無料ECサイト構築ツールが生まれた背景
「従来のECサイトというのは、それを手がけてみようと思う人にとって、二極化した選択肢しかありませんでした。一つはまず『ASP型』です。これはECサイト専門業者があらかじめ用意したサイトを利用するもので、手軽に低コストで始められる代わりに、機能やデザインのカスタマイズはほとんどできず、ECサイト毎の独自性が出せないという難点があります。もう一方は『開発型』。つまり一から自分でサイトを開発する方法ですが、これだと好みのサイトができあがる代わりに、専門知識が必要だったり開発の時間やコストがかかります。このため個人などの多くは、お仕着せのASP型で不自由を強いられ、一方企業もサイトの構築・運用コストに悩むという両極化が続いていたのです。『EC-CUBE』は、まさにこれらの2つの手法のメリットを活かして、デメリットを無くすことを目的として、開発された製品です」と株式会社ロックオン 代表取締役の岩田進氏は語る。
この「EC-CUBE」には、ちょっと見ただけでも興味をそそられるユニークな特長がいくつもあるが、中でも注目したいのは、ツール自体が「オープンソースの無料ソフト」であるということだ。
「製品の原価は、開発コスト、製造コスト、流通コスト、プロモーションコストが大きいです。オープンソースとすることで、優秀なエンジニアの方に無償で開発に参加していただけますし、製造は、ソフトウェアですので複製にコストはほとんどかかりません。流通も、インターネットでダウンロードが基本ですので、ほとんどコストがかかりませんし、良い製品であればブログなどのクチコミを期待できますので、プロモーションにもほとんどコストがかかりません。もちろん、全くゼロにすることはできませんが、普及が進めば、株式会社ロックオンが負担する原価率は、ゼロに近づくことになります。だったら、オープンソースは成立するだろう。と考えたわけです」
参考情報:株式会社ロックオン、12月4日に『EC-CUBE Ver.2.0』の正式版をリリース。ダウンロードはこちらからどうぞ!
『EC-CUBE』のビジネスモデル
なるほど。しかしそれは、いささか話ができすぎではないか?ビジネスである以上、どこかで収益を得なければモデルが成り立たない。その辺はどうなっているのだろうか。
「ECサイトは運用を開始してから、さまざまなニーズが生まれてくるんですね。配布可能な汎用ソフトウェアであれば、今後もEC-CUBEのバージョンアップで無償提供していくことになりますが、配布できないサービスに対してのニーズも多くあります。例えば、クレジットカード決済なんかがそうですよね。こうしたECサイトのオーナーにとって、必要なサービスを提供するといったことも考えられると思います。オープンソースなので、強制することはできませんが、もし、EC-CUBEを利用いただくサイトの0.1%でもこうしたサービスを利用いただければ、EC-CUBEば広く普及することによって、ビジネスとして成立すると考えています 」
このインテグレートパートナー企業には、パートナーシップ会費なども要求されない。あくまで実務発生に伴うフィーしか払う義務がないのだという。
「もともと『EC-CUBE』の開発動機には、上でもお話ししたようなわが国のECサイト環境の二極化を何とかしたいという考えがありました。でも、考えて欲しいんです。ECサイトも、実店舗も本質は同じだと思うんですね。そこで提供するべきものは、自動販売機のようにモノだけではなく、店員の対応から、企業のブランド体験などを含めた、サービスだと思うんです。そうであれば、ASP型のように、簡単・低価格で、開発型のように、柔軟。そんなECサイト構築手法のニーズがあるんじゃないだろうか。そして、こうした理念が認められれば、ビジネスとして成立するんじゃないか。という私たちの試みでもあるんです」
参考情報:株式会社ロックオン、12月4日に『EC-CUBE Ver.2.0』の正式版をリリース。ダウンロードはこちらからどうぞ!
基本機能に加え、ソースコードレベルでの自由なカスタマイズが可能
もちろん高い理想だけではない。「EC-CUBE」には、その理想を裏打ちするだけの、ECサイト構築ツールに不可欠かつ優れた機能が搭載されている。たとえば下のような機能だ。
フロント系機能
・商品登録は1回のみで、「商品一覧」、「商品詳細」、「検索結果」の各ページが自動生成できる。
・「オススメ商品登録機能」や、ユーザーからのコメントを受け付ける「リコメンド機能」を搭載。ユーザーに最適な商品情報の提供や演出を行うことで、静的な“商品カタログ”的なサイトにとどまらない、アクティブなECサイトを実現できる。
・会員ユーザーごとに設けられた「MYページ」で、過去の購入履歴や商品届け先といった登録済みの個人情報を活用して、効率的なショッピング環境を提供できる。
管理系機能
・売上管理や欠品情報を1つのページに表示して、毎日のチェック業務を効率化できる。
・顧客情報、受注情報、売上管理はCSVファイルでダウンロードでき、データ活用が簡単。
・販売促進に欠かせないメールマガジン配信機能を標準装備。
・サイトデザインはブロックごとにドラッグ&ドロップでレイアウト変更が可能なため、特別なデザイン知識は不要。一方ではHTMLレベルの編集もできるため、精細なデザインのカスタマイズも可能。
「これらの基本機能に加えて注目いただきたいのが、オープンソースならではの自由なカスタマイズが可能な点です。もちろんソースコードは、自由にカスタマイズいただけます。ASPのレンタルカートのような制約は一切なく、ソースレベルでカスタマイズして、完全オリジナルのECサイトを構築することが可能です。『EC-CUBE』のソースコードは、PHPなので、PHPプログラマであれば、ソースレベルでのカスタマイズが充分可能です」。
「EC-CUBE」は、どこまでもオープンソース ソフトウェアとしての自由さを追求している。たとえばライセンス方式にも「デュアルライセンス」を採用している。これは無償のGPLライセンスと有償の商用ライセンスのどちらかを選択できるというものだ。GPLライセンスを選択すれば、ソースコードを公開する義務はあるが、その代わり無償で「EC-CUBE」の機能を全部利用できる。
テンプレート開発などに取り組む開発者コミュニティがあるのも、オープンソースソフトウェアらしい。試しにgoogleで「EC-CUBE」を検索してみると、株式会社ロックオンの公式開発コミュニティサイト以外にもテンプレート開発などのベンダや個人サイトが並び、にぎわいを見せている。
参考情報:株式会社ロックオン、12月4日に『EC-CUBE Ver.2.0』の正式版をリリース。ダウンロードはこちらからどうぞ!
ユーザーサポート体制を大幅に充実
しかし、あまり“オープンソース”の面ばかりをクローズアップすると、サポートなどはどうなっているのかと思う人も少なくないだろう。その点でも「EC-CUBE」は万全の体制を敷いていると、岩田氏は強調する。
「とくに2007年12月にバージョン2.0がリリースされたのに合わせて、ユーザーへのサポート体制を大幅に充実させました。まずバージョンアップ対応ですが、Windows Updateのようなオンラインで常時アップデートを行うサービスを開始しました。また電話によるサポート契約制度も同時にスタートしました。このサービスはいずれも有償ですが、月額3,000円程度とご利用いただきやすい価格になっています。このサービス体制の整備によって、今までオープンソースの最大の弱点であった“ビジネスとして利用する場合のサポート責任所在”を、ベンダとしてきちんと担えるようになったと自負しています」。
また岩田氏は新バージョンの発表を機に、今後は従来のASP型サービスの利用層にの期待にも応えることができるようになり、さらに「EC-CUBE」の普及を図っていきたいとも語る。
「やはりECの王道である“物販”をメインに活用例を増やしていきたいですね。『EC-CUBE』はカスタマイズの自由度が高いので、商品や顧客ごとに機能やデザインを細かく最適化していくことでサイトの独自色を充分に出すことができると思います。また従来は、せっかく商売が順調に拡大していっても、それに合わせたカスタマイズに新たなコストがかかってしまい、業者に費用を払い続けるサイクルから逃れられないパターンが多くありました。その点『EC-CUBE』は運用フェイズに入ってもお金がかからないので、小さな商店スタイルから始めて伸ばしていこうという方でも安心してお使いいただけます」。
もともと株式会社ロックオンには、長年にわたりECサイトの構築を手がけてきた歴史がある。ここで培ったノウハウやアイディアが盛り込まれていることが、「EC-CUBE」の機能だけでない使い勝手のよさにつながっていると言えるだろう。
「当社製品の売りの一つである『直感的な操作性』も、もちろん大きな特長です。皆さんに気軽にお使いいただくことで、もっともっと日本のEC市場を活性化させていきたい。『EC-CUBE』には、そのための新しいECのプラットフォームを自分たちで作りたいとの気持ちが込められているのです」。
このツールがあれば、インターネットでのショッピングはきっともっと楽しくなってくる。そんな予感を与えてくれる「EC-CUBE」の今後に大いに期待したい。
参考情報:株式会社ロックオン、12月4日に『EC-CUBE Ver.2.0』の正式版をリリース。ダウンロードはこちらからどうぞ!