デバイスによって異なるユーザーのシチュエーション
押久保:一昔前だと、“モバイルファースト”の中身はサイトの最適化に留まっていましたが、今はスマホならではのコンテンツや表現に取り組む例も増えています。御社での“モバイルファースト”とは、具体的にどのような考えなのでしょうか?
広末:その点では、スマホありきでコミュニケーションを組み立てているわけではありません。あくまでデジタルならではのターゲティングやアプローチをする上で、スマホを介した接点が増えている。それなら、全社的にスマホへも対応し、PCとは違うユーザーのシチュエーションに合わせていきたいと考えています。
押久保:単なる見せ方の最適化ではなく、シチュエーション、モーメントを捉えた内容にしたいと。
広末:そうですね。例えばスマホが浸透したことで、通勤中にデジタルコンテンツを通した訴求が可能になりました。これはスマホが普及したことにより生まれた、新しいお客さまとの接点ですし、通勤中に響くコンテンツと帰宅後に閲覧して響くコンテンツは違うと思います。このモーメントを捉える取り組みを、今始めているところです。
押久保:具体的な施策をうかがえますか?
広末:まだそこまで細かいターゲットやシチュエーションへの最適化はできていませんが、例えば皆の関心事をタイムリーに捉えるという点では「ビオレ」のUVケア製品で、「梅雨明け」を切り口にした訴求をAntennaで行いました。
「梅雨明け」した朝、AntennaでUVケア製品を訴求
押久保:「梅雨明け」ですか、おもしろいですね。
広末:UVケア商品は気温応答性が高いのですが、その中でも特に購買チャンスが高まる時期をいくつか特定し、そのひとつが梅雨明け時期でした。九州や関東など地域ごとに、梅雨明けしたその日に記事を配信しました。
梅雨明けの日を予測し、マス広告でその日に接触しようとするのは無理があります。その点で、朝のニュース番組で皆が梅雨明けを知り、通勤中にAntennaでそのテーマの記事を見る……といった流れだと印象が強まると思いました。
押久保:なるほど。所感はいかがでしたか?
広末:実施したばかりなので詳しい効果測定はこれからになりますが、ブランドのシェアは順調に伸びており手ごたえは感じています。
押久保:関心が高まるタイミングが分かっていると、その受け皿をデジタル上に設けておくのは効果的ですね。UVケアだと、他にどのような切り口があるのでしょうか?
広末:我々は施策立案前にブログやTwitterなど、大量のデジタルデータを分析して、世の中の文脈を捉えておくというプロセスを踏むことが多いのですが、今回も「日焼け」にまつわるブログなどを分析したところ、「子供のUVケア」へ一定の関心があることが分かりました。そこで、Antennaで子供のUVケアをテーマにした記事を配信し、それに適した商品ページへ誘導するといった訴求も実施しました。
そもそも日用品については、普段からシャンプーや日焼け止めのことを考えている人はいないので、これまでも日差しが強くなるときといったニーズが顕在化するタイミングを狙っていたのです。