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ビジネスマンのための必読オンラインマーケティング塾

第5回 創発的視点でオンラインマーケティングを考える

創発されるブランド

 これまでオンラインでのマーケティングはどちらかといえば、どうやってユーザーをWebサイトに呼び込むかということを中心に考えてきました。しかし、コンテンツの全文を掲載したRSS/Atom Feedや、ブログパーツやYouTubeの動画コンテンツ、Amazonのアフィリエイトのようにユーザーが自分のブログに貼ることができるWebコンテンツが浸透していることを考えれば、必ずしもユーザーとのコミュニケーションを自社サイト内で行う必要はなくなってきています。

 より多くのユーザーに触れる機会をもつという意味では、自社サイトという狭い範囲にユーザーを呼び込むことに苦心するよりも、いつでもどこでもユーザーと企業が触れ合える機会を増やすことができる仕組みを自社サイトの外部にもつことを考えるほうが有効でしょう。

 また、このことはブランディングを行う際に、ブランドとはいったい誰のものなのかを考える場合にも有効なのではないかと思います。これまでのブランディングは、どちらかといえば統一されたブランド・アイデンティティを築き上げるために、ブランドイメージの管理を徹底する方向で進められていたのではないかと思います。

 しかし、それは企業内部でブランドをどうマネジメントしていくかという話であって、顧客の側とは無関係の話です。実際にはブランディングについて書かれた多くの本で語られているとおり、ブランドの価値は企業の内部にあるのではなく、実際にブランドに触れるすべての人の中にあるわけです。その中には当然、企業側の人間も、顧客も含まれます。その意味ではブランドもまた、構成要素である個々人のブランド・イメージや企業側が定めたブランド・アイデンティティをそれぞれ個別に理解してもダメで、むしろマクロな視点で組織的に創発されてくるものだと理解したほうが、オンラインでのブランディングを考える際にも、有効な施策のプランを立てやすくなるでしょう。

 ここまで述べてきた創発的な思考でのオンラインマーケティングの方法論は、これまでのような管理、コントロールを軸としたマーケティングの手法とは180度方向性が異なるため、最初は戸惑うこともあるかもしれません。また、何かと比較されがちなマスマーケティングとも実は、効果を出すためにはある程度の数を必要とするという意味では同じで、しかし、その数の集め方は面で切り取るセグメンテーションではなく、リンクでつながったネットワークを広げる方法をとるという点で異なるということも戸惑いにつながるひとつの要因かもしれません。

 しかし、ひとつ言えるのは、こうしたオンラインマーケティングの手法は、継続することによる効果の積算が起こりやすいということです。そして、積算された効果が閾値を超えると一気にブレイクすることがあるということです。その意味では、続けることさえやめなければ非常に失敗の少ない手法だということができます。もちろん、多くの企業にとって続けることはそれなりにむずかしいことかもしれませんが、それでもトライしてみる価値はあると思います。

 そのためにはまず、オンラインマーケティングに関わる人すべてが、自分たちはネットワークの一員であることを理解することが大事なのかもしれません。

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この記事の著者

棚橋 弘季(タナハシ ヒロキ)

芝浦工業大学工学部(建築学専攻)卒。マーケティング・リサーチ、Web開発等の仕事を経て2003年より株式会社ミツエーリンクスに。現在はWebを使ったマーケティングに関する企画や自社サービスの開発に従事。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2006/09/22 13:30 https://markezine.jp/article/detail/213

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