ニーズよりもシーズから始まるATLのプロジェクト
でも、なぜリクルートテクノロジーズはウェアラブルデバイスに取り組んでいるのでしょうか。MarkeZineの読者のみなさまにとっては、リクルートテクノロジーズと聞くと、ビッグデータやデータサイエンティストなどのイメージが強いのではないでしょうか?

「それでいうと、リクルートテクノロジーズは、ビッグデータ以外の技術領域にも広く取り組んでいます。大規模なアプリケーション開発の部隊、Javaのフレームワーク構築、アプリケーション基盤や社内外のネットワークインフラ基盤の構築、他にもスマートデバイスやクラウドなどを担っている部署があります。ですが、その中でもATLだけは少し毛色が違います。
例えば他の部署で行うR&Dは、半年先くらいを見据えた比較的直近のこと、または具体的なニーズに合わせた調査を行います。一方でATLは、具体的なニーズに対して調査を行うのではなくて、どちらかというとシーズから発生しています。
こういう技術が今後出てくるのではないか、こんな技術がこれからはやるのではないか、だったらその技術を調査してみて、それがもし使える技術であればリクルートのビジネスに何か使えないか、と考えていきます。どのようにR&Dを進めていくかという考え方が逆なのです」
イノベーションを評価する文化
ATLでは、まずインターネット上の情報や海外のカンファレンスなどから、これから流行りそうな技術の情報を収集し、実際に動きそうな技術であれば第一ステップを通過します。そこから、リクルートのビジネスで何に応用できるかという仮説を立てて、検証をしていきます。その結果、実現性が高まれば第2のゲートを通過し、各事業と一緒に検討していく段階に突入します。そして、実際の事業に使える段階になったところでATLの役割は終わり、また新たな技術を探しにいくそうです。
「例えば、Hadoop解析の取り組みも、もともとはATLから始まりました(関連記事はこちら)。当時はまだビッグデータという言葉すらありませんでした。でも、この技術は絶対何かに使えそうだ、バッジ処理の高速化で使えるのではないかと当初は仮説を立てて、検証を進めていきました。そうこうしているうちに、米国でHadoopカンファレンスが開催されました。そこでどのような使い方がされているのかを知り、ビッグデータ解析への活用に舵を切っていきました」
リクルートグループでは、グループ全体で年に10人程度、イノベーションを起こした人が選出され、表彰されるというイノベーションを評価する文化があるそうです。どんどん新しいテクノロジーが出てくるIT業界において、最新技術に対応するだけでなく、自ら先手を打ってトライしていく企業風土が素敵ですね。この度はお邪魔させていただき、ありがとうございました!