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新しく始めたレコメンドメールで月間受注1億円!千趣会のツール活用術と「ヒト・モノ・タイミング」最適化

 千趣会はALBERTのレコメンドメールを採用し、新しいメールマガジンとして月間受注1億円にまで成長させた。昨年は新たに「smarticA!キャンペーンマネジメント」も導入。3人のキーマンが語る「ツールの選び方」「ツール活用の秘訣」とは?

メールとウェブサイトでは、レコメンドの方法が異なる

 千趣会は2011年、ALBERT(アルベルト)社のレコメンドメールを採用し、全件一律配信で苦戦していたメールマガジンに月間受注1億円という新しい命を吹き込み、大きな成果を出した。2014年は新たに「smarticA!キャンペーンマネジメント」も導入。その取り組みのキーマンである千趣会の安井 崇氏と、パートナー企業であるALBERTの平原 昭次氏・菅 由紀子氏の3人に、千趣会大阪本社で、ツール活用の秘訣について話をうかがった。

― 千趣会は総合通販会社として女性向けにさまざまな商品を販売し、現在ではネット通販が主流となっています。今日は、お客様ひとりひとりに合った商品の情報を伝えるために、どのような取り組みを行なっているかについて、導入しているツールを中心にうかがいたいと思います。

安井 私は2008年にデジタルメディア部に配属されたのですが、その辺りからメールのパフォーマンスが低下していました。メールマガジンの体系変更などの改善を行うも配信しているメールの内容が一律だということがパフォーマンス低下の一因だということはわかっていたので、どのようにメール・マーケティングを改善していくかを模索していました。

株式会社千趣会 販売企画本部 販売戦略部 販売戦略チーム 安井 崇氏

株式会社千趣会 販売企画本部
販売戦略部 販売戦略チーム 安井 崇氏

 総合通販は、いろいろなジャンルの商品があるため多様な提案ができるのが強みですが、それにはあまりにも労力がかかりすぎる。運用が大変という点が悩みでした。また、重要なのは「何がお客様にとって最適なのか」ということですが、その把握にも難しさを感じていました。

 ウェブサイトでのレコメンドが浸透し、次のソリューションとしてレコメンドメールが出てきたころに、当時導入していたレコメンドエンジンを使ってレコメンドメールのテストをしたのですが、思うように結果が出ませんでした。そのとき、ALBERTの平原さんから提案があり、「メールとウェブサイトではレコメンドの方法が異なる」という指摘をうけて、ALBERTのレコメンドエンジンでテストをすることになったのです。

レコメンドメールからの受注が、パーソナライズで月間1億円に

平原 ウェブサイトのレコメンドエンジンは、過去の購買データや閲覧データを分析して、お客様が買った、または閲覧した商品に対して、他のお客様が一緒に購入・閲覧した商品をおすすめするという推薦方法が多い。ECサイト訪問時は、まさに売場で財布をもって買い物をしている状態ですから、こういった方法が有効です。

 しかし、メールは売場に来る前にチラシを見ているような状態ですから、目新しい商品や季節性を加味した商品をおすすめした方がサイトを訪問する確率が高まり、より効果が上がりやすいことがあります。安井さんとの取り組みではさらに、「この人たちはインテリアに反応しやすい」「この人たちはファッションに反応しやすい」など、お客様をクラスタリングし、優先的に表示する商品の順番を変えるといったルールを加えていきました。

「ベルネメール」のクリエイティブ。千趣会の通販サイト「ベルメゾンネット」では、ファッション、コスメ、家具から、スイーツ、ナース向けなど幅広い商品を提供している

「ベルネメール」のクリエイティブ。千趣会の通販サイト「ベルメゾンネット」では、
ファッション、コスメ、家具から、スイーツ、ナース向けなど幅広い商品を提供している

安井 千趣会は配信しているメールの種類がたくさんあります。その中で、毎週水曜日に定期配信している「ベルネメール」は幅広いジャンルの商品を載せていて、受注が安定して取れるメールでした。しかし、そこからの受注も伸び悩んでいたので、ALBERTのレコメンドメールをテストすることにしたのです。当時、メールを配信できる会員200万人の10分の1、20万人にテスト配信をしてその効果を分析しました。

― テストの結果はどうだったのでしょうか。

安井 レスポンスやメール経由の受注金額については十分な効果が出ました。これを拡大したらさらに注文が取れるのではないかと考え、200万人のお客様に拡大してレコメンドメールの配信を開始しました。

― 導入後の売上へのインパクトは?

安井 金額で言うと、レコメンドメール経由で月間1億円の受注が見込める規模に成長し、弊社のメール・マーケティングにおける「第二、第三の柱」となっていきました。

キャンペーンマネジメントで「ヒト・モノ・タイミング」を最適化

― レコメンドメールで大きな成果を得たあと、ALBERTのキャンペーンマネジメント・システム(smarticA!キャンペーンマネジメント)も導入されました。

平原 最近あらためて「マーケティング・オートメーション」という言葉が注目されています。キャンペーンマネジメント・システムは、「誰」に「いつ」、「どんな情報」を届けるのかというキャンペーンの内容を、「日時」までタイミングを合わせて設定し、マルチチャネルで自動的に配信することができます。この「ヒト・モノ・タイミングの最適化と自動化」がキャンペーンマネジメント・システム導入の大きなメリットであり、マーケティング・オートメーションを実現したいと考えている企業が導入を進めています。

株式会社 ALBERT 執行役員 平原 昭次氏
株式会社 ALBERT 執行役員 平原 昭次氏

安井 「ヒト」に対して「モノ」をおすすめするところまでは実現できた。じゃあそれをもっとタイミングよく案内できれば、さらに売上が上がるのではないかと考えて、次はそこに取り組むことになりました。決め手は「ヒト・モノ・タイミング」の3つを兼ね備えたものを、いかにスムーズに運用できるのかというところですね。

平原 今までは、何月何日にこういうメールを出すという計画に沿ってクリエイティブを作っていけばよかったのですが、「ヒト・モノ・タイミング」を最適化するとなると、お客様の行動に合わせて、多様なシナリオが生まれます。しかし、すべてのお客様に対して個別のクリエイティブを手動で作成することは不可能です。弊社の提供する「smarticA!DMP」では、データマイニングエンジンがお客様の行動データを分析し、そこから導いた結果を基にキャンペーンマネジメント・システムが自動的にメールを生成して配信することで、運用負荷の削減と精度の向上の両方を実現しています。

『smarticA!DMP』の構成
『smarticA!DMP』の構成

安井 現在はパーソナライズされたメールの生成と配信を280万人に対して実行しています。

平原 お客様に合わせて、件名もバナーも変えています。メールで件名とバナーの両方をパーソナライズしたのは、弊社のお取引先でも千趣会が一番早かったと思います。「One to Oneマーケティング」という言葉もよく使われますが、安井さんは、「One」を「似ている人の集団」ではなく、まさに「個」としてフォーカスしています。本当にひとりひとりにパーソナライズしていこうとしている。お客様と真摯に向き合う、千趣会の「おもてなし」の心を感じます。

分析する人間が足りない、そこを埋めてくれるパートナーがほしい

― キャンペーンマネジメント・システムを導入してできることも増えたと思いますが、新たな課題もあるのでしょうか。

安井 そうですね。今、いろいろ細かい調整をお願いしているところです。

平原 細かいオーダーをいただいても、それがどの程度結果に影響があるものなのかは、やってみなければわかりません。テストを繰り返して成果を上げ続けることは我々にとってもチャレンジです。千趣会のデータを分析しチャレンジできること、これは、システムを提供しデータの分析をお手伝いする弊社にとっても非常に幸せな環境だと思います。

 安井さんをはじめ千趣会の販売戦略チームの皆さんには、より良い効果をえるためにどのように施策を進化させていくべきなのか、具体的なご意見をいただきます。ミーティングでも常に有意義なディスカッションが展開されており、非常に刺激が多いです。

千趣会 販売戦略チームの皆さんと一緒に
千趣会 販売戦略チームの皆さんと一緒に

安井 千趣会では、まだまだデータを分析する人間が足りていません。ALBERTとおつき合いをするようになったのも、そこが大きい。ベンダーというのは、どうしても「ツールを入れたらおしまい」になりやすいのですが、それだけではなく、「いかにツールを使いこなすか」というところにどれだけ関わってもらえるかがベンダーを選ぶ上で重要なポイントでした。

平原 ALBERTには分析専門のチームがあり、分析部隊を持たないほかのツールベンダーとは大きな差別化になっています。「ツールを使い倒す」というのは本当に大事なことなのですが、ほとんどの企業は、導入当初に決めた利用方法のままで止まってしまう。お客様に向きあった継続的な分析ができていないからではないでしょうか。

安井 千趣会では、キャンペーンマネジメント・システムを導入する前からデータドリブン「PDCAサイクルをちゃんとまわそう」ということを社内で共有してきたので、土台が整っていたのだと思います。例えば以前はキャンペーンの効果分析レポートがあっても、クリエイティブの担当者はなかなかそれを見る余裕がなかった。でも最近では「前回のキャンペーンの結果を見たうえで作ろうよ」という声があがるようになりました。マニュアルを作ったり、実績を会議で報告したりする土台があったからこそ、キャンペーンマネジメント・システムの必要性を実感していたという感じですね。

A/Bテストで「勝ちパターン」を見出す

 私は分析者として千趣会のデータ分析を担当しています。キャンペーンマネジメントは運用フェーズに入るとシナリオが多様になるので、チューニングもいろいろな面から考えていく必要があります。大変な部分もありますが非常に楽しいプロセスです。

株式会社 ALBERT データ分析部 チーフアナリスト 菅 由紀子氏

株式会社 ALBERT データ分析部 チーフアナリスト 菅 由紀子氏

 私が、この3年間千趣会の分析に携わってきた中で、個人的に一番興味深かったのは、たくさん実施してきたA/Bテストです。テスト配信をしながら「勝ちパターン」を発見し、再現性のあるシナリオ構築のための試行錯誤を繰り返してきました。ひとつひとつのシナリオの完成度を上げていくのも大事なことです。

安井 そういうA/Bテスト文化も、少しずつ根づいてきたと思います。A/Bテストというのは小さなものでも、やっぱり手間がかかる。それをいかに簡単にできるような方向に持って行けるかをシステム面と運用面の両方で考えながらやっています。

 テストの中で「これだけ大差がつくとは!」といった結果が出ると、本当にやってよかったなと思います。smarticA!キャンペーンマネジメントを導入していただき、そういったテストもさらにやりやすくなりました。

本当に使い倒せるツールの選び方

― 安井さんはこれまで、レコメンドメール、キャンペーンマネジメントをはじめ、さまざまなソリューションの導入を決めてきたと思います。その判断をする際のポイントというのはあるのでしょうか。

安井 ツール選定を担当する方は、みなさん悩むことが多いと思うのですが、私の経験から言うと、やはり「何をやりたいのか」を明確に意識して決めることだと思います。

平原 安井さんのすごいところは、smarticA!キャンペーンマネジメントを採用していただく1年以上前に、すでにご自分でシナリオを作られていたというところです。「ヒト・モノ・タイミング」に関して、具体的にどんなシナリオができるのかということをリスト化し体系化もされていました。

安井 多分すごく悩むと思うんですよ、ツールの導入決定をしなければいけない人は。今は、それがさらに難しくなっていると思います。メール、ソーシャル、アプリから、DMPまで話が膨らんでくると、何から手をつけていいのかわからなくなります。

平原 確かに。やりたいことをしっかり整理しないと、バズワードに流されてしまうことがあります。すべてのデータをつなげれば自然と何か生まれるんじゃないか、みたいな間違った期待感を持たれてしまうこともありますしね。

安井 これからもALBERTと一緒に取り組んでいくわけですが、smarticA!キャンペーンマネジメントに関しては、本当に使い倒せるものを僕は選んだつもりです。宝の持ち腐れにならないように「何をやりたいか」に対して一番やりやすそうなもの、できそうなものを選んだと思います。

 私がよく使う例えですが、高級海外製スポーツカーに乗っても普段はギア1速しか使えないけど、国産スポーツカーでギア6速まで使って走る。そうやって楽しむ部分も大事にしたい。もっとフルに使って楽しみましょうということですね。

創立60周年の今年、さらなるチャレンジを

― 今年は千趣会の創立60周年ということですが、どういう年にしたいとお考えですか?

安井 メールやサイトでのパーソナライゼーションについてはすでに取り組んでいますが、サイトやメールでのレコメンド、検索結果がそれぞれが分断している所もあります。ウェブ上の連携を図りたいですし、今度はそれをカタログやDMといったオフラインチャネルにまで広げていきたい。ハードルはあると思いますが、オムニチャネル戦略に、キャンペーンマネジメント・システムを使ってチャレンジしていきたいと思います。

平原 ALBERTとしては、データをお預かりして分析し、一緒に施策を考えていくパートナーとしての関係を継続し、さらに支援させていただく分野を広げていきたいですね。ぜひオフラインの分野でもご一緒したいですし、今後はコンテンツマーケティングの領域に対しても協力していきたいです。発信するコンテンツを通じてお客様との関係性を深めていく「顧客のファン化」に貢献できればと思っています。

 ぜひツールを使い倒していただいて。

平原 うちの分析者も含めてですね(笑)。

― smarticA!キャンペーンマネジメントの活用が本格化する今年は、両社にとっても楽しみな年になりそうですね。今日は、ありがとうございました。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2015/01/15 10:00 https://markezine.jp/article/detail/21653