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「あのキャンペーン」の担当者に直撃!

デジタル・マーケティングの傾向と課題、コードアワードから見る「企業に必要な視点」とは?


デジタル施策をする企業が抱える危機感

株式会社カケザン チーフプランナー
CEO 磯雅範氏

篠崎:大きな枠での変化を考えると、作品を応募する企業の傾向が変わったと思います。これまではデジタルが強かったり、専門的にやっていたりする企業が受賞する傾向が強かった。しかし今回は、デジタルへの取り組みを積極的に展開していなかった企業からの応募が非常に多かったです。例えば、今回受賞した企業でいうとZ会雪印乳業エバラ住友スリーエムはデジタルに取り組み始めた企業といえます(Z会と雪印乳業の担当者が受賞作品について語るセッションはこちら)。

 デジタルをはじめた背景やきっかけは様々です。ただ、顧客の高齢化に伴い、マーケットの維持や拡大に課題を持つ企業が多いように感じます。ブランドの未来を考えたときに、新たな顧客開拓や市場創造が必要不可欠です。その際に、若年層をどう取り込んでいくかが大きなテーマになってきます。すると、もうデジタル抜きにはマーケティングを考えられなくなってきている。これが非常に大きなポイントだと思います。

 一方で、生活習慣が変わってきているので、昔あった価値・習慣が今の若い人たちには伝わらなくなっています。昔の当り前が通用しないんですね。すると、今まで企業が提供してきたブランド価値も、伝わっていない可能性がある。それが購買の下降傾向として、顕著化している現状があります。そこに危機感を持っていた企業が、取り組みを始めているように感じます。だから、デジタルというと短期間の成果が取り上げられることも多いですが、中長期視点での顧客開拓・ブランド育成という観点でデジタル・マーケティング施策を行った例も今回は多かったように感じます。

 そして先ほど触れたように、若年層には伝統的なブランドバリューが通用しないことが多い。だから、新しい機能性価値を見出して、新しいコミュニケーション方法で訴求する施策が多かったですね。例えばKADOKAWAの「貞子3D2 スマ4D」は、映画のスクリーンとスマフォが音声認識で連動していて、シーンに合わせてスマホが震えたり、着信があったりする。これって、従来の静かな映画館を体験型のエンターテイメントに変えるという新しい機能ですよね。

磯:顧客体験価値をどう高めていくのか、が課題になっている作品も多かったですね。もちろん、ある種の高尚な世界観を圧倒的なクリエイティブで上から提示する、という王道的なアプローチも健在です。けれどヤフーの「触れる検索」や、楽天の「ソーシャルビールかけ」は、いかに生活を豊かにするかだったり、消費者の体験価値を高めるかというところに目が向けられています。

 カンヌライオンズでも、ウェブやモバイル広告が対象になるサイバー部門でフィーチャーされる作品が変わってきています。以前は表現力豊かな事例が取り上げられてきましたが、今はそうじゃない。仕掛けが楽しいとか外部との連携が上手だとか、クラフト性だとかに注目が集まっています。評価軸が変化しているんです。その流れが、コードアワードにも来ている。ユーザーが「面白い」と思ったものが評価されるようになってきていますね。

 ただ、作品を見渡した時に、昨今のイノベーションやクリエイティビティー、エッジの効き方を考えると、必ずモバイルをどう上手に使っていくかがキーワードになっている気がします。だからコードアワードに名前を変えましたが、モバイルが中心またはエッセンスになっている事例が多いですね。

様々な観点からの共感が重要

編集部:今回は受賞作品を決めるにあたり、審査員の中でも意見が分かることが多かったそうですね。

篠崎:マーケターとクリエイターでは視点が違いますから、見ている所が多少異なります。クリエイターの方は、やっぱり仕掛けの面白さやクリエイティビティを中心に見ます。一方で、マーケターの方はもっと全体の構造的な部分や、成果が伴っているかを見ています。そのため、クリエイティブだけでなく施策を実施したプロセスや成果も議論になります。それに、話題性をどう評価するのかという問題もありました。

 面白いけど誰も知らないでは意味がない。でも一方で、「あなたは知らないけど、それはターゲットではないから」というケースもある。デジタルの施策はデジタルネイティブに向けたものも多いですから、施策がターゲット以外に認知されないケースも散見されます。

磯:広告なので、多くの人に伝える必要もある。でも、マーケティングとして「ここ」というターゲットに刺さる施策を考えるという視点ですね。だから評価が二分するんです。それに、新しい価値観提供がテーマになっているものが多いので、新しい価値を楽しいと思う人もいれば、不要だと思う人もいます。様々な捉え方ができるわけです。

 今回はそれも踏まえて、みんながいいと思えた事例がグランプリに選ばれました。これは結局、文脈がいいとかトータルのクリエイティブのまとまりがいいとか、これをやる意味が成立しているとか、様々な観点で総合的に共感を得るものが評価されたということです。

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/10/02 10:22 https://markezine.jp/article/detail/20893

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