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MarkeZine Day 2025 Retail

「あのキャンペーン」の担当者に直撃!

マス広告からの転換で売上成長120%も達成!ボンカレーが進めるプロモーション施策

半世紀近く気付けなかった「レトルト食品」の誤解

――施策はどのような方針で行なわれたのでしょうか

垣内氏:まずは生活者のみなさんの誤解を解消し、そして「“手軽さ”“おいしさ””安全・安心”の食事を届けたい」という我々の想いに共感してもらい、興味を喚起してもらうというアプローチを考えました。

 ボンカレーのミッションは忙しいときや、災害時など程度の大小に関わらず料理ができない危機的状況に陥った瞬間に、美味しさと幸せ、笑顔を届けることです。ですが、コンテンツ準備のために調査を進めていくうちに、生活者と我々の間に大きな認識のズレがあることに気付きました。

 レトルト食品が非常にネガティブなイメージを持たれていたのです。例えば、子供には食べさせたくない、他に何もないから仕方なく食べるものといったお声をいただきました。その理由はどこにあるか、さらに調べると根本には「製品が長持ちする=保存料など身体に有害なものが使われている」という認識が存在することがわかりました。

 ですが、実際には保存料は一切使用していません。レトルト食品が長持ちする本当の理由は、気密性のある容器に詰めた食品を加圧加熱殺菌するためです。これは業界では常識だったので、近年ではあえて強調してお伝えすることはありませんでした。その結果、レトルト食品は得体の知れないものだと思われてしまっていた。

 つまり、ブランドミッションを伝える云々の前に、そもそもの誤解を解かないと、関係の構築どころではないことがわかったのです。そこで、ムービーにも保存料・合成着色料が不使用である旨のメッセージを入れて安全性をアピールしました。

 2015年2月には新商品の「The ボンカレー」を発売しました。こちらは、生活者が抱いている不安要素は全てないことを前面に押し出したものにしました。加えて、工業製品のイメージが強い商品なので、手作り感が伝わることも狙っています。

こうして開発されたのが「The ボンカレー」(左)、調理の過程を紹介する動画も用意された(右)
こうして開発されたのが「The ボンカレー」(左)、調理の過程を紹介する動画も用意された(右)

 どうしてもレトルト食品は、アウトプットがパウチに入った画一的な外見をしています。そのため、工場でロボットが効率的に自動的に量産しているイメージを持たれがちです。しかし、実際には驚くほど手間のかかる作業を人間が手で行なっています。私もはじめて工場に足を運んだ際に知ったことですが、10人以上がジャガイモの芽を取ったりしているのです。多くの過程で様々な人の手によって、丁寧に作っているものです。

 これらの安全性や安心感は業界では常識になっていましたが、生活者に伝えられてこなかった部分です。改めてそれらを伝えるシンボリックな商品をあえて作りました。大目標はレトルトの地位向上です。誤解を解くというアプローチによって、共感や好感を持っていただきたいと考えました。

――プレミアム商品の時流に乗ったのかと思いました(笑)

垣内氏:その点も否定しません(笑)ですが、それよりも大きな理由があったわけです。今まではマス広告を打って、好意度が上がった下がったという判断をしていた。けれど、実は伝わっていなかったことが今回わかりました。半世紀近く誤解を与え続けていた部分を、これから埋めていきたいと考えています。

ブランドの姿勢も変わってきた

――施策の転換をしてから、ユーザーやブランドに変化は感じられますか

垣内氏:今までの広告という定期的な打ち上げ花火を上げるスタイルから、定期的に高い頻度でコミュニケーションを行うスタイルに変ることで、生活者の反応も変わってきたと実感しています。先ほど触れた数字の部分もそうですが、問い合わせも増えてきました。生活者が自発的にボンカレーについて、調べはじめてくれていると感じています。

 サイト流入数の増加も、生活者にとって有益な情報がある場所だと認識してもらえつつあるという証拠だと思います。ですから、生活者に役立つトピックを作って、早いスピードでコンテンツを増やしています。

 その方針をとるようになってから、ブランドの姿勢も変わったと思います。今までは食べ方なら「ボンカレーのスタイルは、ご飯にルーをかけて食べてもらうこと」というスタンスでした。いうなれば、あえて変えないスタンダードさを維持していました。ですが、もっと幅を広げた方が生活者に役立つよね、という考えができるようになりました。おいしければいい、という視点に立ってカレーの原形をとどめないレシピのアイディアも用意できるようになりました。

 サイトが役立つ情報のデータベースであり、ブランドの考えやコンテンツがそこに集約されている旗艦店のようになればよいと考えています。トラディショナルなブランドが、広がりをもって動きはじめたというイメージです。

――最後に今後取り組みたいことを教えてください

垣内氏:ソーシャルメディアに注力して、より双方向でコミュニケーションをしていきたいと思います。そして、ソーシャル分析の活用強化をしていきたいですね。現在は生活者にメリットのある情報を伝えて、ソーシャルなどで反応を見ながら新たにコンテンツを作っるということをしてきました。それをさらにソーシャルに広げていければと思います。レトルトチームは3人とリソースは限られていますが、その中で工夫してコミュニケーションをとっていきたいと思います。

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/06/22 10:00 https://markezine.jp/article/detail/22554

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