運用体制作り
継続的な運用のためには、体制づくりも重要です。Webサイトを作るための情報設計やデザイン、コーディングといった体制だけでなく、その中身であるコンテンツクリエーションの体制とそれを改善していくPDCAの体制がポイントになります。
コンテンツクリエーションというのは、静的なコンテンツであれば、ライティングや撮影をして素材を作り、編集するという作業です。
ワールドカップ施策としては、全部で20弱のコンテンツを提供しましたが、それぞれのコンテンツに対して、制作協力会社(メンバーズ)の中には3~5名程度のメンバーが配置され、Webサイトを作るための体制が組まれました。
具体的には、プランナー、ディレクター、デザイナー、コーダーのセットです。そういった体制でコンテンツのプランニング、内容のディレクション、トンマナのコントロール、原稿の編集を行っていました。そしてコンテンツの中身である原稿自体のライティングと翻訳や撮影に関しては、外部のコーディネーション会社に委託する、という形をとっていました。
「Paint Stadium」のようなユーザー生成型の動的なコンテンツに関しては、Webサイトを作る部分は同じですが、コンテンツクリエーションは、ユーザーによってなされるので、それが閲覧する人にとって有効なものにするための設計とシステム構築、そして、コンテンツのチェックとフィルタリングの体制が必要になりました。
後者に関しては、ユーザーに公開する前の管理画面を用意して、事前チェックのための複数名の人員を配置し、ガイドラインに従って問題ないと判断したものだけを手動でアップしていくように仕組みを設けました。
PDCAに関しては、コンテンツごとのチームとは別に、データ分析と課題の発見を行う独立したチームがメンバーズ内に作られました。このチームが、設定したKPIのトラッキングだけでなく、分析と課題の発見を行い、各チームのディレクターに改善指示を実施していました。
この独立したデータ分析チームによる活動によって、それぞれのコンテンツチーム自体もデータをチェックして改善しよう、という意識が芽生え、現場レベルでの改善PDCAサイクルが自動的に回るようになっていきました。
事業主側、外部協力会社のどちらに置いてもよいと思いますが、こうしたPDCAが回るような体制をきちんと構築することが、継続的な運用につながります。
まとめ
さて、5回の連載でコンテンツマーケティングについてソニーのワールドカップに関連した取り組みをベースに説明してきました。中長期のエンゲージメントを目的とした取り組みとは、裏を返せば短期でのビジネス成果につながらない取り組みです。社内での推進や継続的な運用には、かなりのハードルがあると思います。
ただ、短期のビジネス成果だけを追っていては得られないファンやフォロワーやリピーターなどの潜在的な顧客を育てていく非常に重要な取り組みであると思います。ぜひ、高い志を持ってコンテンツマーケティングを実現していってほしいと思います。
