プライベートDMPとCCCMは結ばれる運命にあるのだろうか?
次にプライベートDMPとCCCMの関係について考えます。この2者は非常に近い関係にあります。
前述のようにプライベートDMPはWebアクセスログなどのオーディエンスデータと購買履歴などを含むCRMデータを統合して管理し、広告配信以外にもEメールマーケティングなどCRM目的のコミュニケーションに活用することを想定しています。
前々回の記事で述べたように、今後CCCMで展開するOne-to-Oneコミュニケーションにはリアルタイム性が重要であり、そのためにはWebアクセスログのようなオーディエンスデータの活用が必須です。
アクセス解析ソフトなどに頼らず独自のタグで自社サイトのアクセスログを取得し、その他のデータと併せてセグメントを作ることができるプライベートDMPはCCCMにとって有力なデータ供給元になる可能性があります。
一方でプライベートDMPはデータの統合と分析、セグメンテーションを行うことができますが、コミュニケーションの実行機能を持っている訳ではないので、チャネル側との連携が必要です。複数のチャネルをまとめて管理し、コミュニケーションの自動実行も可能なCCCMはある意味理想的な連携相手です。
このようにプライベートDMPとCCCMは非常に親和性が高い連携相手だといえます。実際、既にプライベートDMPとCCCMを連携して運用している事例もあります。
ただ、この2者には大きな違いがあることにも注意が必要です。
それはオーディエンスデータと個人情報の違いです。プライベートDMPはあくまでオーディエンスデータの統合と分析のための基盤として設計されていて、そこに個人情報を格納することは想定されていません。個人情報を格納して管理することが前提となっているCCCMなどCRM系テクノロジーとの大きな違いです。
一方で現在のCCCMでは多くの場合顧客IDをキーにして個人情報を格納し、それに紐付けて全てのデータを管理しています。オーディエンスデータでも管理できるのは顧客IDに紐付いたものだけです。cookieベースで顧客IDと紐付くWebアクセスログは管理できますが、顧客IDと紐付かない、誰かは分からないアクセスログを管理するようには設計されていないのです。
そのため現在のCCCMとプライベートDMPのインテグレーションでは、プライベートDMP側には個人情報を格納せず、IDをキーにして全てのデータを統合管理し、設計したセグメントをIDでCCCMに引き渡すというデータ連携が一般的です。CCCMにはメールアドレスなど個人情報が格納されていてコミュニケーションの実行を担います。
また自社環境に自社のオーディエンスデータと顧客の個人情報、購買データまで含めて全てのデータを統合してマーケティングデータベースを構築している例もあります。この場合は統合マーケティングデータベースがプライベートDMPの役割も兼ねていることになります。
ここまで2種類のDMPとCCCMの関係について見てきましたが、実際はこの2者を接続して効果的なマーケティングコミュニケーションを実現しているケースはまだあまり多くありません。
そもそも日本のDMPは広告配信における効果的活用法を模索している段階で、まだCRMとの接続まで話が及んでいないという声も聞きます。私はそれ以外にベンダー側の事情も大きな要因だと思います。
DMPを開発しているのはアドテク系のベンダーですがCCCMを開発しているのはIT系のベンダーが主です。前者は広告業界と関係が深く、企業のマーケティング部や広告宣伝部にパイプがあります。
後者はIT業界で情報システム部門が顧客です。そもそも別な世界の住人だったのですが、アドテクノロジーとマーケティングテクノロジーがオーディエンスデータを仲介にして出会った結果、最近になってようやくお互いのことを知るようになった、というイメージです。
したがって両方のことを深く理解して現実的な運用まで想定した具体的な提案をすることはまだかなり難易度が高いのです。