マーケティングを意識した組織作りを実現するために
Marketing Cloudの提供を開始して約半年の間に、加藤氏はある気付きを得たという。それは、マーケティングを中心に据えたプロセスを構築するには、そもそも組織の作り方に大きな課題があるということだ。日本企業の場合、多くが縦割り型組織になっており、部門間を横断したプロジェクトを遂行するのは難しい。一時的なプロジェクトなら部門横断型の組織を作ることもできるが、業務そのものを組み立て直すことは非常にハードルが高い。
Marketing Cloudならば各部門間で情報共有を促進し、システムを使いこなす中で垣根を越えた協業体制を作ることができる。しかし、日本企業独特の「縦割りにサイロ化された組織形態」が、マーケティングに関わる大きなビジョン達成を難しくしているのは確かだ。
この課題はJAPAN CMO CLUBでも議論されており、各社さまざまな工夫をしているという。例えばある小売業は社内で推進委員会を立ち上げ、トップが横断的に号令をかけてプロジェクトを進める企業文化がある。また、ある外資系メーカーは事業部ごとにCMOを置き、全体的なマーケティング課題の解決については合議制を取り、予算や方針を決めているそうだ。他にも、カスタマージャーニーの中でWebが果たす役割の大きさに注目し、Web部門と宣伝部門を合併して全体を統轄する役職を作る取り組みがなされている。
「どれが正解ということはありません。企業文化や組織形態に合った課題解決を進めるべきです」と加藤氏。その点は、CMOという職種が認知されており、トップダウンで課題解決に向かう海外企業との大きな違いだ。こうした点を踏まえ、JAPAN CMO CLUBでは、CMOの役割やキャリアなど、CMOそのものの“姿”についても議論を進め、組織とCMOに関する知見の体系化を進めている。
「JAPAN CMO CLUBに参加される方はそれぞれに、マーケターや組織のあり方についての考えを持っています。さまざまな意見・角度から、日本のCMOについて考えていきたいと思います」(加藤氏)
2015年は成果や事例が数多く結実する一年
2014年は日本のマーケティング業界に一石が投じられた年だったが、見方を変えれば「種がまかれた」年でもある。カスタマージャーニーという概念的なキーワードがソリューションとして整理され、またトップマーケター同士の横のつながりが生まれたことで、さまざまなノウハウやコラボレーション事例が生まれる兆しが見えてきた。
加藤氏はこれらの活動を踏まえ、「2015年はより多くの企業がカスタマージャーニーを考える年、カスタマージャーニーが重要になる年になると思います」と述べる。その根拠になっているのは、大手企業を中心に国内でのMarketing Cloudの採用が進んでおり、今年後半はその事例が登場してくると予想されるからだ。なお、2013年に米マッキンゼーが調査した結果によると、適切なカスタマージャーニーを顧客に提案する企業はビジネス成果も上げており、「顧客満足度が30%高い」「購入可能性が20%に向上する」など、明確に数値に現れているという。
同時にJAPAN CMO CLUBでも、「カスタマージャーニー」「組織」「CMO」などさまざまな観点からマーケティングについて論議し、新たなコラボレーションや知見が生まれようとしている。種はいま確実に育ちつつあり、2015年後半には実が結集するはずだ。「今年はこうした知見や事例など、面白いことをいろいろ発表できると思います。近い時期だと、3月に開催されるMarkeZine Dayに登壇する予定です。そこで、いま芽吹いているいくつかの取り組みをお話しできればと考えています。ぜひ、皆さまにも楽しみにしていただきたいです」と、加藤氏は自信を見せた。
加藤氏が語るマーケティング最新事例
「MarkeZineDay 2015 Spring」に加藤氏の登壇が決定しました。最新マーケティング事例やJAPAN CMO CLUBの取り組みが、更に詳しく紹介されます。ぜひ、ご参加ください!
【セッション情報】「MarkeZineDay 2015 Spring 」A-5セッション
『The Future of Marketing 2015- One to One カスタマージャーニーから見えてくるマーケティングの未来』
◎紹介事例 (予定) : キンプトンホテルズ、LIVE Nation、東急百貨店、JAPAN CMO CLUB参加企業
・開催日/時:2015年3月17日(火)/15:30~16:20
・場所:ソラシティ カンファレンスセンター
・お申し込み:こちらから