携して、その中からリコメンデーションをしてバナーを出すという仕組み。便利なんですけれども、たまたまその商品を見ただけだった場合や、フリケンシーコントロールがされてないと気持ち悪く感じたりする。オプトインの仕方がわかりにくいと、見る側は表示を止めたくでも止められない。
清水 Facebookの画面の右側にある広告は、その辺をちゃんとやってますよね。消そうとすると理由を聞かれるので「何度も出てくるから、興味ありません」とか、理由をちゃんとフィードバックできる。あのデータを活かしてチューニングをしてくれるなら、僕は喜んでクリックしますね。