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MarkeZine Day 2014 Spring(AD)

マーケターのみなさん、データと上手く付き合えていますか?「真のデータ活用型マーケティング」の突破口を探る!

 精度の高いマーケティングを行う上で、データ活用の重要性は増す一方だ。しかし「データを活用したい」という意識に対し、実態は異なることがドーモ株式会社の調査結果でわかった。マーケティング担当者がより結果を出すために、データとどのように向き合えばよいのか。調査結果を発表した同社の水嶋ディノ氏をモデレーターとし、パネラーにKAIZEN Platformの須藤憲司氏、ギックスの網野知博氏を迎え、「真のデータ活用型マーケティング」の突破口を探る講演がMarkeZine Day 2014 Springにおいて開催された。

データ活用が上手くいかない根本的な原因

水嶋:みなさん、こんにちは。ドーモ株式会社の水嶋ディノと申します。ドーモはアメリカで2010年に設立された会社で、創業者はOmnitureの共同創業者 兼 元CEOであるJosh James氏です。アマゾンの創業者Jeff Bezos氏や楽天の三木谷浩史氏など、業界トッププレイヤーから約250億円の投資を得ています。

 私どもは、データ活用が上手くいかない理由を、必要なデータが複数のファイルやアプリケーションにバラバラに管理されているから、と考えています。弊社では、エクセルやクラウド型アプリなど、様々なデータを簡単に取込み、どこでも扱える仕組みを提供しています。では、パネリストのお二人にも、自己紹介をお願いしましょう。

(左)株式会社ギックス 代表取締役 CEO 網野知博氏
(中央)KAIZEN Platform Inc. Co-founder & CEO 須藤憲司氏
(右)ドーモ株式会社 代表取締役 水嶋ディノ氏

須藤:KAIZEN PlatformのCEO、須藤憲司と申します。ウェブサイトを改善するプラットフォーム「PlanBCD」を提供しています。ABテストを通じて、2種類のデザインのうちどちらがコンバージョン率が高いか、などを検証でき、クリックひとつで効果の高いデザインに切り替えることができます。約500社の企業様に導入いただいています。

網野:ギックスの代表取締役CEO、網野知博と申します。2012年12月にスタートしたばかりの若い会社です。アクセンチュアを経てIBMでビッグデータに携わりましたが、経営面でのデータ活用を促進すべくギックスを立ち上げました。

 ビックデータ、アナリティクス、コンサルティングを組み合わせて価値をご提供できることが強みです。例えばクレジットカードの「ビューカード」様では、顧客数の増加や利用促進にコミットし、データの分析や成長戦略の構築を行っています。

7割のマーケターはデータ量に圧倒されている

水嶋:ここからは、弊社アメリカ本社が301人のマーケターを対象に行った調査をもとに、議論を進めます。調査のポイントは、「データの取り扱い方」「データへのアクセス」「ROI費用対効果」の3点です。

 まずは「データの取り扱い方」から。「分析のために利用可能なマーケティングデータ量は問題なく処理できるか」という問いに対し、「そう思う」と答えたのはわずか3割。つまり、残り7割はデータ量に圧倒されていることが分かりました。アメリカでの調査ですが、恐らく日本でも似たような傾向にあるでしょう。ビッグデータの解析技術は日々進んでいるにも関わらず、なぜ私たちはデータに圧倒されているのでしょうか。

須藤:データがバラバラな場所にある点に問題があると思います。例えば広告費用についても、Googleにいくら払っているのかは把握していても、あるキャンペーンのROIを分析しようとすると、様々な部署やファイルにアクセスせねばなりません。

水嶋:データを分析する前に大きな苦労がある、ということですね。網野さんはどう思われますか。

網野:問題は2つあると思います。ひとつは、テクノロジーは進化しているものの、使う側が追いついていないこと。もうひとつは、データの分析スキルはトレーニングで習得できるのに対し、データを使う「センス」は後天的には身に着けづらいということです。

水嶋:マーケターの資質の問題ですね。

網野:分析も活用もひとりで行うのは困難です。従って弊社では、分析や仮説をつくる人を「データサイエンティスト」、アウトプットされたデータを解釈する人を「データアーティスト」と呼び、分業しています。さらに分析の基盤を作る「テクノロジスト」、戦略の方向を決める「ストラテジスト」を含め、4人のチームでサービスを展開しています。

須藤:私はデータが好きなので、ずっと見ていても飽きないのですが、もちろん見ているだけで会社は変わりません。データ分析の「目的」を設定し、見なくていいものは見ない、という選択も必要です。その意思決定が、網野さんがおっしゃる「センス」なのだと思います。

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重要なのは、リアルタイムデータに合わせて行動を変えられるか

水嶋:次に、リアルタイムデータの重要性を考えます。リサーチによると、「リアルタイムデータにアクセスすることが重要」と考えている方は8割に上りましたが、アクセスできている方は3人に1人程度です。実際のところ、リアルタイムデータは重要なのでしょうか

須藤:どこまでリアルタイムにするか、はともかく、部下のレポーティング業務を削ることが大事です。私は経営管理にDomoのシステムを使わせて頂いていますが、データを「見える化」することで、部下のレポーティングなしに、即時的に必要なデータにアクセスできます。

網野:私は、リアルタイムデータの重要性は業種によって異なると思います。トレンドの激しい業界や、ショートタームでキャンペーンを実施する業態は、リアルタイムデータに意味を見いだすことができます。しかし何より重要なのは、リアルタイムデータに合わせて行動を変えられるかどうか、ではないでしょうか。鮮度の高いデータを取得しても、3か月後にしか施策を変えられないのであれば、意味ないですよね。

「リアルタイム」と「タイムリー」は似て非なるもの

水嶋:ポイントは、データの更新頻度より活用頻度、ですか。

網野:はい。少なくともマーケティング領域では、リアルタイムとタイムリーは似て非なるものです。例えばあるクレジットカード会社が、取得したデータをもとに、水嶋さんを「お昼にイタリアンを食べたあとに、近所でコーヒーを飲む確率が高い人」と分析したとします。お昼にイタリア料理屋でカードを切った水嶋さんのスマホにクーポンを届けたら、これは「タイムリー」と言えます。が、一方で水嶋さんの属性分析は、リアルタイムではなく事前にバッチ処理で行われています。ですから、「リアルタイムに分析し、タイムリーにオファーする」形は、よほどのことがない限り必要ないのでは、とも思っています。

水嶋:なるほど。リアルタイム分析にメリットがあるかどうか、を考える必要がありますね。

網野:まさにそうです。例えばインドの携帯市場では、SIMカードを買って、使い終わる頃に入れ替える習慣があります。このような市場では、SIMがなくなるタイミングでオファーを出すため、リアルタイム分析が活きます。が、1台の携帯を2年契約する日本では、毎日分析する必要などありません。

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ROIに責任をもつ一方で、重要なデータにアクセスできないジレンマ

水嶋:では3つ目は、ROI(投資対効果)について3つの観点から行った調査です。ひとつは「上司はデータに基づいた成果報告を期待しているか」という設問で、8割の方が「そう思う」と回答しています。多くのマーケターは、成果を数字で報告する必要に迫られているということです。

須藤・網野:なるほど、そうですね。

水嶋:次に、「ROIを把握しているか」という設問について。これは、Eメールマーケティングにおいては7割が「把握している」と答えた一方で、バナー広告、ライブイベント、SEOについては5割くらい、ソーシャルメディアに至っては6割以上が「把握していない」と答えています。

水嶋:最後に「マーケティングROIに対する責任と実態」について。8割が「責任を担っている」と答えた一方で、売上に関係するデータにアクセスできる方は3割に留まっています。つまり多くの方が「ROIに責任を持て、でもその測り方は自分たちで考えてくれ」と、はしごを外されている状況なのです。マーケターは、どのようなデータで貢献度を示すべきなのでしょうか

須藤:会社の予算を使う以上、説明責任が発生します。でもROIを算出するためにコストがかかっては、元も子もありません。正しいかどうか分からないけど「まずはこれをROIとしましょう」と決めることが重要だと思います。決めるべきことを最初に決めておけば、ちゃぶ台をひっくり返されることも、足を引っ張られることもないでしょう。

水嶋:予算を与える側ともらう側、両者の期待値を先に合わせておくことが重要ですね。

網野:投じたお金に対する売上や効果を図るモデルを重回帰分析で作ろうとすると、年単位での時間がかかります。そのような時間とお金を投じられるのは一部の企業だけですし、かといってマーケティング担当者が3日徹夜すればいい、という話でもありません。成果は売上なのか顧客獲得なのか、それとも認知度なのか、を決めておけばいいのだと思います。

須藤:おっしゃる通りです。大切なのは、マーケターの時間をどこに使うのか、ということです。分析することに時間をかけるのか、行動を変えることに軸足を置くのか。私は後者が大事だと思います。

データ分析をしても、事業上の価値を生まなければ意味がない

水嶋:行動が生まれてはじめて効果があるということですよね。精緻な分析をしても、事業上の価値を生まないと意味がないと思います。では最後に須藤さん、ドーモの使い心地なども聞かせて頂けますか。

須藤:問合せに対するレスポンス状況、開発のリソース配分から最終的な損益管理まで、すべてをドーモで確認しています。使ってみて「良いな」と思ったのは、データがビジュアルで示されることです。

 例えば、問合せへのレスポンススピードが上がっていたら、売上が上がる可能性がある。つまり、自分たちの活動とその先にある結果が、グラフなどで可視化されるのです。これらを出力して壁に貼ったりすると、社員のやる気につながる。私はデータ活用の最大の効用は「やる気」だと思っています。

網野:「ドーモ」は最高の遊び道具ですよ。「あれ?我が社にはこんな客層がいるのでは」と仮説が生まれたとき、すぐに自分で検証できます。データ担当の人に分析を依頼するのは心苦しいですが、自分で検証できると戦略も立てやすくなる。試行錯誤のための、最高のおもちゃです。

水嶋:これからもデータに振り回されず、上手く活用していきたいですね。今日はありがとうございました。

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この記事の著者

齋藤 麻紀子(サイトウ マキコ)

フリーランスライター・エディター74年生まれ、福岡県出身、早稲田大学第二文学部演劇専修卒業。 コンサルティング会社にて企業再建に従事したのち、独立。ビジネス誌や週刊誌等を通じて、新たなビジネストレンドや働き方を発信すると同時に、企業の情報発信支援等も行う。震災後は東北で起こるイノベーションにも注目、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2014/05/15 11:17 https://markezine.jp/article/detail/19432